プロローグ&小人との出会い
プロローグ
僕は道長 カケル 正真正銘の日本男児だ。
みんなからは多分ミチカケと呼ばれていたはずだ。
だが何故か分からないが、今異世界にいる。何故だろうとそう問われれば、答えにくいのだが、僕は突然転移してしまったのだ。それも、一日に数えるほどしかない、僕の大切過ぎるほど大切なトイレタイムにだ。しかも、学校のトイレの中でだ。
いま、僕が突然いなくなった学校は、どんな状況にあるのか少し楽しみでもある。
でも、まぁ多分気付かれていないと思うがな。なにせ、僕は不登校なのだから。久しぶりに学校に行ったので、気付くはずがない。
ヒキニートな僕に、今課されていることは、この異世界で、只々暮らすだけのつまらない人生だ。
明日はそうであって欲しくないとそう思って今日も今日とて寝床につくのである。
第一話 小人との出会い
さてさて、今僕は異世界にいるのだが、その異世界というものの説明をしよう。
異世界というものは、自分のいる世界とは異なった空間のことだ。
今、私たちが住んでいるこの地球も、他の世界からして見れば、異世界なのである。
まぁ、そういうことは、当たり前のことであるので、今、僕がいるこの異世界について説明しようと思うのだが、何故だろうとても説明がしづらい。
それはというのも住んでいる生物は、地球とははた離れた、超次元的で、また、獣耳娘やエルフ、そして小悪魔など、多種多様に存在しているのだが、どうも、この異世界の土地は、地球に似ているのである。
とは言っても全てが似ているわけではない。どことなくそう感じさせる、雰囲気があるのである。
そう、それは故郷を思い出されるふるさとのような、田舎なのである。
そして、そういう地球のふるさとの様な、田舎的な土地は、他にも4つあるようで、その一つに、僕は転移したのである。
その一つというのが、スタンディングワールドである。
何故か分からんが、田舎のクセに、と言いたくなる命名だ。
それはそうと、他の4つにもそれぞれの命名があるようで、順番に、クラウチングワールド、ライトニングワールド、シェアリングワールド、エンドワールドである。
命名が幼稚だなーおい、と言いたいところだがそれはさておき、僕の転移したスタンディングワールドはと言うと、とても平凡である。
争いがなければ、抗争もないし、紛争もないとてもとても平和な田舎である。
そして、僕が降り立った場所は、ある林の中である。
それはそれはとても見晴らしの良い林の中である。
散々と群がる、木々の中を差し込む木漏れ日は、体の芯まで温められるかのようである。そして、僕はあるエルフの住んでいる、一軒家までなんとか辿り着くのだが、そこまでの成り行きを、いまから語ろうと思う。
それはそれは、昔のこと〜であったー、僕は何故か分からないが、ある林の中で、寝転がっていたのである。
目を覚ませば、そこは地球とそれほど変わらない、風景であるのだが、ふと横を見れば、あら不思議そこには、地球に存在するはずの無い、生物がいるのである。
それは、みんなが子供の頃に一度は想像した事があるだろう、それはそれは小さな小人がいるのである。
僕は、そいつ「小人」を10秒程眺めた後、もう一度、地球に似た、青い空を眺めた。
そして、もう一度横を見るのである。そこには、あら不思議小さな小人がいるではありませんか。そして、また地球に似た青い空を眺めるのである。
「あれ、おっかしぃーなー、確かに僕は、この世に存在してはいけない、けだましいものを見たときの対処法を使ったはずなんだがなー。」
そして、また横にいるこの世に存在してはいけないけだましいものを、見るのである。
「どひゃ〜、テメェー誰だよ、つーかなんで俺の横いるんだよ、てかここどこだよ、いったい今俺はここで何してんだよ」
