萌えるエルフとヒキニートの運命の第一日 続
第三話
萌えるエルフとヒキニートの運命の第一日 続
第一日 続 スピカたんのお家を冒険だ!
さて、着替えが終わり、食事も終わり、今、僕は呆然と立ち尽くしている‥‥‥。
‥‥‥食卓の前で。
うーむ‥‥さっきスリルクさんが、言った事が本当ならば、この世界には、僕と同じように地球人がいるという事になる。
そして、このワールド、つまりスタンディングワールドでは僕が初めての異世界人らしい。
‥‥‥他のワールドではどんな地球人が住んでいるのであろうか‥‥‥。
ふと‥‥‥そう思った。
だが、今そんな事を考えていても仕方ないな。僕には僕の生き方と言うものがあるのである。そう、社会から追放された、ヒキニートにだって、ちゃんとしたモットーくらいはあるのだ!
それは、『後先の事は考えない、とにかく今目の前で起きている事だけを考えるのだ。』というものである。
このモットーの意としてあるのは、とにかく今だけを考えろ、というヒキニート勧誘メッセージなのである♪ヒキニートというのは、後先を考えないものなのである。‥‥多分。
だから、みんなも、僕と一緒にヒキニートになろうでは無いか!僕(ヒキニートの先人)が、教えてやろう!
‥‥‥‥‥。
なんか、つまんないな。だいたい、僕がさっき考えていた事はもっと、重大な事だった気がするのだが。
おっと、それはもう考えないんだったな‥‥‥。
‥‥‥でもまぁ、暇だしな自分の部屋にでも戻ろうかな。やっぱり、自分の部屋というものは、万金にも値すると思うのだが、君達はどう思うかな?
‥‥‥‥‥‥‥‥応える訳ないか‥‥‥‥‥‥‥‥。
「わ、私なのですか〜。私はですね〜、良いと思いますのですよ〜。でもぉ〜、万金に値するほどではないかと思ったりもしているのですよ〜。」
なっ‥‥‥そう言えばそうだったな、スピカたんは、心を読める魔法が使えるんだったな。
でもそれにしても、この魔法、チートじゃないですかね。だって、考えてみてください。心が読めると言う事は、敵がいるときに使ったら、相手がどんな手を使って攻めてくるとか、丸分かりじゃないですか。しかもこの魔法、スピカたんに会ってから、気になったていたんだが、とても、魔法を使われたという感覚がないのである。話によればこの魔法は結構上位魔法らしいので、たぶん結構な魔力を、使うと思うのだがな。なんというか、あまり力を感じないのである。
まぁそりゃあ人間ですから、魔力なんてものは、感じる事など出来ないから、一概にチート呼ばわりは、出来ないのだが何故かわかる気がするのである。この魔法の凄さを‥‥‥。
「この魔法は凄いのですよ〜。だって〜誰も〜、心を読まれたことが分からずに、読んでしまうのですよ〜。」
「え?それって、もしかしてスピカたんと同じ種族のエルフでもか?」
「そうなのですよ〜。」
‥‥‥チートだ。
「けど〜、この魔法を使えるエルフには、気づかれたりする事もあるのですよ〜。」
やはりそう来たか。こういうチート的な、魔法やスキル、技術というものには、必ずと言って良いほど、一つ、弱点がついてくるものなのである。まぁそうでなきゃ、この世界も、あの地球も滅んでいるだろうしな。
「あと〜付け足すならば〜‥‥‥」
‥‥‥ってあれぇ。弱点は一つではないというのか!まぁそれも良いだろう。
「この魔法は〜、魔法エリートしか習得する事ができない、中級裏魔法なのですよ〜。」
「そうなのか。それは良かった‥‥‥。って、スピカたんって、そんなに凄いエルフたんだったの?」
「そうなのですよ〜。こう見えても〜、このワールドでは、1位2位を争うような、エリートなのですよ〜。」
「スゲェ〜。」
いや、本当凄いと思う。だって目の前にいるこの可愛い可愛いスピカたんが、このワールドで、1位2位を争うような、スーパー魔法エリートとか、本当、現実味が無いんですけど。というか、この世界に、僕がいる自体がまず現実味が無いんですどね。
でもまぁ、スピカたんが、物凄くやばい、エルフたんであるという事が、わかったのである。
そんな横で、スピカたんは‥‥‥、頬をほんのりと赤くしている。
「そ、そんなに褒められても、嬉しくなんか無いのですよ〜!もう〜!」
そう言って、そっぽを向くのである。
あら、可愛い!こういうスピカたんも嫌いじゃない。いわゆる、ツンデレというやつである。
でも、心を読めるというのも、案外苦痛でもありそうだな。何せ、何でもわかってしまうのだから‥‥‥。
例えば、僕みたいな、心の汚れたヒキニートの、心なんて読んでも、それはそれは、尋常じゃないほどの苦痛であると思うのである。そう思うと、可哀想だな、スピカたん‥‥‥。
僕の心なんて読まなくて良いのに‥‥‥。
そう思って。
「無理に、俺の心なんて読まなくても、大丈夫だぞ。そこまで価値のある清き心では無いからな…。」
いつに無く静かな、スピカたん。
「わ、私が〜、あなたの心を、読みたいと思うのは〜、私にもわからないのですよ〜。すいません、お役に立てなくて‥‥‥なのです…。」
そう言って、スピカたんは、この場から立ち去って行くのである。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
あれ?この僕とした事が、スピカたんを、悲しませてしまったでは無いか!恋愛シュミレーションを、マスターしたはずの、この僕が‥‥‥。やっちまった。
えっと〜、こういう時は〜っと、そうかスピカたんを、追いかけるのだ!
