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ふわふわさん  作者: 村良 咲
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「あのね、こういう学校の七不思議みたいな話を真面目にするようなことはしたくないんだけれど、でも、前に赴任したときにも聞いたんだけど、どうもこの学校には本当に出るらしいのよね。私は見たことがないから、そんな馬鹿な……って、正直思うんだけど」


「本当にそんなことがあるんですか?学校でのそういう噂って、どこの学校にでもある、ただの噂だと思っていました」


「更衣室とかトイレとか、何か気付かなかった?」


「えっ?更衣室やトイレも……出るんですか?」


「盛り塩があったでしょ?」


「盛り塩?……えぇ、そういえばありますね。あれって、よくお店の玄関などにしてあったりしますよね。厄除けとか魔除けとか、そういう意味で学校でもやってあるんだと思ってましたが……」


「もちろん、そういう意味でもあるでしょうけど、それだけじゃなくて、お清めの意味もあるんじゃないかなって思う。教務に聞いたら、前の教務さんが異動の時に引き継ぎで、これだけは切らさないようにと前の教務さんに言われたそうで、その前の教務さんも同じように言われたとかで、どうやらずっとそう言われ続けて今に至っているようなの」


「そうなんですか。じゃあ大也君が言ってるふわふわさんって、もしかしたら本当になにか見えるのかな」


「そうかもしれないね。子供って、邪気がないから」


「参ったな……私、そういう話は苦手なんだよね。幽霊みたいなものって見たことはないけど、金縛りには遭うことがあって、あれは霊現象じゃないってことはわかってても、なんとなく怖いし、また金縛りに遭ったりしたら思い出しそうだわ」


杉田先生の話を一緒に聞いていた麻衣が、身体を抱え込むように両手で自分を抱き、一つぶるっと震えた、その時、


『キーンコーンカーンコーン』


「ひゃっ」


昼休みを終えるチャイムが鳴り、それに驚いた麻衣の肩がビクンとして、思わず顔を見合わせた私と2人揃って、泣き笑いのような顔をして頷き合った。



 帰りの会が終わり、『さようなら』を当番の合図で終えると、教室の出入り口に私が立ち、両手を胸の高さで手のひらを外に向けて揃えて、それにハイタッチしながら教室から出ていくのが毎日の恒例になっており、私はそうして子供たちの様子を見ながら送り出していた。


「せんせ、さようなら」


そう声をかけて私にタッチした大也は、いつもと様子は変わらず、先にタッチして横で待っていた優太と連れ立って、下駄箱に向かって行った。


1階にあるうちのクラス1-3は、右に配膳室給食室があり、左に行くと1-1のクラスを越えた教室とは反対側に下駄箱があり、教室から子供たちが下駄箱に向かうところが見えるようになっていた。


 大也と優太が右に折れ下駄箱で一段下りる瞬間、大也は急に顔を上にあげた。


えっ?と思い、目の前にいた賢人に「ちょっと待ってね」と声をかけ、下駄箱に急いで行き、大也が見た方向を見てみたが、やはり何も見えない。


「せんせ、どうしたの?」


いきなり目の前にきた私に大也が言い、優太を見ると、もう下駄箱から靴を取り出して上靴を入れ、履き替えているところで、これなら優太に聞こえないなと思い、大也にだけ聞こえるように、「ふわふわさん、ここにいるの?」と、指を上に指し聞いた。


「もういないよ」


「さっきはいたの?」


「うん、いたよ」


やっぱりそんな感じなんだなと、再び上を仰ぐと、


「せんせーい」


賢人の声が聞こえ振り向くと、賢人とその次で待っている大和の姿が見えた。


「気をつけてね」


そう下駄箱にいるクラスの子たちに向け声をかけ教室へ戻り、先ほどと同じようにハイタッチしながら子供たちを送り出した。

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