そんな、声を聞いた小人のリーダー的な存在な奴とその仲間的な小人たちの大群は皆一斉に、その不可解な男、道長 カケル から遠退けるのである。
そして、小人のリーダー的な存在な奴は第一声にこう言い放つのである、
「ててめぇーこそここで何してやがるんだチョ」
え‥‥‥。この子頭がおかしいのかな、それとも言葉の語尾に「チョ」とつけるのは当たり前のことなのかな。それとも聞き間違えかもしれんな、僕は悩みに悩んだ末に、その頭の少しおかしそうな小人に一言、
「君ーお名前はなんていうのかな」
「わ、わ、わいか、わいはなー、体は子供、頭脳も子供、名小人、リンちょくんだチョ」
「おオマエ、頭大丈夫かい。だいたい小人に大人とか子供とかってあるの初めて知ったんですけどー」
「おオマエ、舐めてるんだチョか、だったら許さないチョ!」
「いやーその口調で言われても説得力ないわー、本当ないわー。」
と言ったと同時に何か小さなものが、空から降ってきたのである。
よーく見るとそれは、小さな小さな小人であった。
うわ、小さ、僕の身長の五分の一サイズだなーこりゃ。
うむ詳しく言うならば34センチメートルくらいかな。いやでもちょっと待てよ、いくら小さいからとはいえ、こんな大群に僕はどう対抗すれば良いのだ、しかも今の状態は寝転がっているという、なんとも無防備な姿であるからなおさらだ、やっべどうしよ、そして、そこから僕の頭の中はどんどんフリーズしていくのである。
気が付き、まぶたを開けばそこは地球に似た青い空でって違うは、僕は確か、小人に会って少しからかったら、怒ってとびかかってきて、そしてそこからの記憶が、全くない。
そう、僕は物の見事に小人に負けたのである。
そして、横を見ればそこにはまた、小人のリンちょくんがいるのである。
数秒間の沈黙の末、僕はむくっと起き上がり、僕の隣にいる小人に話しかけるのである。
「ここはどこですか?」
「あなたは誰ですか?」
「あなたは、ここで何をしているのですか?」
そして、小人のリンちょくんは言うのである。
「ここは、スタンディングワールドだチョ、エルフと小人が共生している町で、別名、パシフィックタウンだチョ。そして、僕は、先程申したように、小人のリンちょくんだチョ。僕は、ここで突然出現した謎の生物、つまり、あなたの検査を、しているんだチョ。」
「ふーん、つまりここは、異世界だということだな?」
「うーん、多分あなたからして見ればそうだチョ。」
‥‥‥‥‥‥‥。
「ええええぇぇぇーーーー!!」
不意に甲高い声が、林の中に鳴り響くのである。小人たちは、その声の甲高さにびっくり仰天、すかさず一斉に隠れるのである。
僕は、今自分の身に何が起きたのかを、今はっきりと身に染みてわかったのである。
「俺‥‥‥。異世界に来ちまったらしいな。」
そういえば、思い出したよ、ヒキニートだった僕は確か‥‥。
気晴らしに、学校にでも行ってみるかなと思い、行って、昼食を食べ終わった後にトイレに行くと‥‥。
すると、突然僕の身体が光だして‥‥。
パッと一瞬にしてどこかに行ってしまったという世にも不思議な現象を、いま思い出したよ。
でも、まぁ異世界暮らしも良いかな、僕が地球でやり残してきたことなんてものは、ゲームと食事くらいだからな。
と、そう一思いにふけっていると、横から、イライラする口調の奴が話しかけてきたのである。
「これから、どうするんだチョか?」
「そんなもん、決まってんだろが‥‥‥。あれ?どうしようかなー?異世界暮らしは楽しみたいのだが、そもそもどこで、俺は暮らしていくのだ?うーん‥‥。」
今僕は、はっきりと分かった異世界って、アニメやゲームで考えらているものよりも、案外厳しいじゃねぇーか!
