ある夏の日
皆様初めまして。
SAIと書いてサイと申します。
初めての投稿作品で読み難いかもしれませんが、日々精進していきたいと思いますので、あたたかい目でどうぞよろしくお願いします。
タグにあるR15については、思いついたまま直に打ち込んでいるため物語が進行の中で年齢制限に引っ掛かっても大丈夫なように念の為付けております。
多少シリアスな部分もありますが、ほのぼのと少しでもくすっと笑っていただけるように頑張ります。
※2014/05/08に章を統合、修正致しました。
公園の中にある小さな墓地の表側には、急斜面にも負けずどんぐり等の木々生えていた。木々は太陽光を少しでも浴びようと枝先を伸ばして葉の緑を濃く大きくしているため、墓地の付近は薄らと影がかかり、真夏でも涼しかった。
少しふくよかな方だったハルは、少し目のつりあがった素朴な少女である。肩上ほどある髪を結おうが、スカートを履こうが、よく見知らぬ人から少年に間違われていた。
今日は、カーキ色の短パンに白いTシャツ、髪はひとつにまとめてポニーテールにして青い帽子を被った。
夏休み真っ只中のため、喧しいくらいセミの鳴き声が日本中で耳にするのだろう。外国にもセミっていただろうか?視界の端に見えるキノコもあれは毒キノコなのかどうなのか気になる。
そんな事を考えながらハルは公園裏にある墓地の近くにある石畳を踏みつつ考えた。家にパソコン何ていう便利な物が無いため、図書館にでも行か無ければ答えは見つからないのだけれども、子供の好奇心はくすぐられてしまうのだ。
くすぐられる好奇心を少しでも抑えようと、周りに人がいないのをいい事に石畳を1枚とばしてほんの少し翔けた。
ギュギョ!?ジジジジジッ!!
「うわっとおー!?」
一体何事かと、なんとも形容し難い音が聞こえた。少し先の石畳と石畳の間に何か黒い小さな影が動いている。
好奇心四分の三、怖さ四分の一で、ハルは小さな影の正体を見に行くと、それはセミだった。
「右だけ羽が伸びきらなかったから落ちたのか。あ、右足いっぽんも爪が足りない・・・。」
このままじゃ、アリや鳥に見つかると思い、急いでセミを捕まえると、手頃な木の幹を探した。
このまま放っておいてもいいが、手の中でもがき出す命は仲間よりも早く生涯を終える可能性が高い 。苦しみが長く続く前にひと思いに殺して楽にしてやる事も出来るが、必死で生きたいと、全身で訴えているようだった。
だから、生き残る為に餌となる樹液を飲んでもらいたい一心でハルはそっとセミを木の幹に爪を引っ掛け易い位置に手を持っていった。
セミは恐る恐る木の幹に爪を引っ掛けようと足を伸ばした。左足がしっかりと幹の表面を掴み、弱々しい右足をゆっくり添えた。
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あの後ハルは公園を抜け出て新たな涼を求めて歩き出した。
そっと目を閉じ、静かに深呼吸をする。日射しがジリジリと淡い小麦色の腕を射した。
『ねえ、どうしてあの時楽にしてあげなかったの?』
ハルは不意に少女に問いかけられた。
その子はいつも、考え事をする時に時々頭の中で問いかけてくる。顔までは良く分からないが、白いふんわりとしたワンピースにチョコレート色のうさぎのぬいぐるみを抱えてくるのだ。
「あの時、あの子の目は死んでなかった。」
『生きる時間が伸びるほど、あの子は苦しみを味わうかもよ?』
「生きていれば、幸せを味わう事も出来るかも知れないじゃない。」
『・・・後で恨むかもよ?』
声を落とすその子に、ハルは頭の後ろに手を組んだ。
「いいよ。ギゼンっていうのは、結局ただの自己満足なんだから。恨まれても文句は言えないし、言ったらダメだと思う。それを受け入れることも必要なものでしょ。未熟なわたしが受け入れるものに限りはあるけどね。」
『バカでしょ。』
ため息を漏らし、その子は呆れたように言った。
「知ってる。でもさ、あの子はあの時、確かに必死に生きようとしていたんだから良いんじゃない?」
『本当に偽善ね。』
少女がどこかへ行くと、ハルは空を見上げた。
「あ。ひこうき雲みーっけた!」