第6話『再会』
京介は基地に出向きサイキ達との対決の事を告げると、サイコ・ブレインは不機嫌そうな声を出した。
「…悪かったよ、今回は自分の力で解決出来そうだって思ったんだよ」
『実際はかなり状況に助けられたようだが?』
その通りである。
サイキ達が本気で殺しに来ていたらおそらく勝てなかったであろう。
怪人を相手にしたせいか、少し能力者を甘く見ていたようではある。
「まあなー…でもなんか、どうも危機感がないんだよな、俺の中で。
ともあれ、少し戦闘規模が拡大しそうだから、今度はしっかり力を借りるよ」
『現金なものだ。しかし何だ、その吉岡という男の要請に応じるんだな』
「んーなんか…能力の新しい使い方が見えてきたからさ」
『試してみたくなったと』
大分マヒしてきたなとサイコは思った。
『君以外の連中も了承したのか』
「ああ、ああ見えて吉岡の人望は結構なものらしい」
京介と違い、残りの人間はみんな吉岡の仲間内という感じだ。
今回のような騙され方をしても付いていくというのだから不思議なものである。
(今回の戦いでちょっと自信がついたのかもな)
あれだけ及び腰だった菱田の事を思い出すとそう思う。
翌日、まほも含めた能力者8人で集まる事となった。
場所は戦ったホテルの一室。
この部屋だけは整理されており、使用感がある。
聞けばサイキは普段ここで寝泊りしているらしい。
椅子も人数分用意してある。
「じゃあ改めて紹介しよう」
吉岡が向かって右側に座っているサイキ、遥、藍子の紹介を始めた。
「斎木空蔵、伊道遥は、超能力スクールで一緒だった…幼馴染でいいのかな?」
吉岡の言葉にサイキと遥は特に反応しない。
「斎木空蔵ってシブい名前だな」
「ヤなんだよダッセーし。呼ぶ時はサイキで頼むぜ」
言葉に出したら同じだろうにと思ったが、京介は言葉を飲み込んだ。
遥は興味がないのか、自分のネイルの状態を確認している。
「そして希望藍子さん。一人目の協力者ってところかな」
「OLをしております」
藍子は頭を下げる。
「私、霊とお話する特技を持ってまして…あら」
藍子はまほの姿を見て言葉をとめる。
「まあ…いいお友達をお持ちで」
とうつろな目で薄笑いを浮かべる。
「…何か、ついてるって事かしら」
まほは怖いので追及しない事にした。
「じゃあ相手の規模を教えてくれるか?」
「念動力者6、念話能力者が3、瞬間移動能力者10、それに同志が300。決行日までにもう少し増えるかもしれないが、スクールの生徒数からして能力者はこれ以上増えないと思う」
「同志?」
「思想にのってきた過激派だよ。一般人の白兵戦要員というところか。
テレポーター1人で兵隊を一度に5人は送り込めるからね」
敵の数が多すぎる。
「当然その同志?と真っ向からって事はないよね?」
と菱田。
正直能力者の数だけでアウトではあるが、こちらに大多数を相手に有効な能力がない以上、一般人でも数に押し負けてしまう。
武装しているなら尚更だろう。
「そうだね、なんとか決行前に不意打ちを試みるしかないかな」
「ちょっと気になったんだけど…」
まほが小さく手をあげる。
「一番難しそうな瞬間移動が、一番使える人多いんだね。なんか意外で」
「実際のところテレポートはある程度鍛えて使えるような念話や念力とは違って、絶対的な天性のものが必要とされるんだけど…」
吉岡はちらりと遥を見る。
「…スクールがなくなって久しいから、ちゃんと訓練して能力を保持していたヤツが少なかったんじゃないかな」
使わないとすぐに発現しなくなるものらしい。
「念動力はまだいいが、念話なんて普通に生きてると使いでがないからね…」
例えるなら持ち主の少ない携帯電話というところか。
テレポートは天性のものが要求されるだけあって、一度覚えてしまうと忘れ難い上、一般生活でも便利で使ってしまうことも多いそうだ。
「数だけなら念動力使えるやつはテレポーターの5倍はいたよな」
とサイキが吉岡に付け加える感じで入ってくる。
「薬で引き出されてたやつらは特にダメだろうな」
「君らは優等生だったわけだ?」
「まあな」
スクールの中でも天性の才能があるもの、才能があって訓練で開花するもの、薬で引き出して無理やり使えるようになるもの、何をやってもダメなものと、色々いるらしい。
サイキ達は天性の才能がある者を集めたAクラスで知り合った。
「奴らは僕達3人を賛同者として見ているから、もう少し情報を探る。おそらく一週間以内には何らかの行動が決行されるだろう」
吉岡は手の指を組む。
「一週間か…鍛えるにも時間はなさそうだな」
京介は辺りを見回しながら呟く。
