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014 マリクスとの戦い

「やあ、ガブリエル! 苦戦しているらしいな。助けが必要か?」

 俺は場違いなほど朗らかな調子で呼びかけた。


「ようやくお出ましかい? 手柄を横取りされるのは御免被りたいが、どうしてもと言うのであれば手助けを許可しよう」


 ガブリエルの言い草に、俺は思わず口元をニヤつかせた。この状況で、こいつもなかなか良い性格してやがるぜ。


「不本意だが、同じ主に雇われている身。協力せざるを得ないみたいだな」

「そう願います。協力しなければ倒せそうにない相手ですから」


 こんな時でもロイドはいたって冷静だ。ほんと、この男の胆力も普通じゃない。


「おやおや、援軍が来ましたか。あなた方は彼のお友達ですか?」


 敵の最後尾にいる赤いローブを着た男が語りかけてきた。こいつがマリクスという奴だな。け、キザな格好をしていやがる。


 ロイドがスイと前に出た。


「あなたが帝国の上級魔術師、マリクス殿ですね?」

「そうだが、君はどなたかな?」

「私はフェイマス氏の使用人ロイドと申します。あなたは恐れ多くも我が主人を脅迫された。主人の命により、あなたを排除させていただきます」


 ロイドは右拳をやや前にして、独特の前傾姿勢の構えをとった。これは良い喧嘩の売り方だぜ!


「ははは! 君はこの状況が分かっているのかな? 劣勢なのは明らかに君たちだと思うのだがね」


 マリクスは勝ち誇ったような得意顔を浮かべていた。こういう自分が絶対的優位に立っていると思っている奴をやり込めるのも楽しいもんだ、


 なあ、アルゼリア!!


「それはどうかな!? 数はともかく、こっちも精鋭揃いなんだぜ!」

「ほう、それは楽しみですねぇ。それであなたはどちらさまで?」


「俺はガルフ=アンブローズ! 旅の剣士だ。こっちは相棒のアルゼリア。後ろの二人がリオーネとユニス。

 これがお前を倒す者の名だ!!」


 どやっ、俺は大上段から大見得きってやった。リオーネ、ユニスも後ろで見とれているに違いない。


「アルゼリアだと!? まさか……」

 だが、マリクスの反応は予想と大きく違った。ん? アルゼリアの名前に反応するだと? まさか、伝説の魔具を知っている奴か!?


「その反応、予想外だぜ。なぜアルゼリアのことを知っているのか、聞かせてもらうか?」


 俺はスッと眼を細め戦闘態勢に入った。もはや問答は無用だ。奴は殺さずに生かして捕らえてやる。


「リオーネ! ユニス! 援護を!!」


 俺の掛け声に従い、二人が魔法を詠唱する。ユニスはブレス、リオーネはマジックシールドを。相手は上級魔術師にマンティコアだ。魔法に対する備えは絶対に必要。


「そいつらを倒しなさい!」


 マリクスは護衛の戦士、竜牙兵、マンティコアたちに指示を出す。自分は後衛でこそこそしやがって! って、奴は魔術師、それが当然の戦術だろうな。


「ガブリエルとジゼルはマンティコアを押さえろ! アルゼリアはもう一体のマンティコアを、ロイドは竜牙兵を倒せ!」


 俺は全員に指示を出し、護衛の戦士に守られたマリクスに向かった。この状況ではガブリエルたちも従わざるをえないだろう。


 俺の相手は戦士3人に魔術師のマリクス。これははっきり言って分が悪い。ガブリエルたちが早く敵を倒して助太刀してくれるのを願うしか無い。


 俺は敵の戦士たちの中に身を隠した。ん? 言い間違いじゃないぞ。マリクスの魔法から身を隠したんだ。

 強力な魔法ってのは大抵効果範囲が広いもの。敵の戦士の近くにいれば、よもや味方を巻き込むような魔法は使えまい。


「てぇえい!」


 俺の剣が敵の一人を切り裂いた。相手の戦士の腕は悪くないが、俺に脅威を与えるほどではない。3人もいれば厄介ではあるが、一人一人倒していけば問題ない。


 ――その時

 ボォウ!


