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007 聖騎士の御登場?

 「魔眼」パーティーとの仕事を終えた後、俺たちはギルドの依頼を二度こなした。商人の護衛と地方の村に出没するモンスターの討伐である。どちらも簡単な依頼だったから、アルゼリアを剣化する必要もなかった。まあそう何度もあってもらっては困るんだけどな。


 高い酒をアホみたいに飲むアルゼリアのせいで(俺は大して飲んでない)手持ちの金が少なくなり、その日俺たちはまたギルドに来ていた。


「あれっ!? ガルフじゃない、久しぶり!」


 声をかけられた方をみると、「魔眼」のリオーナだった。ユニスも一緒だ。彼女たちとは初依頼の後、ちょくちょく街や酒場で顔を合わせている。俺としてはこの2人ともっと仲良くなりたいと思ってるんだが、なかなか上手くいかないんだな、これが。


「よう、リオーナ。魔眼には目覚めたか?」

 俺はニヤリと笑みを浮かべながら、リオーナをからかった。


「ちょっと、やめてよね!! 人の黒歴史を掘り返して何が面白いのよ!」

 くくく、そうやって顔を赤くて照れるからだよ。反応が見てて面白い。


「あまりリオーナをからかわないでください。これでも腕の良い魔術師なんですから」

 神官のユニスが俺をたしなめる。ユニスはエッチな身体をしているけしからん神官だ。


「悪い悪い、ついな」

 俺は頭を掻いて弁解した。いい歳して可愛い女の子をからかいたくなるとは、俺もアホだな。


「ところで、今日マルケルスはどうしたんだ?」

 話題を変えるために俺がふと漏らした疑問に、2人の顔がさっと曇った。なんだ?


「実は、マルケルスはいま怪我をしていて、安静にしないといけないんです」


 ユニスが無念そうに答えた。ちなみに神官の魔法で傷を癒やすことはできるが、完全に治せるわけじゃない。

 だから申し訳なさそうにしているからといって、ユニスちゃんが悪いってわけじゃない。


「酷いのか?」


 マルケルスは手練とは言えないが、腕はそう悪く無い。防御力の高い防具を身に着けていることもあるし、そうそう重傷を負うようなことはないはずなのだが。


「ええ、決して良いとは言えないですね。あと二週間くらいは冒険に出れないでしょう」

 

 それを聞いて俺は逆にほっとした。マルケルスは気の良い奴で、リオーナやユニスを含めて、このフリギアで俺たちの数少ない理解者と言っていい。二週間なら軽くはないとしても、それほどの重傷ではないだろう。


「なんだってそんな怪我をしたんだ? モンスターにでもやられたのか?」

「いえ、それが……同じ冒険者にやられたのよ」

 リオーナが彼女に似ず嫌悪感を込めて言った。ほう、冒険者とのトラブルか。


「なぜ同じ冒険者に? 決闘でもしたのか?」

「それは」


 リオーナが説明しようとした時――


「やぁ、リオーナにユニス。また会えたね。あの話考えてくれたかな?」


 見知らぬ男がギルドに入って来るなり話しかけてきた。顔を見ると中々のイケメンだが、金ピカな鎧を着ているし、何やらいけ好かない。

 

 いや、これは断じて俺のひがみじゃなくて、リオーナやユニスの表情にも嫌悪感がありありと浮かんでいる。


「それはもう断ったはずです」

 男を見つめるユニスの目には、怒りが宿っていた。何だか良く分からないが、きっぱり言い切ったな。


 男はユニスとリオーナの視線を平然と受け止めると、スッと彼女たちに近づいてリオーナの肩に手を置いた。


「な、なにを!」


 男の無礼な態度にリオーナは怒りを爆発させ、男の顔に肘を入れようとしたが避けられてしまう。


 俺は男の態度ではなく、その動作に注目していた。リオーナに悟らせずに近づき、肩に手をやり、髪をクンクンしたあの動き、あれは相当に訓練された剣士でなければ出来ない芸当だ。奴は一体何者だ?


