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フライ・フィッシャーズ  作者: カカオ
扇風機の中心でアアと叫ぶ
21/69

鍋の中のお豆腐状態だぜっ

 しかしその日の夜、クノイチが手帳を開いてみてみると、クラスの女子も書かないような落書きを見つける。

『フクオカのバーカ! はーげ! うーんこ!』

 週間の予定を書くページにでっかく油性マジックで書かれている。

 ――フクオカって福岡県のことかな。クリスタル姉は福岡県が嫌いなのかもしれないな。よくわかんないけど。

 はー大人って大変なんだなぁ、とクノイチはなんとなく思う。

 部屋の時計を見ると、もう十一時を過ぎている。ゲームでもしようか、と思ったけど、今日はなんだか胸の辺りがもやもやして疲れたから寝ることにする。

「えーっと、リモコンリモコン」

 クノイチはエアコンのリモコンを捜索、ゲームソフトの箱に埋もれているところを救助、おやすみタイマーをセットする……が。

「おお?」

 クノイチが時間設定をしてタイマーのボタンを押した瞬間、エアコンは「ぷしゅー」とフルマラソンを終えたランナーのように空気を吐いて停止する。電源スイッチを押してもまるで反応しない。

「え? なになに? 活動限界? コンセントついてんのに?」クノイチは電源スイッチを某名人のように連打する。けれど反応はない。「ええぇーちょっと待てよーっ。このクソ暑いのにエアコンなし? そんなん鍋の中のお豆腐状態だぜっ」

 クノイチは机の椅子を引っ張ってエアコンの真下に置き、その上に立つ。エアコン本体の電源スイッチを思い出したのだ。爪先立ちでどうにか本体の電源スイッチに人差し指が届く。「よっしゃ! ってありゃ?」

 エアコンは蘇生せず沈黙したままである。そして無理な爪先立ちをしたせいでクノイチの足はつってしまう。「あぎゃぎゃぎゃっ」

 どうやらエアコンは完全に壊れてしまったらしい。

 椅子の上にうずくまり、足のつりが治るのを待ちながら、クノイチは今夜の寝床をどうするか考える。真っ先に滝川の部屋に転がり込もうかと思ったが、今が十一時過ぎだということを思い出してクノイチは諦める。滝川は十一時になるとパタリと寝てしまうのだ。なので遊びに行く時は必ずそれより前に行くようにしているのだ。

 ――マジかぁ……。春日井ちゃんのとこは……うーん……そこまで仲良いわけじゃないし……。新ニーチャンやジジイは男だしなぁ。

 女の部屋じゃなければ転がり込む意味がねえ、と実に子供らしくない判断をし、クノイチは自分の部屋でパンツ一丁になって眠ることにする。運悪く、その日は六月だというのに熱帯夜となり、クノイチは翌朝汗だくで目を覚ますこととなる。

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