【第一章】 衝突
「で? 結局いくらで買ってくれるわけ? 俺の記事」
黒髪にサングラス。
護身用の銃をくるくると弄びながら、電話越しに彼はにやついた。
「そちらさんの部下による麻薬密売情報♪ あんたらがまさかそんなもんに手を出してたなんてねー……」
組織の違法情報を売りつける。
それが彼、若手ジャーナリスト、アルマのやり方だ。
「言っとくが、ちゃーんと証拠も掴めてんだからな……なんなら号外にしてばら撒いてやろうか?」
時々はったりをかましたりもするが、今回は自信のある情報だ。
買い手も富豪。
大金をがっぽり手にしたいところである。
「はぁ!? そんなんで売れっかよ。……あぁん? んー……はぁ、まあ仕方ない」
銃を懐にしまいこみ、座っていた椅子から立ち上がると、再び不適に微笑んでアルマ言った。
「んじゃぁ、お約束した金額、きっちり例の講座に振り込んでてくれよ」
念押しの決まり文句。
多少値は落ちたが、良い具合に話がまとまった。
アルマは受話器を置くと、宿泊している宿のベランダに出た。
快晴! とまではいかないが今日も良く晴れている。
と、満足そうに笑みを浮かべるアルマの顔が急にかげった。
黒い影がベランダ……いや、部屋を目掛けてとんでくるではないか。
二、三回の瞬きの間にそれはアルマの目の前まで迫り、衝突した。
高さとスピードの割りには軽いものの、やはり眉を寄せずにはいられない衝撃ではあった。
見事に物体と供に部屋へすべりこむと、テーブルに激突。
派手な音まで響かせ、ついでに私物までぶちまけてしまった。