 俺の身体が激しい炎で包まれた。くっ、マリクスの魔法か!

 俺は意識を集中して呪文に抵抗した。リオーネのマジックシールドもあって、何とか耐えられる。もちろんノーダメージってわけにはいかないがな。


 ロイドは一人で二体の竜牙兵を相手にしていた。手に鋼鉄製のグロープをはめ、竜牙兵に拳で対抗しているのだ。骨だけの敵に剣は不利。俺がロイドを選んだのは、打撃系の方が相性が良いからだ。


 骨製の盾に拳を防がれたロイドは、敵の剣を交わすと反対の拳で敵の右手を粉砕した。そしてそのまま左脚の強烈な蹴りで竜牙兵の頭をふっ飛ばした。このおっさん、全身が凶器みたいな奴だ。


 三体のマンティコアに対しては、ガブリエル、ジゼル、アルトリアが対峙していた。俺は一対一でも勝つことは出来るが、容易というわけじゃない。アルゼリアとガブリエルなら大丈夫だろうが、ジゼルはどうだろうか。

 彼女をマンティコアの防ぎに当てたのは、彼女の位置が近かったからに過ぎない。


「アイス・バニッシャー!」

 ジゼルは聞いたことのない魔法を行使した。たちまちマンティコアの周囲の空気が氷付き、手のこぶし大の氷塊がいくつも出現する。そしてその氷が一斉にマンティコアへと突き刺さった。


「グゥオオオオオオ!」


 モンスターが苦悶の声をあげる。致命傷とはならずとも、大きなダメージを与えたようだ。どうやらジゼルは魔法剣士のだようだ。それも魔法の腕はなかなかのもの。

 黒髪の凛々しい女戦士というのもなかなか良い。ガブリエルのパーティーに置いておくのは実に勿体無いぜ。


 俺は二人の戦士に挟まれていた。背後を取られぬよう立ち位置を調整し、どちらにも牽制できるよう剣を交互に向ける。一つのところにおらず、絶えず動きまわって敵の隙をうかがう。


 二人の戦士が直線上にならぶ瞬間、俺はそれを見逃さなかった。これでやつらは連携出来まい!

 俺は急激に間合いを詰め、敵が慌てて振るった剣を身をかがめてかわす。そしてがら空きになった脇腹へ剣を突き刺した。

 これで残るは一人。一対一ならこんな奴ら俺の敵じゃない。


 そう思った瞬間――


 死角からなにかが俺目掛けて突進してきた。


 うぉっ!!


 風切り音に気がついて、間一髪バックステップでそれをかわす。なんなんだ!?

 見れば飛び込んできたのはマンティコアのうちの一体だった。どうやらジゼルが戦っていたやつらしい。魔法で傷つき、逃げてきたか?


「申し訳ありませんっ!」

 慌てたジゼルがこちらに走り寄ってくる。良かった、彼女は無事のようだな。


「協力してこいつを倒すぞ!」

 とりあえずジゼルと一緒にマンティコアを倒してしまおう。俺たちは左右に分かれて怪物を挟み撃ちにする。

 俺の意図を察し、ジゼルがマンティコアに斬りつける。やつの注意を引き付ける気だ。


 俺はもう一人の戦士に気を払いながら、マンティコアの隙を探す。奴はジゼルと戦いながら奥の手=毒の尾を繰り出した。

 ここだっ!


 奴の注意がジゼルに向いている隙を突き、俺はその太い尾を剣で切り落とした。


 ギャァオオオ!

 奴の苦痛の声を聞きながら、さらに脇腹に剣を突き刺した。腹に空いた穴から、どす黒い血がドクドクと流れる。

 マンティコアはどぅっとその巨体を横たえた。


 これで一匹は片付けたか……。


 ドォゴォオオオオオオン!!

 その時、突然轟音が鳴り響いた。灼熱の炎が後方で爆発したのだ。


 俺は背後を振り返る。そこには――そこには、リオーネとユニスが居たはずだった。


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