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009 新たな出会い(美少女)

「よろしい。では彼にも話を聞かせよう。シリエル、例の話を」


 フェイマスに促され、秘書のシリエルが説明を始めた。

「現在我が商人ギルドは、野盗と思しき集団に交易ルートが脅かされています。モングーとの交易の荷馬車が襲われているのです」


「場所は?」

 ガブリエルが「俺たち」を代表して聞いた。


「この半年の間、襲われたのは24回。いずれもフリギアから比較的近いバルダニア領内です。詳しい場所は、後で地図を差し上げます」


 こんだけデカい商人ギルドを相手に「仕事」をするとは、相手も大したもんだな。ただの追い剥ぎならともかく、ギルドに所属する商人を狙うとなると、冒険者を雇われて追手をかけられることになりかねない。


「ガブリエルの奴は俺よりは弱いが、この辺りじゃ有名だろう。その奴に加えて、なぜ俺まで雇う必要がある?」

 ガブリエルが噛みつくように睨んだがそれは無視。俺はフェイマスに視線を向けた。


「ふむ、なかなか鋭いな。そう、すでに討伐隊を差し向けたのだ。だが、ことごとく帰ってこなかったのだよ」

「あんたの選りすぐりの冒険者が?」


 フェイマスは一瞬眉をしかめたが、すぐに表情を元に戻した。さすがに食えなそうなおっさんだ。


「そうだ――残念ながらな。これでも腕のたつ者を集めたつもりだったが、全員殺られたらしい」

「ということは相手の人数などは分からないのですね」


 ガブリエルが言わずもがなのことを口にする。誰も帰って来なかったのだから、敵の情報などあるはずもない。


「まあ、だからこそ分かることもあるさ」


 フェイマスは一度に3組のパーティーを送ったらしい。一パーティー5人として、15人前後ぐらいだ。

「それを皆殺しに出来るってことは、かなりの手練が結構な数いるってことだろ」


「そのとおり」

 フェイマスはニヤリと笑みを浮かべた。


「そこで君たちに依頼したいのだよ。ガブリエル君は私が知る限り、この辺りでは最高の冒険者。そして彼のパーティーも一流揃い。本当は彼らと組むに相応しいパーティーをアレックスに紹介してもらおうと思ったのだが、ちょうど君がいて良かった。君ほどの男だ、パーティーも優秀なのだろう?」


 フェイマスは権力者だけに無用なお世辞を言う男ではない。奴が期待していると言うなら、本当にしているのだろう。


「まあな。それで報酬は?」

 この依頼はかなりヤバイ仕事だ。それなりの報酬がなければ割が合わない。まあ、商人ギルドの長が直々に出向いてきているんだ。面子もあってケチることはないだろう。


 フェイマスはシリエルに報酬について説明させた。やはりかなりの額になる。5、6人で分けても半年は遊んで暮らせるかな。俺は十分満足したし、ガブリエルも嬉しそうだ。この金ピカ野郎は、金遣い荒らそうだからな。


「金貨だけではない。もしこの依頼を果たしてくれたら、君たちを私の新たな贔屓にしようじゃないか」


 偉そうなフェイマスの態度に俺は舌打ちしたくなるが、実のところ俺たちはヒルデグリムのパーツを集めるため、力のある商人とのコネを必要としている。商人たちの情報ネットワークは広い。奴に近づけば、ヒルデグリムに関する情報も集まりやすくなるだろう。


「分かった。この依頼、このガルフ=アンブローズが確かに引き受けた。期待して待っていてくれ」


**


「と、言うわけだ。お前たちにもパーティーに参加してもらいたい」


 俺はギルドのホールで待っていたリオーナとユニスに、パーティーに参加するよう頼んだ。


 正直なところ、今回の依頼の難易度を考えた場合、リオーナとユニスでは力不足は否めない。恐らく依頼の難易度は中級から上級といったところだが、二人は初級の中から上といったところだからだ。


 だが俺とアルゼリアは二人とも剣士だし、優秀なマジックキャスターがそう都合よく見つかるとも思えない。以前一緒に冒険してリオーナとユニスの力は知っているが、連携の相性は良いし、俺たちが適切にサポートしてやれば実力以上の力を発揮できるだろう。