‥‥‥少し遅れて。
「おい、ちょ、ちょ、ちょ待てよ!」
なんて引きつりようだ。情け無い。
そして、走り出すのである。
すると、僕の部屋の、横にある少し小さめの、部屋に入っていてしまった‥‥‥。
‥‥‥自分の部屋に入られるのが一番困るんですけど‥‥‥。そう、思いつつも、声をかける。
「スピカたーん!そんなとこに居ないで、この、お家の案内を、おねがいしゃす!」
そう口走ってしまったが、それはその通りの事であるのだ。僕はまだこの家についての事は、何も知らないのである。
「わ、わかりましたなのですよ〜。私はあなたの、専属メイドなのですから〜。」
‥‥‥キー〜と言う、鈍い音を立てて、木で作られた戸が開き、スピカたんが出てきた。
何とも、いつも通りの顔で‥‥‥。
てか、何も悲しんで無くね。僕の考えすぎだったらしい。
という事で、僕は、スピカたんのお家を冒険するのだ‼︎
とは言っても、案内人スピカたんが、居るから、冒険というほどでも無いと思うけど‥‥‥。
そんな事は、関係ない。冒険と言うものは、新しい場所に行く事であるからして、案内人がいたところで、冒険と言う事には、かわりはないのである‼︎
という事で、スピカたんに案内してもらおうっと。
あれっ、スピカたんは何しているのかな。
「冒険か〜‥‥‥。」
「スピカたん?」
「あっ、失礼しましたなのですよ〜。それでは、今からこの家の案内をしますのですよ〜。」
どこと無く、儚いスピカたんで、あった‥‥‥。
「それでは、ついてきてくださいなのですよ〜。」
そうして、儚げなスピカたんの背中を見つめながらついていくのである。
まず、案内されたのは、僕と、あとさっきから見かけないリンちょくんの部屋である。それは、一階からの階段を上がって、すぐ右隣にある部屋だ。
てか、何で俺とリンちょくんが同じ部屋に居なければいけないのか?これは、結構僕としては、疑問なんですけど!
まぁそれは、おいといてと。
この、部屋の外見はと言うと、なんか、いかにもエルフたんが居ますよ〜って感じの、部屋なんだが‥‥‥。まぁ、実際僕とリンちょくんしか住んでないんですけどね‥‥‥。
それと言うのも、まずこの部屋の、戸にある。それは、木でできていて、また、その木の戸に、刻印のように張り付く、蔓が伸びていて、とても美しいのである。
‥‥‥まるで永遠に枯れる事が、ないような気がしてくるのだ。
戸の前で‥‥‥。
「あっ、そう言えばなのですよ〜。今日から〜、か、か、カケルと呼ばせていただいても、よ、良いでしょうか〜…。」
下を向いて、後ろめたそうな顔で、頼んでくる‥‥‥。
そんな、顔で頼まれて、断れる人間がいるものか!あの地球にいた頃は、名前で呼ばれたことも無かったこの僕が、スピカたんの、頼みを断る理由など無い!