それはそうと、困ったものだ。
暮らす場所がなければ、僕はこの世界でまず生きていくことは、不可能である。
なぜなら、僕はヒキニートであるからだ。
ヒキニートというのは、外出するのを、嫌う生き物で、こんなサバイバル空間に置かれれば、只々、体育座りで助けを待つことしかできないからだ。
そんなつまらないことを、考えているとまたもあのイライラする口調の奴が話しかけてきたのである。
「あなたはどこから来たのだチョか?」
僕は、不覚にもシカトしてしまった。
いや、だってさすがに、この口調で話しかけられたら、イラっときますよ。
あと付け足すならば、この小人の顔がとても、キューティーなのである。
目はまん丸で顔もまん丸、そしてまつ毛が長くって、そんなくだらないことはどうでもいいのだ。今はとにかくこれからのことを、考えなくてはならない。うーん…。
「オイ!無視してるんじゃないだチョ!」
そして、僕は長い長い、塾考の末でた答えがこれだ。
「エルフのお家に泊めてもーらおっと♪オイそこの、リンなんとかって小人!エルフの家に案内しろ!」
「もっと言葉遣いに気をつけるんだチョ!誰かにものを頼む時は、もっと礼儀正しくだチョ!」
うぜぇー、こいつ本当イラっとくるな!
「じゃあまず、あなたのその口調から矯正しなくちゃだね♪」
そう言って僕は、イライラする口調の小人の、口調矯正に取り掛かるのである。
「はーい、まず目を閉じてそして、歯を食いしばってー、そしたらそのまま、五秒静止していてねー♪」
そして。
五秒後‥‥‥。
「〇〇パーンチ」
どこかの、子供向けアニメで聞いた事があるフレーズ口走りながら‥‥‥。
「イッテェー!ななにしやがるんだチョ!この僕がマナーというものを親切に教えてやったというのにー!」
リンちょくんはひどく憤慨しているようで、僕の背中を叩いていたのだが、それはそれは、とても気持ちが良いもので、ずっとしていて欲しいものだ。そう思っていると、ふと叩くのをやめたリンちょくんは、一言。
「て、テメェーには教えてやらないんだチョ!こんな事をしたからには、ちゃんと反省してもらわなくだチョ!土下座しやがれだチョ!」
おっとこれは、危ない展開だな。ここで、土下座しなければ教えて貰えないのは苦なのだがよりにもよってなぜこんな、イライラする小人に土下座せねばならんのだ。
少し考えた末、僕は決心したのだ。
そう、土下座するのだ‥‥‥。
くっ、なんたる屈辱。
そして、嘘泣きしながら。
「すいませんしたー、俺が全て悪かったです。なんせ、何も知らない未熟もので、本当にすいませんしたー!」
頭を地面に叩きつけ、両手を地面に叩きつけ、そして十秒間の静止。
うぅー、なんたる屈辱だ。こんなイライラする小人に土下座なんて、僕のプライドがズタボロだ。
横目でチラリとそのイライラする小人を、ふと見ると、そいつもまた、静止しているのである。
オイオイ、待て待てなんで、人に土下座させた奴が一番変な顔で静止しているんだよ!
とすると‥‥‥。
「お、オマエやりやがったチョな!土下座なんていう屈辱行為をやりやがったたチョな!」
「何言ってんだオマエ!オマエが俺にさせたんだろうが!バカなんじゃないの?」
そして、僕は長い長い土下座という屈辱から解放され、起き上がり、イライラする小人を、上から目線で見下してやるのである。あっ、ちなみに僕の身長は170センチメートルだよ。なんとも普通サイズなのですよ。
それはそうと、この目の前にいるイライラする小人はなにを、言っているのやら?
全くもってわからん。そんな時、不意に。
「お、オマエバカなのかだチョ!プライドというのが、ないのかだチョ?」
こいつ、本当殴りテェー!
そんな感情を押し殺して、なんとか冷静さを、取り戻すのである。
「俺はしっかりきっちりと、土下座したのだから、要求は飲んでもらおうではないか!さぁ、さぁさぁ、早く俺をエルフのお家へ案内するのだ!」
僕の表情はまるで、死に飢えたライオンのような、形相でそれはそれは、とても気持ちの悪いものだったらしい。そもそも僕の顔は、普通と言って良いほど普通の顔であるからして、こんな飢えたライオンのような顔になった僕はとてもけだましかったらしい。リンちょくんは足早にこの場から立ち去るのである。
「オイ待てよ!」
‥‥‥‥‥‥‥。
僕の声はむなしく、儚く林の中に鳴り響くだけであった。
そして、僕は歩くのである。只々真っ直ぐ、自分が思うがままに‥‥‥。
ふと考えて見れば、僕はここに来てどのくらいの時間が経ったのかな。
「キュルルル〜」
僕の腹の虫が突然鳴った。そういえば、なにも食ってないな僕。
そんな事を思いながら歩いていると、一匹の小人が僕の目の前に立ち塞がるのである。
「案内してやるんだチョ!ついてくるんだチョ!」
それは、あのリンちょくんだった。
あれ案外こいつ優しいではないか。顔と口調以外なら認めてやっても良いな。
「おう、頼んだ!」
そんな事を言って僕も、リンちょくんも別段気にすることもなく、林の中を進んで行くのである。
そういえば、こいつらってなに食って生きてるんだろう?ふと、疑問に思ったので聞いてみた?