「ふふふ、そう邪険にしないでくれよ。美しい女性に手をあげたくはないが、例のリーダー君みたいになってしまうよ」


「この!!」


 2人は男の言葉に容易く挑発されている。正直冒険者としてこれはダメ。彼我の戦力差を冷静に分析し、対処出来るようにならなければ、すぐに冒険で死ぬことになるだろう。後で俺がレクチャーしてやらないとな。


 そろそろ介入するか、俺がそう考えているとアルゼリアも視線でそう訴えてきた。奴は単に騒ぎを起こすのが好きなだけだろうが。


「ユニス、この金ピカくんは誰だ? こいつと何かあったのか?」

 俺は男と2人の間に割って入った。わざと男の方は無視する。


「この男はガブリエル、この辺りで知らない者はいない有名な冒険者です。二つ名は『聖騎士』」

「聖騎士ぃ~?」


 俺は胡散臭げな目でガブリエルという男を見た。二つ名が付けられているからには、それなりに名の通った冒険者のはずだ。しかし聖騎士とはね。


「聖騎士という二つ名は、当然だけど僕がつけたわけじゃないよ。僕が以前シュバルツバルトの近衛騎士団に所属していたことから、他の連中がつけた名さ」


 俺がリオーナの方を見ると、彼女は黙って頷いた。


「へぇ。こんな人格破綻者でも近衛騎士ってのは成れるのか?」

「だから追放されて冒険者やってるんでしょ」

 リオーナが間髪いれずそう断じた。なるほど、な。


「いやだなぁ、勝手に決めないでおくれよ。才能あふれる僕が国に仕えるなど、しょせん無理だったんだよ」

「俺にはお前が誰でも構わないが、マルケルスの奴をどうしたんだ?」


「リオーナさん、説明してあげてよ」

 奴は自分で語らずリオーナに委ねた。こいつ、自分を偉そうに見せる典型的な人間だな。


「この男は、私たち2人に自分のパーティーに入るようしつこく勧誘してきたのよ。で、それをとがめたマルケルスと決闘になって……」


 まあ、その先は聞かなくても分かる。マルケルスは彼女たちを助けようとしてやられたってことか。まぁ、マルケルスのレベルではこの男に負けるのは当然っちゃ当然か。


「ところで君は誰だい? 我々の会話に平然と入ってきているが」

 ガブリエルは人を見下す眼で俺を見てきた。


「俺はガルフ=アンブローズ。最近この街にやってきた旅の剣士だ。こいつらとは以前ギルドの依頼で一緒に冒険した仲だ。ま、戦友ってわけなんで見過ごすわけにはいかねーな」


「ガルフっ!」

 リオーナとユニスは俺の友情あふれる言葉に感激しているようだ。


「君も冒険者というわけだね。しかし、冒険者をやっていて僕のことを知らないとはね」


 けっ、てめぇの事なんか知らんわ!


「ところで君の後ろにいる美女は誰かな?」

「ほぅ? 我が美女だというのは事実だが、なかなか見る目があるようだな。我はアルゼリアという」


 ガブリエルは奴の偉そうな言葉を聞いて、なぜか嬉しそうだ。


「いいですねぇ。あなたのような女性は特に私の好みなんですよ。ぜひ私のパーティーに入っていただけませんか?」


 こいつアホだ。アルゼリアにそんなこと言う奴は碌な目にあわんぞ。


「貴様のパーティーに? 話にならんな」

 アルゼリアがにべも無く断る。まあ、そりゃそうだわな。


「あなたはこのガルフという男のパーティーに入っているのではないですか? なら私がこの男に勝ったらパーティーに入ってくれませんか? あなたも弱い男の下には付きたくないでしょう」


 あっ、やば。なんか嫌な予感がするぜ。


「ほぅ? 面白そうではないか。よかろう、お主がガルフに勝てれば仲間になってやろうではないか」


 くそ! さてはこいつ退屈を紛らわせたいだけだな。本当に俺が負けるとは思ってないんだろうが。いや、負けたら本当にやガブリエルに乗り換える気か?


 俺はアルゼリアに視線を向けた。奴は成り行きを楽しそうに見守っている。ちっ、これだから魔神ってやつは。俺は舌打ちしたい気分だった。


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