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1。



思えば小さなことだったんだ。


死んだのは小さいうさぎ一匹。

それなのに、こんなにも、いつまでもそれに縛られているのは、自分も小さいから?

頭がおかしいから?

いや、言い訳?


自分は殺した命を言い訳にしてるの?


選択肢が見つからないから。








やっちまった。


そんな言葉が頭にぽっ、と浮かんだときにはもう遅い。

うんと言ってしまったからにはもう前言撤回はならない。

それにもう体は行き先に向かっている。ガタンゴトン、とな。

でも仕方ないだろう!時給二万円だぞ、なのに白い魔法の粉を運ぶ仕事じゃないんだぞ。

いやいや、そういう問題じゃない。何で“中学生”の俺が“アルバイト”をやんなきゃならんのだ。しかも父親の借金を返済する為の金を。自分で働けよ!普通に…

そこまで考えて俺は嘆息した。

普通が通じないから俺はこんな状況に陥ってるんじゃないか、怪しいことこの上ない仕事をやらされるという状況に。

はあ、大きな溜め息。いくらでも出るぞ、まだまだ!…まったく。

そんな俺の気持ちとは裏腹に、電車は目的地にまっしぐらだ。窓の外の景色はすっかり田舎であるが、到着にはまだ少しかかりそうだ。

…少し、過去の話でも自分にしてみよう。


俺の家は父子家庭。

母親は俺が小さい時に出ていった。

というのも仕方のない話。

父親は無職。しかも放浪癖があって金遣いが荒い。

借金は日々かさむばかり。

だから母親が出ていくのも無理ないだろう。むしろ懸命な判断だ。

だから別に恨んでいるというわけではないのだが…。

むしろ、なんで俺はここに残ったのだろう。

小さいながら「父ちゃんと離れるのはやー!」なんてただこねて無理やりにでも残ったのだろうか。まったくあほなガキだ。俺。


ところで、そう、話を戻そう。

俺の今の溜め息の原因、アルバイトの話を切り出されたのはつい昨日の事だ。

「朝輝、話がある。」なんて、無駄にごっつい父親は真面目な面持ちだと嫌に厳格があって、俺は背筋を伸ばして対面したわけだけど。

この父親に真面目で返す俺が馬鹿だったのだろうか。

そこまでは反論もした。この歳で警察のお世話になるのは御免だからな。いやこれからもだけど。

けれど、二万。

この数字を聞いた瞬間、あら不思議。いつの間にか首を縦に振ってしまっていたのだ。


ぐうう。

そんな音で俺の意識は現在へ。ただの腹の音なんだけども。

昨日から何も食べてないんだ、仕方ない。もうそのくらい生活が苦しいのだ。

大丈夫だ、父親の知り合いの知り合いから貰った話らしいし、安全だろう。…いや逆に父親の知り合いって、あああっもう、腹が減って頭がぐるぐるする!

とにかく今は食えればいい。一時間働けば何だって食えるんだ、二万円だぞ二万円。

『まもなく、ー……』

なんて考えてたら降車駅に到着。

居心地の良いクーラーのきいた電車から降りれば、どんな別世界だ。クソ暑い。

…それにしても、どんな田舎だここは。

古びた木製作りの小さい駅、まあ無人駅じゃないだけましなほうなのか。

それを抜けて…も何もない。人もいない。

あるのは360度山!と言ったところか。

「…はあ」

ほら出た、溜め息。

こうげきが溜め息だったらPPに困らなそうだ。雑魚キャラならどんとかかってこい!

ポケットから父親作の地図を出す。すでにグシャグシャだが。字も汚い、絵も汚いこいつを丁寧に扱う必要なんてあるものだろうか。

見れば、目的地は駅からはそう遠くないらしい。なかなかいい位置に建っている家だ。…まあ金持ちなんだろうがな。

重い足を動かしたとき、また溜め息がこみあげた。が、いつからそこにいたのか、じいさんのでっかいクシャミに吃驚して俺のそれは喉につまってゆっくりと落ちていったのだが。

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