この場合の鍛えるは、京介自身ではなく戦闘経験の少ないメンバーに対しての事である。
「まあボクたち3人の能力に対しての弱点くらいは教える時間はあるだろう。そこから対策を練るしかない」
「勉強会ね」
「僕は参加できないけれどね」
そういって吉岡は敵の内情を探るためにその場を出て行った。藍子もそれに続き、残りのメンバーによる対策会議に入った。
対策会議を終えて、それぞれ帰路につく。
京介はまほをバイクで送っていく事にした。
「なんだか大事になってきたね…任意、大丈夫なの?」
「ま、超能力者とバトルの時点で結構大事ではあるわな」
京介は能天気に言う。
「なんだか…余裕ある感じ?」
まほの言葉に京介は少し考える動作をする。
「まー、ほら。敵の数は多いけど能力は全部割れてるし…気をつけるポイントはハッキリしてるから気は楽なのかなあ」
昨日の戦闘でアレで全てではないだろうが、能力については大体の事はつかめていた。
「…私も役に立てればいいんだけど」
「またそれかよ。気に病む必要なんてないぜ、大体戦闘に役に立つ能力の方がタチが悪いんだ」
「…うん」
まほはまだ何か言いたい気がしたがまとまらないので、やめた。
京介と別れた後自室に入ったまほは、ふと目に入った壁にかけてあるカレンダーに目が留まる。
(…ああ、あと3日で誕生日なんだ、私)
18歳になる。魔法で変身できる年齢と並んでしまう。
(…どうでもいいか)
そう思い、ベッドに重力に任せて倒れる。
「外出着のまま寝ちゃダメですミャよ、まほ!」
誰もいないはずの部屋に声が響いた。
まほは反射的に体を起こした。
記憶にある声。
まほの目の前の空間にピンク色の光がはじけると、まほの目の前の空間に、コアラに似たヌイグルミのようものが現れた。
「お久しぶりミャ!」
「ミャチャ!?」
まほはそのヌイグルミの名を呼んだ。
忘れるにも一度見れば忘れない珍妙なフォルムと中年女性が喉を酷使して搾り出して何とかかわいくしようとした感じの声。
そう、魔法少女時代のマスコットであり、妖精界の住人である『ミャチャ』あった。
「ど…なんで?」
どうして? なんで?
8年前の女王選挙の敗訴以来、音沙汰がなかったのに。
そして思い出す、自分の誕生日の日付を。
「まさか…?」
「そうだミャ」
ミャチャはまほが自分の年齢との関係性に気付いたのを見越して首を縦に振った。
「魔法の力は設定年齢…18に追いつくと消滅してしまうミャ」
「それを知らせにきてくれたの?」
「いや…当時ドサクサで回収するのを忘れていた魔法の力を取りに来たミャよ。まほの誕生日で思い出してミャよ」
ミャチャはポリポリと頭を描きつつ言った。
「…あぁそぉう…そういうヤツだったわアンタって。思い出したわ」
8年ぶりの再認識であった。
「まあまあ…でも反対にあと3日はまだ魔法を使えるという事ミャね。
ミャチャだってそこまで人が悪くないミャ。言わば回収直前の警告だミャ。
名残惜しかろうからあと3日使いまくってもいいミャと言いに来てやったミャよ」
得意げにミャチャが言っている間にまほは魔法のアイテム(ピンク色の玩具っぽい丸いもの)を取り出すとキャチャに差し出した。
「いいわよ、持って帰れば? あんたが帰ってからこの8年ほとんど使ってなかったんだから」
「ええっ!? 使い方にもよるミャが、かなり好き勝手やれる夢の魔法アイテムミャよ!?」
信じられないという風だ。
「何が。アイドルになれれるだけの能力なんて役に立てようがなかったわよ」
「…なーにを言ってるミャか、それは…あっ!?」
ミャチャは何かに気がついて言葉をとめる。
「…何よ?」
「あーいやー…ま、まあいらないと言うなら回収して帰るミャね!」
と手(と思われる)を魔法のアイテムに伸ばすと、その手をまほが掴んだ。
「…な、なんですミャ?」
「あからさまに挙動不審になってんじゃないわよ…何を思い出したの? 何を隠してるの?」
少し低い、ドスの聞いた声で詰め寄る。
「あははは、な、何をおっしゃるミャか、ミャチャは何も隠し事なんて…ハハハ」
「ほう」
目を逸らしがちのミャチャにまほの怒気を孕んだ顔が近付く。
「……わー、わかりましたミャ…言うミャよ…」
根負けというか、無事に妖精界に帰れる気がしなくなったミャチャは折れた。
「ふー…まずミャね、このアイテムに対する誤解があるミャ。
ちゃんと説明をした気でいたミャが、してなかった事を思い出してしまったミャ…」
「…成長してアイドルになれるだけのモノじゃ、なかったの?」
「いや実は初期設定で…」
ミャチャの説明が始まった。




