あと十一時間
――四時かぁ。
ちなみに午前四時である。六月二十六日、日曜日。
新は一睡もせぬままベッドから這い出る。大きな亀の甲羅でも背負っているかのように体が重い。不健康を知らせる体の軋み音が聞こえるような気がする。幻聴であってくれと願う。
もう一度時計を見る。
机の上の目覚まし時計。小学校の時から、東京にいるときから、つまり両親が生きているときから使っているそれは、秒針をせっせと動かし、確実に時を前へ前へと進めている。
午前四時二分。
――うーわー。どうすんだよーぼくはー。
第三者になりたくて自分から距離を取ろうと試みるも、自分はやはりどこまで行っても自分らしい。新は自分で自分に投げかけた疑問に苦悶する。
眠ることを諦め、ジーンズとTシャツに着替え、窓をそうっと開けて外の景色を眺めてみる。
水平線の向こうに日が昇り始め、地球が『おはようっす』と言っているようだ。打ち寄せる波、空、砂浜、見える光景全てがオレンジ色に染まって、時計を見なければ夕方と錯覚してしまうかもしれない。
新はオレンジ色の世界に引かれるように、外に出て行く。
――あ、朝ごはんは……まあ、いいや。僕がいなくても困らないみたいだし。
今日子が指定した午後三時まで、あと十一時間。