「オマエら小人っていうのはこ、ここでなに食って生きてんだ?あと、今思ったんだがオマエ、男なのそれとも女なの?」
「わいは、正真正銘の男の子だチョ!そして、わいらはなー‥‥‥。」
「なんだよ!物凄く含みのある言い方じゃねぇーか?」
「えっとー‥‥‥。林の中にある木の実を、食っているんだチョ!」
え?ここまで期待させておいて木の実‥‥‥。
僕はてっきり、なにも食っていないとかゾンビ的な事を言い出すのかと少し期待していたのに‥‥‥。少し、しょんぼりしました。
「へぇー、じゃあ木の実とかって、具体的にどんなものなんだ?」
「えっとだチョねー、それは今からお見せするだチョ!」
そう言うと、リンちょくんはいきなり猛スピードで走りだしていったのだった。
それから数分後、リンちょくんはなにやら手の中に持って戻って来たのである。
「これが、わいらが食べる木の実だチョ!」
それはそれはとても小さな木の実で、様々な色や模様があり、どの木の実にも共通して言えるのが、丸いところだけである。
「これ、美味しいのか?」
まぁ見た目は悪くないのだが、異世界の木の実という事で、聞いてみただけだ。特に意味はない。
「当たり前だチョ!この木の実はわいらが食べられる唯一の食べ物だチョ!栄養に見た目、味の全てが完璧なイスペシャリーフードだチョ!オマエも食べると良いだチョ!」
なんだよこいつ、食べ物ことになったら急に生き生きと喋り出しやがって。まぁそれもそれぞれの個性だなぁ‥‥‥。
それはそうと地味にこいつ、この木の実を食べさせようとしてやがる!まぁ良いか‥‥‥。
てことで。
「あぁ、わーかったよ食べるよ、食べるよ、だからそんな生き生きとした顔を俺の足に近付けてくるんじゃねぇーよ!」
そして、その世にも不思議な異世界木の実を僕は躊躇なく口に運ぶのである。
パクり‥‥‥。
うむ、うむ、うむむむ〜〜‥‥‥。
「うへコレャ食べられたものじゃねぇーよ!」
そう、その木の実の味ときたら最悪で、地球の食べ物で言うと、腐った卵のような匂いがして、また歯応えときたら腐ったリンゴのような柔らかさで、なんといったら良いのだろうか。とにかくまずいのである。
そんな僕を、見ていた小人たちは、皆恨めしそうにそんな僕を見つめているのである。
え?そんなにこの木の実を食べたいのかな。
それとも、毒木の実食ってざまーみろとか、思ってんのかな?
まぁどちらにせよ、まずかった!
そんな事を思って、僕はリンちょくんを見るのである。
リンちょくんはこいつ馬鹿か、とか今にも言いだしそうな顔で僕を、見つめているのである。しかも、真顔で‥‥‥。
「今、なんて言ったんだチョ!」
「えー、だからー、クソくらいにマズイって言ったんだよー。聞こえなかったのかなー。」
「て、テメェー!こんな美味しい木の実をマズイとはどういう事だチョ‥‥‥。まぁ、良いかー。オマエそういえば異世界人だったんだチョねー。いや〜すまなかったチョ、すまなかったチョ!」
「いや〜、それほどでもー‥‥‥。あるかな!」
ふっと僕が言いだした言葉に小人たちは皆一斉に笑い出すのであった。
僕はこの時この瞬間に、初めて小人達と打ち解けあったと感じたのである。