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フリークス  作者: 遠見 翔
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file:食虫花 その2

file:食虫花 その2


唐崎さんから、もらった住所を頼りに私は、多々良町に来ていた。


多々良町は、そこそこの地方都市で、田舎に片足を突っ込んだような片瀬町とは大違いだった。


まぁ多々良町自体もそんなに大きいわけではないので、主要都市からしたら、ほとんど田舎みたいなもんだ。

そんな多々良町の中で特にオフィスビルが乱立する、駅前スポット。

ここだけを見るとほとんど都会だ。


そんなオフィスビルの一角に目的の場所があった。

表通りを抜けて、ビルの合間を縫い、人通りも少なくなった裏路地に、目的のビルはあった。


えっと、このビルの3階。


ビルは5階建で、一階は喫茶店、二階は怪しい金貸しが入ってる。

なんだよニコニコカンパニーって、胡散臭すぎるでしょ。


もうちょっといい名前なかったのかしら。絶対暴利だよ、トイチだよ。


そんな怪しいビルに入るのは中々勇気がいる。

私普通の女の子なんですから、ビビる、ビビる。ちょー怖い。


でも入らないわけにもいかないので、とりあえず、玉砕覚悟で入ってみる。

まぁ、間違ってたらダッシュしよう。

というか私まがいなりにも警察官だし、まぁ大丈夫だろう。


そう、なんたって警察官だし! だめだ、全然気がまぎれない。


ビルの入り口で踏み止まっても仕方ないので、よし! と決心を固めて、ビルの中へ入っていく。


入り口にあるエレベータに乗り3階のボタンを押す。

ゴウンゴウンと、人一人を乗せた箱が唸りを上げている。


あー緊張する。


やべー緊張する。だめだ冷や汗でてきた。手汗ちょーやべー。


エレベータが、ピンポンと目的の階に到着したと律儀に教えてくれた。


エレベーターの先には扉が一つあった。


その扉の看板がこれまた奇妙なことに、「分室」とだけ書かれていた。


分室? 本室があるの? 周りを見渡すがエレベーターから降りた先には扉が一つだけ。

ほかに部屋はないようだ。

というか分室って、普通は頭に「何々科のー」とか、つけるでしょ普通。ほんと変わったところ。


とりあえず、深呼吸。


そこまで肝が太いわけでもないので、緊張を解きほぐす必要がある。


最初が肝心、最初が肝心。自己紹介はトチるなよー私ー。


面接でもそうだぞ、最初に印象が全てを決めるんだぞー。面接じゃないけど。



ふぅ。よし入ろう。



扉をノックして、



「失礼します!」



大きな声で新社会人よろしく、元気よく入室。完璧だ。


ただ扉の先には誰もいなかった。

あれ、留守かな?


部屋の中には机が6つ。4つは使っている形跡があるのが残りの2つは空席だ。


ふむふむ。とりあえずわたしの席はあの二つのうちのどれかだな。


「あのー、唐崎さんより言われてきました。柊と申します。どなかたいらっしゃいませんかー!」



・・・・・。



だめだ返事がない。


とりあえず、入り口で突っ立てるのものなんなので、部屋の中に入ってみる。


机の上にはところ狭しと紙の束が置かれている。

紙の束は乱雑に置かれており、これでほんとに仕事ができるのか?と疑ってしまう。

いやあれ、絶対目的の資料とか探せないレベルじゃん。

真ん中の資料とかどうやってとるの? 書類ジェンガじゃん。




「だれお前?」




ぎゃあ!!!