全くもって無い‼︎
「勿論だー!」
「良かったのですよ〜。」
と言って、続いて僕の部屋の横にある、スピカたんの部屋に行くのである。というか、僕‥‥‥ミチカケと自分で自分の名前を、勝手に略称してたっけな…。
ぷっ、可哀想な奴!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
なんか、僕の部屋と大差変わりないな。あえて言うならば、ちょっと小さいくらいかな。
そして、部屋の中に入ってくのである。
「は、入ってしまった‥。地球にいた頃は、自分のヒキニート部屋だけが、あの地球で存在する取柄だったというのに…。」
「そうなのですか〜。」
面々蒼白に応えるスピカたん。
なんか、スピカたんの部屋って、落ち着くな。シングルベッド一つに棚が二つ並んでいて、そして、外を眺める事ができる大きな窓が一つあるだけなのである。
部屋全体で言うと、壁が木張りになっていて、とてもアットホームである。
それに比べ、僕の部屋ときたら、シングルベッド一つに、棚が一つと小さな窓が一つあるだけである。しかも、シングルベッド一つということは、僕は、リンちょくんと一緒に寝るということである。
‥‥‥どうせなら、スピカたんと寝かせろよ〜〜!
「何か言いましたのですか〜?」
「いや、何も言ってません‥‥‥。」
‥‥‥冷や汗でてる。
そして、少しスピカたんの部屋を、徘徊したところで、僕とスピカたんは、その部屋から出てくるのであった。
さて、次の部屋は、何かな〜?
「次の部屋は、なのですね〜‥‥‥。」
そして、歩き出すのである‥‥‥。
ふと、木の枠にはまった窓張りから、外を見やる。朝陽が昇り、このログハウスを照らすのである。なんと幻想的な光景なのであろうか。ヒキニートな僕には、朝陽と言うものは、存在しないとまで思っていたのだが…。あったんだ朝陽は…。ちゃんと僕の目の前に。
そして、太陽と言うものは、僕の、大敵である。
そもそも、僕の部屋には、窓と言うものは存在しない。これこそが、王道ゆくヒキニート部屋というものだ!
‥‥‥‥‥‥‥ふっ、決まったぜ!
そうこうしているうちに、次の部屋へ、着いた。その部屋は、スピカたんの部屋から、二、三メートル離れた所にあった。
‥‥‥‥‥‥‥。
そこは、どうやらスピカたんの父と母の部屋らしい。何故分かったと言われれば簡単だ。
その部屋の戸に、名札が貼ってあるからだ。それも、その木板に刻まれている名と言うのが‥‥‥『スピルンとスリルンの愛の部屋』‥‥‥っておい、本当かよ。これ‥‥‥。あんな真面目そうな二人の夫婦が、何処か間違った方向に走ってる気がするのだが。
‥‥‥どう思うよこれ?
「誠に遺憾ながら、大それた夫婦でございますのですよ〜。本当に〜、恥ずかしいのですよ〜。」
少し引きつった顔で、そう言うスピカたんであった…。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
初めて見たんですけど、子に引かれていてる、親とか…。何か、可哀想だな。二人とも、美男と美女なのに。
まぁそれに比べてヒキニートな僕ときたら、まず対人会話と言うものはした事がほとんど無いし、していたとしても、不敵に笑って誤魔化すくらいしかできないコミュニケーションの持ち主だ!そんな僕が、家族と喋るということは、全くもってあり得ない話なのである。
こんな僕に比べれば、この家族はまだまだマシだな。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
そして、ノックするのである。なんか、ノックしたら、ヤバそうな雰囲気がするんですけど。
「入っていいぞー。」
ふー、なんか普通そうでよかったー。
そこに居たのは勿論、スピルクさんとスリルクさんであった。‥‥‥一緒に着替えているらしい。しかも、堂々と…。
え?この家族大丈夫かな?あと、なんで着替えていると言うのに、普通に入っていいぞー、なんて言うのかな?疑問の多い家族だ。
「あっ、スリルン♡ボタンが取れてるわよ。今付けてあげますからね♡」
「頼んだよ、スピルン♡」
‥‥‥うん、分かった。
この部屋からは、とっとと出ましょう!
そうして、僕はスピカたんの手を引いて、この部屋から出て行くのである。
さっきのあれは、多分、仕事へ行く支度だったのだろう。二人とも作業着的な何かを、一緒に着替えていたしな。
ここはひとまず、退散するのが、大人の選択というものだ。仕方ないのだ…。あのまま、あの部屋にいると、僕とスピカたんには、ふさわしく無い、悪い影響が出ると思われる。だからして、僕は退散するを選ぶのである。
それはさておき、二階にはもう部屋は無いらしい。という事で‥‥‥。
「一階に行きますのですよ〜。ついてきてくださ〜い。なのですよ〜。」
「おう。当たり前だ!」
今、この家で鳴り響く音と言うのは、僕とスピカたんが歩く、足の音と、外から聞こえる、鳥達の鳴き声‥‥‥。
「だ、ダメですよ、そこは‥‥‥。」
愛の部屋から聞こえる、不可解な声だけだ。
うむ、台無しだな‥‥‥。せっかくの自然が。
「着きましたなのですよ〜。ここがリビングなのですよ〜。とは言っても、先程来ましのですけどね〜。」
そこは、スピカたんが言った通り、リビングである。紛れもなくリビングである。
キッチンもあるし、勿論、食卓だってある。
ただ、テレビなどの、電化製品は無いようである。当たり前かな、ここは異世界なのだから、地球とごっちゃにしてはいけない世界だからな。
そして、キッチンには、ガスコンロも無ければ、IHも無い、ただあるのは、鍋や皿などの食器だけである。これどうやって調理するんだ?
