おっほー! 青春じゃのう!
一旦家に戻って買った食料を冷蔵庫に放り込み、ふたたびコンビニに戻ると、古道具屋『近堂』のおばあさんとばったり出くわした。「おーおー、新ちゃーん」おばあさんは少し曲がった腰を急激にしゃんと伸ばし新を呼ぶ。
「こんちわ、近堂さん」
「こんちゃこんちゃ。今日子ちゃんならほれ、雑誌んとこで立ち読みしとるよ。もしやこれからデートかい?」
「ま、まあ、そんなとこです」
「おっほー! 青春じゃのう!」
「あははは……じゃ、じゃあまた」
若干無理やり感漂う別れ方で、新はその場からの離脱を図る。背後から「青春エキスちゅーちゅー」というおばあさんが発する謎の吸血音が聞こえてきたが、心の壁を分厚く張って聞かなかったことにする。
近堂おばあさんは紀伊介と幼馴染で、新とは彼がこの町に来たときからの顔なじみである。新がおばあさんを少し苦手としていることは言うまでもない。
近堂おばあさんの言っていたとおり、今日子は雑誌のところで立ち読みしながら待っていてくれた。自分と今日子の分のアイスを買って、国道の横断歩道を渡り、砂浜へ降りるための階段に腰を下ろす。
「……あのさ」
「……あのね」
二人の声が重なる。二人はくすくすと笑った。
「お先どーぞ」
新は言った。
「うん、じゃあお言葉に甘えて」今日子はコホンと芝居がかった咳をして間を持たせる。「ずっと、話したかったよ。話せて、嬉しい」
「……うん、僕もだよ」