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新がいなくなった
翌朝、六月二十六日、日曜日、午前五時。
田中は十ウン年ぶりに他人に起こされた。
「田中さんよ」
「うにゅぅぅぅん……その名は……捨てましたのよオホホホホぅぅぅ……くぅーくぅー」
眠っていてもキャラ作りに余念がない田中である。
「田中さんよ、起きなされ、緊急事態じゃ」
「うにゅぅぅぅん」
「依頼があるのじゃが」
「依頼」
田中は覚醒した。
目が覚めた田中は「依頼ってなんでしょギャー」と依頼を訊きつつ悲鳴をあげるというテクニカルな技を披露。朝目覚めて早々、サングラスで白髪ポニーテールなおっぱいジジイなど見ては、色々な危険を感じても致し方ないであろう。夜這いならぬ朝這いではないかとその斬新な襲撃に危機感を露にする。
しかし紀伊介の表情がいつになく真剣、のように思えて警戒レベルを一段階下げる。サングラスをかけているせいでいまいち真剣なのかどうか判断つけがたい。
「依頼って仰いましたか?」
「うむ、依頼じゃ」
「依頼内容は?」
「新がいなくなった」
「えっ……」