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フライ・フィッシャーズ  作者: カカオ
恋のぼり
57/69

げっ、警察!?

      *


 ――あのアフロ頭は浜辺で覗きをしてた変態アフロ双子……げっ、警察!? こんなときに……。

 春日井弥生こと田中にとって、警察は顔にできる吹き出物のように邪魔な存在である。これまでも幾度となく衝突、というか一方的に疑われてきた。

 例えば追跡対象宅を観察するべく脇道に潜んでいるところを『ちょっとよろしいですか?』と肩を叩かれ職質を受け、全く信用されずに近くの派出所に連行されたり。

 例えばペット探しをするために付近の住宅の庭を覗いていると『ちょっとよろしいですか?』と腕をつかまれた。言い訳をする間も与えられず警察署に連行されたり。

 そして今回は……。

「お巡りさん、あの人だよっ。昨日僕たちにエッチなことしたの!」

「痴女だよ痴女!」

「ちーじょ! ちーじょ!」

「ちーじょ! ちーじょ!」

 アフロ兄弟たちによる痴女コールが拡散する。それは瞬く間に付近を行き交う人々の注目を集める。訝しげに田中のほうを見る視線が集中する。

 ――なんだとー! 私がいつそんなことしたー! 冤罪だー! みなさーん冤罪ですよー!

 などと心の中で無罪を主張しているうちに、警察官はつかつかと近づいてくる。よく見ればなかなかいい男だった。年のころは三十過ぎぐらい、もしかすると田中と同じ年頃かもしれない。――ああ……出会った時と場所が違っていたらああああ。 

「ちょっとよろしいですか?」

 最悪の出会いだった。そしてよろしくない。

「はい、何でしょうか」

 冷静を装って応対する田中。

 と、そのとき国道を、凄まじいスピードで走るバイクの集団が通った。

「お巡りさんっ、見てあれっ、スピード違反よ! 危険運転よ!」

「え? どれですかぁ?」

 警察官はどうでもよさそうに見当違いの方向(海のほう)を緩慢な首振りで目視する。そんなところにバイクが走っているわけがなかった。

 ――絶対わざとだ……。ったく、こんなときに……ってアレ? 新くんは!? あー! 

 いつの間にか新はその場を離れ、浜辺を歩いていた。慌てて田中も後を追うが、警察官に腕を捕まれてしまう。「どうして逃げるんですか? ええ?」

 なんだか物凄い形相で睨んでくる警察官。彼の中で、田中への疑惑はより濃厚になっているようだ。逃走するなどやましいことがある証拠だ、と思っているに違いない。田中も自分の行動の軽率さに内心で舌打ちする。――あーもう。これだから警察は嫌いなのよ!

「新くーん! 今日子ちゃんのところに行きなさい! 海に、海に縛られないで!」

 田中は新に向かって叫ぶ。

 その声は、新に届いているのだろうか。

 残された時間は、あと二時間十五分。

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