「これは〜、魔法を使えば〜簡単に出来るのですよ〜。」
そ、そうだったな。ここは異世界だった。さっき言ってたことを、もう忘れてしまうなんて…。
「そんなことよりも〜‥‥‥」
なんか、いつに無く元気のあるスピカたんだな。どうしたんだ?
「次の場所が一番のメインエリアなのですよ〜!」
「そ、それは?」
なんだろう、本当に分からない。
じっとスピカたんを見つめる…。
「お風呂なのですよ〜!」
あっ、そうかなるほど。僕とした事が、覗き見という、メインイベントエリアを忘れるとは。何たる不覚だ!この、イベントが無ければ、この物語の意味が無いと言っても、過言では無いくらいに、メインエリアなのに。
深く反省します。この僕の不甲斐なさに。
立ち止まり、目を瞑り嘆く‥‥‥。
「何しているのですか〜?このエリアが、最後のエリアなのですよ〜。早くなのですよ〜!カケルぅ〜!」
見ればもう、スピカたんは、お風呂に居る‥‥‥。
ん?
「あれ?おっかしぃーなー、ついに、俺の目、イカれちまったぜ!前々から思っていた、この腐った目ん玉がよぉー!」
そこには、なんとも言えない位に大きい大浴場があるのである。
僕は本能的に走り出していた。もう、こうなった僕を止めることなど不可能に近い。
僕はそのまま、走り走り走り、続けて、スピカたんを通り過ぎて‥‥‥。
‥‥‥‥‥ドボーん。
そう、本能の赴くままに。
温泉を見たら飛び込みたくなる、と言う本能は、日本人特有の、本能なのである。
「だ、大丈夫なのですか〜?」
僕はずぶ濡れになった、ジャージを雑巾を絞るかのように、絞る。
「大丈夫だ。それより‥‥。なんで、リンちょくんがここにいるんだよ!おまえ、一番風呂とか、卑怯すぎんだろが!てか、小人も風呂はいんのかよ!」
「当たり前だチョ!風呂を入るのに、理由などいるのかだチョ!男に理由など必要無いのだチョ!分かったら、オマエも黙って、風呂に入るのだチョ!」
「そうだな。俺、おまえの事、少し見直したよ。」
脱ぎ脱ぎ、 ‥‥‥‥‥‥‥‥ザブーん。
「ぷは〜、いい湯だなぁ。」
そう言えば、スピカたんは何処へ?
そう言えば、僕、裸体なんですけど。
‥‥‥‥‥‥‥ふと、振り抜く。
スピカたんは、不満そうな顔だ。
「私も、入りたいのですよ〜!」
すると、後ろから二つの影が近づいてくるのである。そう、スリルクさんと、スピルクさんの影である。スリルクさんが一言。
「入ればいいじゃ無いか!僕たちは、家族では無いか!」
「そうよ。入ればいいのよ。」
いやいやそんな問題じゃ無いでしょがー!だいたい、スリルクさん、スリルクさん、スピカたんは、家族でも、僕とリンちょくんは、仮の家族だしな。しかも、十六歳の娘を、こうも堂々と入らさせようとする親なんて見たこと無いですわ。そして‥‥‥
「そうなのですよね〜。家族なのですからね〜!」
‥‥‥普通に、入ってくるスピカたんもおかしいでは無いのかな?そして、何故かわからんが、変態夫婦も、後ろから、やってくるのである。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ザブーん。
五人の変な奴が、朝風呂で一緒に入ってる。この状況が理解できない。
‥‥‥‥‥‥‥‥僕であった。
上を向き、考える。楽しげな変な奴四人が横に居る。前に居る。‥‥‥悲しいけと、冒険はここで終わりだ‥‥‥‥。
ふと、スピカたんを見る。目が合った。
‥‥‥‥そして、目をそらすのであった。