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010 全員集合(美少女)!

 二日後の朝、俺たちはフェイマスの商館前に集まった。我がパーティーは俺、アルゼリア、リオーナ、ユニス。ガブリエルのところは、ジゼル、男の戦士、男の魔術師、男の盗賊。


 ぷぷぷ、ガブリエルの所は男ばかり。そりゃリオーナやユニスを欲しがるわけだ。


 二人のような女の冒険者はそれだけ珍しいということ。さらにガブリエルの実力に釣り合う者となれば、ますます女は居なくなる。ってことは、ジゼルはそれだけ貴重な存在だってことだなぁ。


 フェイマスが出てくる間、俺たちは互いに自己紹介をし、親睦を図った。何しろこのメンバーで危地に飛び込むのだ。生きて帰るには互いを知る必要がある。うん、知る必要があるのだ。


「ジゼル、君は優れた剣士のようだ。そのうち手合わせしてみたい」

「はい! 私もガブリエル隊長と互角だったというガルフさんと戦ってみたいです!」


 俺は「互角」というところに引っかかったが、表情には出さない。和やかさを演出しなければっ。


「ところで、君の容姿はこの当たりだと珍しいね。どこの出身なんだ?」

「ああ、やっぱりそう思われますか? 母の出身がキタイなんです」


 やはりか。

 

 キタイ。遥か東方にあるこの辺りとは全く異なる文化が発達する国。フリギア周辺では、行ったことのある者はほとんどいない。フェイマスのとこの商人ぐらいのものだろう。


 キタイはこの辺りでは生産できない珍しい特産品が多く、交易は莫大な利益をもたらす。だからフェイマスたちは野盗討伐にやっきになってるわけだ。


 ジゼルは黒い髪に黒い瞳、切れ長の眼とエキゾチックな魅力がある。胸は大きすぎず、小さすぎず、ちょうど収まりが良さそうな大きさ。うーむ、実に良い。


 っと、ジゼルは俺がじっと彼女の身体を見ていることに気がついているみたいだ。やばっ、変な目で見られるかも。


「と、ところで君の持っている剣は変わった形をしているな。見せてくれないか?」

「――あ、ああ、この剣をご覧になっていたんですね? いいですよ、どうぞ」


 ふぅ、セーフ。

 ジゼルは腰から鞘ごと剣を抜き取って俺に渡してくれた。


 ふむ、確かに剣もこの辺とは違っている。鞘から剣を抜くと、刀身が湾曲している。俺も話に聞くだけだが、東方世界ではわりと良くあるスタイルみたいだな。

 女の子の持つ武器らしく、鞘に美しい装飾が施されている。俺が普段持っている量産型の安物とは違う。


「ほう、良い剣だ。これもキタイで作られた剣か?」

「そうです。母の形見で、ずっと肌身離さず持っていたもののようです」


 そうか、ジゼルの母親はもう亡くなっているんだな。まあ、こんな時代には珍しい話ではない。


「綺麗な装飾があって高そうな剣だが、母上は身分の高い方だったのか?」

 俺の見るところ、この剣は庶民が持てるようなものではない。貴族のような高貴な人間だけが持つものだ。


「さあ? 私は母の詳しいことは聞かされていないのです。幼いころに亡くなったので」


 しまった。これは、あまり突っ込んで聞いてはいけないことのようだ……。


「この美しい剣を持つ君がどんな戦い方をするか、ぜひ手合わせをしたくなったよ。この仕事が終わったら頼む」


 俺はジゼルと立ち会う日時を確約した。ふふふ、これで帰ってきたら必ず二人で会えるぞ。ジゼルちゃんはどうやらお硬い武人タイプみたいだな。この線で上手くやれそう。


 ――と、俺がジゼルと話し終わったころ、商館の前にフェイマスが出てきた。今日は奴からお言葉をいただいてから、野盗のねぐらに向かうことになっているのだ。


 俺たちは身なりが良く、血色の良いフェイマスの方に顔を向けた。俺のような旅の剣士なんかと比べて、商人も成功すれば良い御身分だよな。ま、俺は自由に生きられる今の生活が好きだがな。


「諸君、我がギルドのためによく集まってくれた。分かっていると思うが、敵は我らの交易を邪魔している野盗どもだ。これまで何組かの冒険者が返り討ちになっていることを考えると、かなりの戦力があるようだ」


 俺の側でリオーナやユニスが緊張した面持ちで話を聞いている。ま、二人にはちょっと荷が重い話なんだよな。


「だから諸君を選んだ! 諸君は私の眼鏡に適った冒険者である。必ずや無事に目的を達成してくれると信じている。無事任務を果たして帰ってきた者には、更なる追加報酬も考えている。ぜひ張り切って行ってきてくれたまえ」


 ひゅー、とガブリエルのところの盗賊が口笛をならす。奴のとこは、あまり上品でない者がまざっているみたいだ。ま、ボーナスは確かに嬉しいが。


 フェイマスもそんな冒険者を扱い慣れているのか、無礼な態度を気にもとめていない。


「案内人として私が信用する使用人のロイドを君たちにつける。何か分からないことがあれば、何でもロイドにたずねるが良い」


 フェイマスの後ろから、長身の男が進み出て頭を下げた。ロイドと呼ばれた男は一目で鍛えられていると分かる身体をしている。おそらくフェイマスの護衛なんだろうな。こいつを俺たちにつけるってことは、案内人というよりお目付け役ってことか。


 俺たちはこうして案内人のロイドを先頭に、野盗の待つ根城に向かったのである。

 ようやく10話までたどり着きました。これからも応援よろしくお願いします!

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