[第5楽章:ラスト・ホリディ]
もうちょっと引き伸ばします。
予定では第8楽章までです。
多分。
でも次回作は既にイメージだけ決めておりますので取り敢えずこれで落ち着ければ、と。
その日は、朝から都会のほうへと出かけた。
とは言え、別に近所が田舎とも言えないが。
そして場所が場所なだけに、歩いていったらきっと3時間くらいかかる。ので、電車を使うことにした。
駅を降りれば後は俺の領域内。早速1件目のデパートに目星をつけて入っていった。
アリス「凄くたくさんお洋服がありますね。何か、アレとか着てみたいです。」
やっぱり、デフラグが原因なのか、随分と店内は慌しい様子だった。
「きっとのんびりしてこんなところに来てるのも俺たちくらいのモンだろうな。」
アリス「もう、それはいいですからちゃんと聞いて下さいよ〜。」
「はいはい。どれ、見せてみろ。」
やっぱり、こういうところじゃアリスの雰囲気ってどこか違うな…
まぁ、会ってほんの少ししか会ってないからなんとも言えないが。
近くのファーストフード店に行ってからは、この、まるで“デート”は雰囲気を一変してしまった。
客「ねぇねぇ、あの娘ってTVで見なかったっけ。」
客「確か、平和の使者とか言ってマスコミがスクープしてたよね〜。」
客「ってか、もうホントに“平和”って何だよみたいな?今地球崩壊してますけど〜。」
客「じゃんね〜マジありえんし〜。ど〜せ死んでも何もないけど、せめては平和の使者らしくなんかやれって〜みたいな?」
客「だよね〜、もしかしたら地球崩壊させてんのあの娘だったり?」
客「あっはは、ウケる〜vしかも誰だよあの男?みたいなv」
と、一際大きな声で話す学生グループ。しかも店内を見回すと殆ど同じような世代の連中しか集まってなかった。
「………あとで、近くのCDショップ行かない?」
アリス「あ、はい。いいですよ。」
あくまでアリスはどことなく陰のある笑顔を見せてくれた。
「んじゃ、さっさと食っちまおうぜ?」
アリス「そうですね。」
と、その後はそれらしい話をすることも無く、食べ終わり次第に店を出て行った。
「アリスって、音楽聴いたりするか?」
歩道では人ごみと話し声が絶えない。特に、入国者だらけの今の時世は。
アリス「クラシックなら、義父様に聞かせていただいたりしました。」
その話し声の中には、アリスに対する嫌味のような話も時折混じっていた。
「そういえば親父、クラシック系大好きだっけ。っていっても、俺にはほんの少しの“良さ”みたいなもんしか分かんないからなぁ、そういうの。」
アリス「いえ、私も難しく考えないですよ?何より、クラシックが日常の“音楽”でしたから。」
「なるほど。じゃあ、クラシックのコーナー行ってみるか。」
アリス「はい、ありがとうございます。」
「………。」
アリス「………。」
いっぺんに話題がとんでしまった。
そしてアリスを見てみると、落ち着き無く道行く人を眺めたりしていた。
ファーストフード店の時の話し声の反動のせいか、挙動が不審な感じになっていた。
「おいおい、気にしすぎるなよ。」
アリス「はい?何のことですか?」
ギョッとしたような表情でこっちを向いた。
「下手に気にしすぎるとかえって気が滅入るぞ。今は楽しむことに集中しようぜ?」
アリス「…はい、すみません。」
「謝るなよ。遊びに来たんだろ?ほら、もうすぐCDショップだ。早く来ないと置いてくぞ?」
と言いながら少し歩を早める。
アリス「あ、早いですよ…!」
アリスも歩を合わせる。
アリス「置いていくだなんて酷いですよ〜。」
「って言ってちゃんとついてきてるじゃないか。」
アリス「ム〜…。」
そしてアリスが何も言えずに唸っている間にCDショップに到着した。
到着してからは早かった。
すぐさまクラシックコーナーへ向かうや否や、色んなCDを物色し始めたのだった。
アリス「あ、この曲なら分かります。あ、こっちにはメンデスルゾーンが…」
「なんだか、昔の親父を見てるみたいだな…」
やれやれと手を額に当てる。
アリス「だって、好きなんですもの。隆仁さんは、何か選んだりしないんですか?」
「ん、そうだな…」
と、目に入ったものをひょいと掴みあげて、
「これなんかどうだ?」とだけ聞いてみる。
アリス「魔王、ですか。確かに、曲調は好きですけど…」
「今のタイミングにぴったりかもな。」
アリス「む〜、不吉なことを言わないで下さいよ。それよりも、こっちのほうが今にはぴったりなんじゃないかと思いますよ?」
と、ずいと俺の目の前にCDを掲げた。
「…ドヴォルザーク……?」
アリス「そうです。因みに、お勧めするのは『新世界より』です。」
「…交響曲第9番ホ短調作品95…だっけ。」
アリス「…すごい、よく覚えてますね。」
感心された。
「いや、なに、親父が一番好きな曲が確かそれでさ、子供の頃に何度も聞いたんだよ。意味の分からない正式名称をな。」
アリス「そうだったんですか…道理で、義父様はよくお聴きになる訳ですね。」
「もしそれでよかったら買ってやるぜ?」
アリス「え?でも、いいんですか?」
「あぁ、当たり前だ。そんくらいお前に買ってやれるさ。」
アリス「でも、やっぱり悪いですよ…。」
「だから、遊びに来たんだっての。」
アリス「あ…」
いかにも抜けた声がアリスの口から飛び出た。
そして、
アリス「じゃあ、お願いします。」
と口元を綻ばせた。
CDショップから出た俺たちの動きは止まっていた。
いや、一目散に俺たちは駅へと駆け込んだ。
…遠い空に、灰色を見上げてしまったからだった。
すぐさまアリスは、「戻って義父様に知らせましょう。」と言った。
そして、電車を降りて一時的に帰宅し、研究所に向かおうとしたが…
アリス「あぁ…………ぁぁあぁ……!!」
アリスは窓を見て、驚きに声を発せないでいた。
遠くに見える研究所は既に、黒ずんで静止してしまったのだ。
「そんな………」
バカな……………!!!
望まれぬ闇は、既に目前にまで達してしまった。
…えぇっと、次なんだ?めんどくさい。こんなん、ナレーターの私じゃなくて作者が読めばいいじゃん。誰だっけ?クロナガ?黒永サン?知るか、んな苗字の人。へ?違う?ペンネーム??まあいいや。
あ、因みに私はナレーターのなっちゃんです☆(ナレーターの“な”で悪いかコラ、はぁと。)
これからも世露死苦ぅ♪
次回、電脳終末アリス楽章「Philosopher's stone」
今、怒れる悪魔は復讐を遂げる…
(*今回は大して嘘が入ってません。)




