センプーキ?
「げっ、あたしが売ったロレックスが三千円で売られてる……」
古道具屋『近堂』に着くなり、何やら滝川が絶句している。達磨の隣に陳列されているそれは、滝川がついさっき売った時計で、値札には『3000円』と達筆な字で書かれている。
クノイチはそんな滝川は置いといて、店主のおばあさんに話しかける。おばあさんはノートパソコンのキーをカタカタと打っていた。
「ばあちゃんさー、エアコン欲しいんだけど置いてる?」
「あるぞい」
「いくら?」
「なななーんと驚きのお値段七千円じゃ」
――え、ちょっと待ってよ。高くね? 中古のゲームソフトぐらいだと思ってたんだけど。確かに驚きだぜ。
「……おれ、もっと安いのがいいんだけど」
「なななーんとこれが最安値じゃ」
――なんてこっちゃ。
「おいクノイチ、扇風機があんじゃん。これにしよーぜ」
滝川が指差す先には、船のスクリューを取り付けたような変な機械が置いてあった。埃を多分にかぶり、いったいいつからここに住まわれていたのかと問いただしたい。
「センプーキ?」
クノイチは首を傾げる。
「お前、扇風機も知らないの!?」
滝川は驚愕の表情を浮かべ、わなわなと震えている。あまりのジェネレーションギャップに頓死しそうな勢いである。
「知らない」
――何それ。