第四話
お待たせしました。最新話です。
「服はこれではいいかの?」
私の前に立つ金髪の綺麗なお姉さんがそう言った。その手には、青を基調としたシンプルな服がある。
「あ、はい。大丈夫です・・・」
お姉さんの言葉に頷きつつ、服と一緒に差し出された下着を身につける。
秋菜が私の着替えを興奮した様子で見ているが、無視しておく。
「その服はかなり昔にもらったものじゃから、もう着られるような状態ではないかもしれんと思っておったが、大丈夫のようじゃな。よかったよかった」
私の着ている服を見て感心したように頷いている女性ですが、私はそれに反応することは出来ませんでした。それだけ私は混乱していたのです。
「あの、貴女は本当にアスディークさんなんですか・・・?」
アスディークさんは体の大きな金色の龍だったはずだ。
それが、今は人間の姿をしている。
「そうじゃよ?お主らも変化するのを見ていたではなか」
確かに、私達はアスディークさんが龍の姿から人の姿になるのを見ていた。
しかし、龍が人の姿になれるなどアスディークさんが私に植え付けたこの世界の知識には存在しない。
だから驚いているのだが、アスディークさんが目の前で人の姿になるのを見ているのも事実なので、ここは無理矢理にでも納得しておこう。
「さて、服も着たし場所を変えるかの。いつまでもこんな森の中にいるのもなんじゃし」
上を見上げると、既に日が傾き始めていた。あと数時間もすれば真っ暗になるだろう。
ここは素直にアスディークさんに従っておく。
頷いた私をみて満足そうに頷いたアスディークさんが腕を広げると、それと同時にアスディークさんが光に包まれていき、一瞬にして先程の龍の姿になった。
「では、行くかの。ワシの背中に乗りなさい」
背中に乗る、ですか。つまりは飛ぶんですね。ついさっきパラシュート無しのスカイダイビングをした人間にそれは酷だと思うのですが。秋菜なんて顔を真っ青にしてますし。
「ね、ねぇ、アスディークさん?もしかして、飛ぶの?」
若干上擦った声でアスディークさんに問いかける秋菜。完全にトラウマになってますね。可哀想に。
アスディークさんも秋菜の様子に気付いたらしい。
「あー、できるだけ低く飛ぶから、少しだけ我慢してくれんかの」
「・・・本当に?」
「約束しよう」
「秋菜、私達はこの世界にまだ慣れていません。ここはアスディークさんに着いていっていろいろ教わったほうがいいと思います」
「うぐっ。し、仕方ないなぁ・・・」
アスディークさんと私に説得された秋菜はまだ若干青ざめた表情をしながらも肯定の言葉と共に立ち上がる。
足がかなり震えているが大丈夫だろうか。
ゆっくりとした足取りで歩き、私達が乗りやすいように伏せているアスディークさんの元へ向かっていく秋菜。私もそれに続いていく。
「乗ったかの?では、しっかり捕まっておれ」
私達が背中に乗ったことを確認したアスディークさんがそういいながら翼を羽ばたかせ、ゆっくりと上昇していく。
飛ぶのはこれで二回目だが、自由落下と何かに乗って飛ぶのとでは安心感がこんなに違うのか。
「ひょえぇぇぇ・・・」
秋菜は変な声をあげながらアスディークさんの背中に必死にしがみつきながらも徐々に離れていく地面を見ている。怖いなら見なければいいと思うのだが、どうしても見てしまうらしい。
「目的地はワシの寝床じゃ。このまま進めば小一時間で着く。それまで我慢してくれ」
アスディークさんのその言葉に秋菜の顔色が更に青くなったような気がしたが、それは気のせいではないだろう。
次回から修行編入ります。