恋が出来たのなら上出来
ただ、歩いていた。
道の上を、一定速度で。
カラスにバカにされても。
強風に煽られても。
ただ、歩き続けた。
感情は死んだよ。
理不尽に怒鳴られたり。
親しくないのに嫌われたり。
良いことなんて、何もない。
母が生きていた頃は、褒められた。
でも、今は誰も褒めてくれない。
慰めても話を聞いてもくれない。
僕の褒められ人生は。
母で始まり、母で終わっている。
想いを巡らせ、歩いていると。
真っ赤な財布が、視界に入った。
ずっと、下を向いていたから。
スッと見つけることが出来た。
無感情のなかに、同情心が生まれた。
拾って、交番に届けることにした。
お巡りさんに、財布を渡すと。
そこに、美女というべき女性が来た。
その女性は、ありがとうと僕に言う。
僕の心の奥にある、豆電球は。
鮮やかなモモ色に、光っていた。