あの日もらったモノ
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「あぁ、もう少ししたら帰るから……うん、また電話する」
今日も男は、家庭で自分の帰りを待つ妻への連絡を欠かさずに行う。
それは、二人が決めた数少ない夫婦のルールだった。
結婚してはや十年、関係性は今も円満だ。
六歳の娘と九歳の息子を連れて、週末には外出をする。
仕事場を出て、少し駆け足で帰る。
十数年前、自分にはできなかった行為だと思うと、いつも彼女のことを男は思い出している。
結局、彼女のモノなのか、そうでないのか、医者は教えないし。
偶然彼女がいなくなったタイミングで自分に適合するドナーが見つかっただけなのかもしれない。
ただし、彼女が信じてやまなかった、「健康で生きてほしい」その強い想いこそが。
今この瞬間も力強く鼓動する心臓を連れてきたのだと信じている。
帰宅すると、玄関には彼の子供たちが嬉しそうに立っていた。
「おいおい、どうしたんだ」
彼らは笑ったまま動かない。
不審に思いつつ男がリビングに通じる扉をあけると。
「お誕生日おめでとう!!!」
明るく精一杯微笑む妻の姿があった。
「今日を迎えられたことに、感謝だな」
「そうね、あの子のおかげだもんね」
「おかあさんーあの子ってだれ?」
「んー?あの子ね……」
妻は男の手を引いて椅子に座らせ、子供たちも食卓につかせると、ふとこんな提案をした。
「かつてお父さんのお兄さんが救った命で、お父さんとお母さんを救ってくれた人よ。あ、今度皆でお墓参りに行きましょうか」
「それはいいな」
「たしか、海が良く見える綺麗なところにお墓があるって聞いたわ、行ったことある?」
「何度か」
じゃあ、今週末にぜひ。そう言って微笑んだ妻の手料理はいつにもまして温かく感じた。
【FIN】
今日は2月22日ですね。
そしてただいまあとがきを書いているのは深夜2時22分です。
ここまで起きている自分に、むあもびっくりです。
不吉といいましょうか、不気味といいましょうか、不思議な丑の刻ですね。
思いつき、というわけではないのですが、考えていた構想で短編をまず書いてみようと書き始めた作品なわけでした。本当は時空モノガタリさんへの【奇跡】のテーマでの投稿を目指しましたが、字数がなんせ多すぎましたのでここに連載してみようと思い、こういうかたちにさせていただきました。
推敲はおおいに必要だと思いますが、ひとまず一日で連載を一回完結済みにしてみる、という自分の中でも目標を勝手にクリアしたというわけです。
眠いので、ここらで。
またお会いしましょう。
2014.2.22 2:22
霧明(MUA)