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これが僕らの青春です。  作者: 一二三楓
17/23

17話

ちょっと一呼吸

桜もすっかり散って芽吹いたばかりだと思っていた新緑もより青みを増し、日も段々と高くなって過ごしやすい時期となった今日この頃。ある意味では一番辛く険しい試練の日々とも言える。そう。日本人の天敵、スギ花粉が猛威を振るっているのだ。国民病となって久しい花粉症。凛もまたその例に漏れず憂鬱な日々を過ごしていた。


【風が吹けばティッシュが売れる】という現代版【風が吹けば桶屋が儲かる】よろしく、箱で抱えて講義に臨む始末である。


「ヘックション!!!」


「おー、テンプレのようなくしゃみだな」


盛大なくしゃみをかまして鼻をすする凛の横で花粉症とは無縁な時雨が呑気な感想をもらしていた。凛に恨みの籠った一瞥を向けられ、なんとも言えぬ顔で肩を竦めてみせた。


「シンプルに腹立つからその顔やめろ」


「おー、怖。この顔は生まれつきです〜」


「なら、今から顔面整形してやろうか?物理的に」


「ちょ、冗談だよね?ヤメテー、顔は、顔だけは〜」


虚ろな目でスっと拳を握ると流石にやばいと思ったのかふざけた悲鳴をあげ始める時雨。相変わらずの態度に怒る気も失せ、深い溜息をついた。


普段から2人だけのノリというものが存在し、こんな調子でじゃれ合っているのだが今日のところは満足したらしい。


「ゴールデンウィークの件聞いたんだけどさぁ。もう今日は授業ないからこれから買い出しに行かね?水着とか必要なものそろえにさぁ」


手に持った紙パックのジュースに刺さったストローを弄りながらそんなことを言い出した時雨。凛も泊まりがけで出かけるのにあたり、必要なものを買い揃える必要があった。もちろん水着なんかも持ってはいないし、準備をしとかなければならない。


「あぁ、悪ぃ。今日、この後予定があるんだわ」


普段なら時雨と買い物に行くところだがタイミングが悪かった。少しバツが悪そうに断りを入れる凛に、時雨は断られるとは思っていなかったため意外そうにしていた。


時雨としては当てが外れたことになるが自分以外にも交友関係はあるのだから仕方ないとここは潔く引き下がることにした。買い出しはひとりでも行けるし、今日でなければならないというわけでもないのだからまた誘えばいいのだ。


「珍しいな」


「うん、まぁ……」


なんとも歯切れが悪い凛の態度に疑問符が浮かぶ。特に詮索する気はなかったがこうも露骨だと逆に気になるというもの。そして名探偵時雨はピンと来てしまった。


「まさか女かッ!?」


「その、出雲や先輩たちと買い出し行こうってことになっててな」


「なん...だと!?きぇぇえー!!!」


「猿叫やめろ」


突然猿叫をあげ始めた時雨を見てドン引きしながら、こうなるから言いたくなかったと溜息をついた。


「出雲ちゃんと先輩って誰だ!?」


「はぁ、優亜先輩と真姫奈先輩と菫先輩と天音先輩」


「ほぼ全員じゃねぇか!」


「こないだお前いなかっただろ。そんときに約束したんだよ」


「まさか凛がみんなの水着を選ぶということか?貴様ぁぁぁぁぁぁー!?」


「わかった。わかった。お前も一緒に行っていいか優亜先輩に聞いてやるから。落ち着け」


猿叫をあげて血涙でも流しそうな勢いで詰め寄る友人からそっと目を逸らす。こうなると長いのだ。仕方ないがないとスマホを取り出し、優亜にメッセージを送ると程なくして返信がおくられてきた。


「しぐれくんも買い出し手伝ってくれるの?やったぁ。じゃあお菓子とか今日買えないから今度行こうと思ってたんだけど、買って来ておいてってつたえてー。お金は割り勘だから、レシートもらっておいてね」


「そういうことだから。そっちはよろしくな」


何も言わずに画面に表示された文面を時雨へと見せた。おそらく優亜に他意はない。ないのだが時雨が望んだ結末とは大きくかけ離れたものだった。膝から崩れ落ちる姿には少し同情するが、凛にも予定がある。時として人は無自覚に人を傷つけるのを目の当たりにしてそっと手を合わせ、その場を後にした。


せめてものフォローにチェルシーと奏鳳に優亜先輩から頼まれた買い出しを時雨と行って欲しいとメッセージを送ると快く引き受けてくれた。これで時雨の機嫌も落ち着くだろう。ちなみにチェルシーと奏鳳にもサークル旅行のことはもちろん伝えられて承諾を得ているので晴れて全員参加が決まっている。正確には留学中の2年生が1人、不参加だがそれはどうしようもないことなので置いておく。




読んでくれた方々ありがとうございます。評価、ブックマークよろしくお願いします。

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