咄嗟に怪獣みたいな声を出してしまった。


心臓が飛び出た。多分。5センチくらい浮いた。突然足元から話かけられて反射で下をみる。



そこには、寝袋で顔だけすっぽりと出た男性がいた。

無精髭を蓄えて、髪はボサボサ。

寝袋と一体化しているのでどこからが顔かよくわからない。

もしかすると寝袋から顔が生えているのかしれない。


「ぎゃあってなんだよ。あ?」


「す、すいません! まさか足元にいらっしゃるなんて思わなくて」


だめだ。寝袋から顔しかでてない状態で凄まれても全然怖くない。

というか、めっちゃメンチ切ってきてるけど、フォルムが寝袋だから笑ってしまいそう。

あーだめだ。


「なんだよ。俺が足元にいちゃ悪いのかよ?」


「い、いいえ! そんなことありません!」


やめてー寝袋で凄まないでーーー。笑っちゃうからーーー。


「お前、笑ったな?」


「いいえ! そんなことありません!」


だめー。ほんとだめー。わたし耐えてー。


くわああ、と大きく寝袋があくびをする。あ、だめ。寝袋があくびしてる。


「まぁ、俺も悪かったよ、いきなり下から声かけて。ちょっと寝起きは機嫌が悪いから、覚えておいて」


「で、柊だっけ? 唐崎さんから言われてた新しい人?」


「はい! 柊 藤花っていいます! よろしくお願いいたします!」


寝袋に向かって丁寧にお辞儀をする私。

というか早く寝袋脱いでよ。

なんで地べたで直立不動の寝袋相手に自己紹介しないといけないのよ。


「うぃーよろしく。じゃあ早速だけど、とりあえず仕事教えるからメモの用意して。俺同じこと何回も言うの嫌いだから」


「は、はい!」


慌てて、胸ポケットからメモ帳を取り出す。ただ待って、まさかそのまま仕事教えるの? 私耐えれる?


「とりあえず、お前にやってもらう仕事だけど・・・。待てよ、お前唐崎さんから、どんな仕事するかって聞いてる?」


「じつは、聞いてなくて・・・。あとは現場で教えてもらえって言われまして・・・」


「だよなー。あのおっさん。そういのは結局丸投げなんだから。ひどくね? とりあえず都合の悪いことは全部、お得意の視線のレイザービームで黙らすんだから。卑怯だよな」


「あの眼で凄まれたら断れねーって」


「ずばり、お宅もあのレイザービームにやられた口でしょ?」


「は、はい。じつは、そうです。あの眼で凄まれると、蛇に睨まれたカエルと言いますか、なんといいますか」


「だよな、だよな。あれは無理だわ」


よっこいしょういち。と、古臭い掛け声とともに、寝袋さんが起き上がってくれた。

あーよかった。これで寝袋と会話しなくて済むー。


と思った矢先。寝袋のままスタスタと歩き始めるではないですか。


歩ける寝袋だーーー。


普通の寝袋とは違い、足のほうが独立しておりそのまま歩行を可能にした画期的な寝袋だった。


だめだ。今度はタラコに見えてきた。


「ま、とりあえず唐崎さんの被害者ってことで、お前の無礼は多目にみてやるよ」


タラコが偉そうなことを言っている。

ちょっとまって、そのまま椅子に座らないで、というかなんでピンクの寝袋なんて買ったのよ!

男なら、ほら黒とか青にしてよね! もうタラコが椅子に座ってるようにしか見えないから!


「あ、ありがとうございます」


「で、だ」


「あ、待って喉が渇いた。ちょいタンマ」


そう言いながら、タラコの顔から手だけがニョキと生えてくる。器用だなー。もう脱げばいいのに。

机の上にあったペットボトルのお茶をゴクゴクと飲み干すタラコ。


「とりあえず、なんの仕事をするか当ててみ」


タラコのくせに面倒くさい質問だ。キャバクラでおっさんが、「俺何才に見える?」くらい鬱陶しい質問だ。


「えーっと。前の担当が、そのお亡くなりになったと聞きましたので、殺人事件から何かを担当する感じでしょうか?」


「ぶっぶー。はずれー」


あ、うざ。


「だめだなー。だめだめ。もっと頭を柔らかくして考えないと」


「だって、殺人事件なら普通に捜査本部の刑事が担当するだろう?」


「もうちょっと頭まわして考えてみろよ」


腹立つー。


「えっと、じゃあ。殺人事件じゃないなら。唐崎さんが最後に怪物退治と仰ってたので、荒唐無稽ですがほんとに怪物を調査しているとか?」


数瞬の沈黙。うわ。これも絶対馬鹿にされる。そんなわけないじゃんって絶対言われるやつこれ。


「正解」


「やっぱ、唐崎さん人を選ぶ眼は確かだな」


「え、嘘。正解?」


そんなバナナ。とりあえず適当に言ってみただけなのに。というかマジで怪物? この平和な日本社会で? 漫画読みすぎじゃない?


「もっと馬鹿にしてやろうと思ってたのに、つまんねー」


あ、正解しても腹立ったわ。


「まぁ、簡単に言えば、怪物退治で間違いないな。じゃあ、その怪物がなんなのかって話だ」


ふむふむ、とタラコの話を真剣に聞いてみる。めっちゃ興味ある。




「お前、フリークスって知ってるか?」







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