「貴男のパーティーにですか? なにか邪悪なオーラを感じますね」

 ユニスが失敬なことを言う。彼女はアルゼリアが魔神だと知って俺を警戒するようになっている。俺はアルゼリアの方を見たが、奴は素知らぬ顔だ。

 ――別に男として警戒しているわけではないぞ、たぶん。


「ガブリエルの奴と一緒なんでしょ? 嫌よ」

 リオーナは奴にしつこく付きまとわれて閉口しているようだ。今回はそのガブリエルと一緒なんだから無理もないか。

 だが!! ここで引き下がっては夢のハーレムパーティーは結成できない。折角マルケルスが居ないっていうのに(悪)


「そもそもお前らなんでギルドに来てたんだ? どうせマルケルスの怪我で冒険に出れなくなって、金に困ってんだろ?」

「ゔっ」


 痛いところをついたようで、リオーナとユニスが声をそろえて反応した。やはりな、ククク。


「だが、お前ら二人で冒険なんて出られるはずがない。魔術師と神官だけじゃなぁ」

「ギルドで見つけようとしてたのよ!」


 ツンデレキャラのリオーナが反発する。


「で、見つかったのか?」

「……」

「だろ? だいたい冒険にでるなら前衛が二人は必要だ。女戦士なんてそこらに転がってるはずもなし、まあ普通戦士は男だよな。お前ら初めての男を信用できるのか? ガブリエルみたいにお前らを狙っていないとも限らないんだぞ?」


 思った通り、リオーナとユニスはギルドで戦士を探していたが、なかなか踏ん切りがつかなかったらしい。爽やかな剣士ならともかく、むさい男の戦士なんてそりゃ嫌だわな。


「悪い話じゃないと思うぜ。報酬もかなりいい仕事だ」

「し、仕方がないかぁ。生活費に困ってるのは確かだし」


 しめしめ、リオーナが弱気になってきた。


「ちょっと難易度は高いが必ず俺とアルゼリアが守ってやる。俺たちの力は知ってるだろ? な、アルゼリア」

「ん? ああ、我がガルフからも守ってやるぞ」


 お゛いっ!! 


 その言葉で、リオーナとユニスはパーティーに加わることを了承した。


 ――と、そこにガブリエルが姿をあらわす。奴は俺が部屋を出た後も、フェイマスと何か話していたようだ。ちっ、有名人が。


「君たちはその四人で野盗退治に出るのか? 僕のパーティーの足を引っ張らないでおくれよ」

「おいおい、お前ついさっきまでリオーナとユニスをパーティーに誘ってただろ? 断られたからってその言い草は度量が狭くはないか?」


「ゔっ」

 ふふふ、口で俺に勝とうとは十年早いわ。


「隊長、新しい仕事が決まったのですから早くメンバーに招集をかけましょう」


 固まっているガブリエルの横から、女の子が声を投げかけた。黒髪のボブに、黒い瞳とこの辺では珍しい容姿。モング−かキタイの血が入っているのか? 身長は女の子にしては長身で、細いながらも鍛えられたいい身体をしている。


 金属鎧を身に着けているってことは戦士なんだろうな。

 うーん、いままで俺の周囲には居なかったタイプ。いいねっ!


「これこれ、君は誰だ?」

「は?」

 黒髪の戦士は、不意に話しかけられて驚いた顔をしている。


「俺は君たちと同行するパーティーのリーダー、ガルフ=アンブローズだ」

 俺はキリッと挨拶した。同じ任務につくという立場を上手く利用する。


「失礼しました! 私はガブリエル隊長の副官を務めるジゼルと言います。以後お見知りおきください」

「ジジ! こんなやつの相手をする必要はない。行くぞ!」


 俺にやり込められたもんだから、ガブリエルの奴、怒って行ってしまった。ジゼルちゃん、ジジって呼ばれてるんだな。可愛いじゃないか。ジゼルは俺の方を振り返って「サヨナラ」と口で形を作ると、「隊長」とともに去ってしまった。


 ふふふ、あの子と一緒に冒険ができるなら今回の依頼も捨てたものじゃないな。俺は新たな冒険に対して胸を高鳴らせていた。

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