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フライ・フィッシャーズ  作者: カカオ
扇風機の中心でアアと叫ぶ
23/69

『大人になりたい』

 クノイチは例によってナンパを開始。撃破、されまくる。それでもクノイチはやめない。

 ――もしかしたらナンパに成功したって大人にはなれないかもしれない。ナンパしたことない大人だっているらしいし。でも、ナンパが大人になるための一つの方法だとしたら? ほかに色々な方法があって、ナンパがその方法の中の一つだとしたら? 今のおれにはナンパ以外にそれっぽい方法がわかんないんだ。だったら、同じ方法を試し続けるっきゃないよ。それに……。

「ヘイ、ネーチャン! おれの赤い彗星号に乗ってドライブしようぜいっ!」

 声をかけた女子は面倒臭そうに手を振ってクノイチから遠ざかっていく。けれどクノイチはそんなことをもう気にしない。 

 ――成功してもないのに、ナンパが大人になる方法じゃねえなんて、そんなのわかんないよ。

 今日も梅雨明けしたんじゃないかと思うほどによく晴れて、暑さは一ヶ月ぐらい先の未来を引っ張ってきたように夏のそれである。

 クノイチは浜辺に沿って敷かれた国道の歩道を赤い彗星号で流れながら、女の子を捜し、撃沈され、捜し、撃沈され、を繰り返す。

『大人になりたい』

 その思いが、撃沈されたクノイチを癒し、鼓舞し、また前へと進めさせる。

 そんなクノイチを遠くから双眼鏡で覗いていたのが、アフロ兄弟こと鉄平と銅平である。

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