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学園タロットカード  作者: チンピラゲーマー
19/50

19.『愚者派』

『死神』と呼ばれた少年はその後、一人の男によって助けられた。

その男は、忌み嫌われた少年に唯一手を差し伸べた人物だった。

共にこの世界を変えてみないか、そう誘われた。

少年は本当に出来るとも思っていなかった。

しかし、このまま誰にも見向きもされずに死んでしまうのならば、また一興だと思った。


学園での生活は何不自由なかった。

ただ今まで通り、自分の事を見下すような奴がいれば圧倒的な力の差を見せつけた。

そして一人の男に目をつけた。

自分の攻撃を容易く躱し、死神の狩りを邪魔する男。


いつも通りにやれば問題ないだろう。そう高を括っていた。

しかし、それは間違いだった。

圧倒的な力の差を見せつけられたのは相手ではない、自分だったのだ。


どうすればアイツに勝てた?何が間違っていた?

そんなことを頭の奥底で考えているうちに、意識は覚醒へと近づいていた。


—――――


「なんだ、もう目覚めてたのか」


カーテンを開けると、そこには頭に包帯の巻かれた死神(デーモン)がベッドに座っていた。


「……んだよ、今更笑いにでも来たのか?」


「そんなつもりは無い。俺はただ確認に来ただけだ」


「あ?なんのだよ」


「忘れたとは言わせない。俺のアルカナ戦争の勝利条件だよ」


俺が勝った時には、死神派の解体を要求していた。

そして俺の本当の狙いはここからだ。


「あぁ、そうだったな。分かった分かった」


そう言うと、死神は指をぱちんと鳴らした。

周囲の空気に一瞬を感じたが、すぐ元に戻ったようだった。


「今何をした?」


「派閥を解散させたんだよ。元々俺の派閥は俺が屈服させた奴ばっかりで、半ば洗脳状態みてえなもんだったからな」


そんなに早く解散できるのか?

と言うより、今のは何かの魔術(マジック)を解除したようにも思われた。

どうやら死神の『洗脳』と言う言葉に嘘はないらしい。


「随分と簡単に解散するんだな。潔いと言うか、何と言うか」


「ハッ、俺は負けたんだ。もはや学園の中で価値を持たねえゴミと同じだ」


天使や悪魔の表情が険しくなるのが分かった。

無理もない、この二人は一度死神に大敗を喫しているのだから。


「まあ、短い間だったが悔いはねえさ」


「お前はまさか学園を出ていくつもりか?」


「フン、こんな所に居るのはもう飽きたからな」


「……負けたままでいいのか?」


ぴくり、と死神は反応した。

『負けたまま』というワードは本来、こいつには最も似合わない。


「俺に負けたままでいいのか?」


言葉をもう一度繰り返し、死神に挑発をしてみる。

案の定、どうやら乗ってくれそうだ。


「ああ?誰が負けたままだと?」


「お前だよ、お前」


「言ったはずだぞ愚者、俺は必ずお前を殺すとなァ!!」


「なら………」


今のこいつは面白い眼をしている。

今までの憎悪なんかとはまた違う何かを見ている。

だからこそ、俺はこう声をかける事にする。


「一番近い所でそのチャンスを与えてやる。来い死神。俺の派閥に」


「……!!」


驚いた表情。

それはこの場にいる全員が浮かべていたもの。

そして俺はそんな情けない顔をしている二人にも声をかける。


「俺はお前達にも言ったはずだぞ、天使。死神」


「ああ……そうだったね」


「チッ、覚えてやがったのか」


「お前ら……本気でコイツの派閥に入んのか?」


驚きから困惑の表情を浮かべる死神に、天使は微笑んだ。


「ボクらの歩む道を、彼に託すのもまた面白いからね」


悪魔は嘲笑うようにしてこう答えた。


(しゃく)だがなァ。まあコイツの実力はお前も知ってんだろうが」


死神はもはや呆れているようにも見えた。


「ハッ……お前ら狂ってやがる……。俺はお前らを殺そうとしたんだぞ?こんなヤツと同じ派閥だなんて、何も思わねえのか!?」


「だから何だと言うんだい?争いの絶えないこの学園で、そんな事は稀じゃない。むしろボクはキミや愚者の強さに感動しているくらいさ」


「次は俺がお前を殺しに行ってやらァ、覚悟しとけよ死神ィ!!」


全く。こいつらは仲が良いのか悪いのか。


だがしかし、今のでもう結論は出たんじゃないのか。死神。

お前は俺にとって必要な存在。居てもらわなければ俺が困る。


「さあ、答えを聞こうか。死神」


死神はベッドから立ち上がり、ドアの近くまで歩いた。

少しまだ歩き方は覚束なかったが、その表情はしっかりとしていた。


「……面白ぇ!!俺を引き入れたこと、後悔させてやるよ愚者!!」


そう言い残し、死神は救護室から出ていった。

天使や悪魔は微笑んでいた。

新たな仲間を見つけた、そんな表情だった。


—――――


少年は、ようやく『仲間』を見つけた。

自分を必要とする、そんな仲間達を。

同年代で自分よりも強い、そんな凄い人間を。


そして少年が向かった先はとある部屋。

扉を開けるとそこには、一人の男が資料を眺めて座っていた。


「アンタに話があって来た。単刀直入に言う」


その男、法皇は鋭い視線を死神へと向ける。


「アンタの下に就くのはもうやめだ。俺は自由に生きる」


「…………愚者にでも唆されたか?」


「さあな。どちらにせよ、アンタにはもう関係ねえよ」


死神はその部屋、教皇の間を後にした。



そして同時刻。


「ついに愚者派が完成したようですな、女教皇(プリーステス)


女教皇に使える身であるシルヴァは情報を伝える。

それを聞いた女教皇はにやりと笑みを浮かべた。



隠者(ハーミット)、君はこの事態をどれぐらい予測できていた?」


「私ノ占いには全てが出テイタ」


「全部お見通しだった、って訳か。恐れ入るよ全く……。さて、今回のこの事態。大アルカナ達はどう受け取っただろうか?役職を持つ人間の眼にはどう映った?また……()()は今後どう動く?」


学園の中を歩く二人の男。

窓の外を見て、教皇は笑う。


「さあ……学園が動くぞ」



自分の中での第一章が完結しました!

ご愛読ありがとうございました。

まだまだこれからも物語は続きます。

また、一章の中にも今後につながる伏線はありますヨ……ぜひとも読み返してみてください。

さて、次回20話から第二章へと移行します。

これからもご愛読よろしくお願いいたします!

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