一話 初めての攻略
この世界にはダンジョンというものが存在する。
だが、ダンジョンは決して終始同じ場所にあることはない。
時には空の上。時には海の上。時には地中の中。
さまざまな場所にランダムで出現する。
ダンジョンの出現の実装連絡は各王都にて伝達され、我こそはという人間だけがダンジョンの攻略に励む。
だが、ここ数年はダンジョンを攻略する人間は現れなかった。
そして、ある少年がダンジョンの攻略に名乗り出た。
その少年の名前こそ・・・・
「なんでダンジョンに行かせてくれないんですか!!!」
ここは、王都ランドル。
その中心部に位置するのが、ダンジョンの実装連絡が行き来する、このDJ本部である。
そのDJ本部で騒ぎ立てる少年。
この少年こそ、ダンジョン攻略に名乗りを上げた張本人である。
「なんでって言われても、カルハ君。まだ武器も何も持ってないでしょ?」
「武器がなくても戦えます!だからお願いします!」
少年の名前は、カルハ・ロバン。
ダンジョンに夢見る15歳の少年だった。
ダンジョンに年齢制限はない。
だか、カルハは武器を持ってないが故に、ダンジョンの最低条件をクリアしてなかった。
「いくら頼まれても首を縦に振ることはないからねー」
「そこをなんとか!お願いします!」
「ダメダメー」
このDJ本部の受付嬢は、ナルハ・ミオネス。
男受けのいいお姉さんだ。
「・・・・きれいですね」
「ありがとねー」
「ねーそこをなんとかお願いしますー」
「ダメなものはダメでーす」
「自分でダンジョン探しちゃいますよ?」
「お好きにどうぞ?今回のダンジョンはそう簡単に見つからないと思うけど?」
「本当にお願いしますよー」
「ダメです。ダンジョン攻略を夢見るのはいいけど、君には他に攻略することあるでしょ?」
「ぐっ・・・」
その言葉がストレートにカルハに突き刺さった。
カルハが今攻略しなければいけないこと・・・
それは・・・
「ナルハさん!お願いします!このままだとまた借金取りが来ちゃいますー」
「ダメでーす」
カルハの両親は生まれて間もないカルハを残し蒸発。
借金の滞納が溜まりに溜まってとんでもないことになっていた。
だから、ダンジョンをクリアして報酬金を獲得しなければいけなかった。
「いくらおねだりされても、ゴーサインは出しませんよ」
「・・・出直してきます」
カルハはそう言い残し、DJ本部を後にした。
「さて、どうしたものか・・・」
武器がないとダンジョンにはいけない。
だが、借金取りを攻略しないとその夢は永遠に叶わない。
すでに積んでいた。
「あーーーー」
奇妙な声を発しながら歩いていると、幅の狭い路地裏で女の子がいじめられていた。
女の子同士の喧嘩だから、おそらく嫉妬とかそのような類のものだろう。
「うー、クワバラクワバラ」
その現場を見なかったように立ち去ろうとするが、気になって戻ってきてしまった。
「俺にあの状況を攻略するだけの力があるか?」
戻ってきてしまった以上、やるしかなかった。
「あ、あのー、君たち。ちょっといいかな?」
「やばい、逃げよ」
リーダー格の女の子が指示を出すと揃いも揃って逃げていってしまった。
「はあー、よかった」
逃げてくれただけ、ありがたい話だ。
襲ってこようものなら手を出すことができないから退散するしかなかった。
「大丈夫?」
服がボロボロになっている、意外にも可愛いその女の子に手を差し出す。
「触らないで!」
「え・・・?」
「あなたに下心があるのは丸見えなのよ!助けてもらったからってなんでも言うこと聞くと思わないで!」
「えーーー」
女の子を攻略するにはどうするのが正解なのだろうか。
正直検討もつかなかった。
頭が真っ白になっている隙に、女の子は立ち上がった。
「さようなら!」
「あ、ちょっと!」
女の子は右足を引きずりながら走り去ってしまった。
「どうするのが正解だったの・・・?」
女の子の攻略は理解できないまま、事件は幕を閉じた。
だが、この一件はカルハにとってプラスの事象であった。
後日、知らない名前の人から家に手紙が届いた。
「なんだ・・・?」
封を開けてみると、そこには驚くべきことが書かれていた。