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06・居酒屋談義

 とある金曜日、会社の近くにある小さな居酒屋で、上司である部長の『佐藤清(さとうきよし)』と、部下で主任の『鈴木和彦(すずきかずひこ)』で酒を酌み交わした。そこで話題になったのは『ガイノイド』のことだった。話題の口火を切ったのは、部下の鈴木だった。

「聞きましたか、営業一課の伊藤課長の件?」

 興味本位な鈴木はニヤニヤしながら、僕と部長の顔を見た。

「役員会ではかなり揉めたらしいぞ、その件は」

 杯の酒を飲み干しながら、佐藤部長が静かに言った。

「役員会でも承認されてなかったって話らしいですね、ガイノイドの運用は」と鈴木。

「私もビックリしたよ、まさかこんな身近にロボットが居たなんてな」と佐藤部長。

「試験運用中だったらしいですね?」と鈴木。

「いや、その辺りの詳しい話も明らかにされていないんだ」と佐藤部長。

「確か、伊藤課長は井上課長と同期でしたよね?」

 鈴木が鋭く僕に突っ込んできた。

「僕もビックリしたんだよ」

 僕は相槌を打つ。

「ガイノイドのこともそうだけど、伊藤の行動がね」

「伊藤君か。彼は君らの仲間でも出世頭だったからな」

 佐藤部長は鈴木が酒を注いだ盃を飲み干した。

「彼は元々、女にルーズな方でしたけど」

 僕もグラスを空けた。

「ガイノイドの方から迫ってきたって言う、もっぱらの噂ですよ」

 鈴木もビールをグビッと飲んだ。

「役員会に提案されていた計画では、男性社員を鼓舞するプログラミングも含まれていたと聞いている」

 佐藤部長は僕のグラスに烏龍茶を注ぐ。

「へぇ、色仕掛けで仕事をさせるって訳ですか?」

 僕は鈴木のグラスにビールを注ぐ。

「一課に居る僕の同期が、伊藤課長が山口裕子に迫られたって自慢していたそうですよ」

 鈴木は佐藤部長の杯に酒を注いだ。

「ロボットに煽てられる時代か」

 佐藤部長はしみじみと杯を空けた。

「そういえば、うちの課の佐々木彩ちゃんも、ちょーっと怪しくないですか?」

 鈴木は注いだビールで喉を潤してから言葉を続けた。

「いつも『仕事をする貴方は素敵ね』とか『いつでも貴方のお手伝いするわ』とか、仕事絡みの色気を振り撒いているような、そんな感じですよね」

「佐々木さんがガイノイドだっていうのか?」

 思い当たる節がありながらも、僕は鈴木の言葉に疑問を呈した。

「試験運用だとしても複数台のロボットを投入するとは思えんな。運用費用がバカにならんと思うが」

 冷静な判断をする佐藤部長は、手酌で杯を重ねていた。

「山本君はどうかな?」

 僕は素直な疑問を口にしてみた。

「いやぁ、美咲先輩は大丈夫ですって。人間ッスよ、間違いないですってば」

 鈴木は既に大ジョッキでグビグビと呑んでいた。

「しかしな、井上君。あの娘もその娘もガイノイドかもしれないなどと疑い始めたら、全くキリがないぞ」

 佐藤部長は既にコップ酒をカーッと煽っていた。

「その通りですねぇ」

 僕は烏龍茶を飲みながらフライドポテトをケチャップに付けてから頬張った。そして、しみじみと呟いた。

「ロボット云々の以前に、僕は女の人のことがホントに不可解だ……」

お読みいただき、ありがとうございます。

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