はんぺん
古道具屋からの帰り道も、クノイチはプール開きに雨に降られた小学生みたいに元気がなかった。ついさっき成川とやりあった地点を過ぎ、とぼとぼと『民宿熊島』へと続く海岸沿いの国道の歩道を進む。
潮風がぶあっと吹き、前方十三メートルほど先にいる女子大生風の女子二人のスカートがめくれる。内部構造がしっかりと視認できるほどに。
しかし、まことに信じられないことに、クノイチは全く動じなかった。
――重症だ……。
滝川は事態の重さに改めて気付く。そこまで成川にコテンパンにやられてしまったのだろうか。
――仕方ないなー。今日は特別、ご褒美だゾ。
「クノイチ」
「ん」
「おっぱい揉ませてあげよっか」
「えっ! いいの!?」
――それでこそクノイチだぜ。
「おうおう。どーんとこいや」
滝川は胸を張る。通行人の痛い視線は心の壁でガードする。
「で、ではオトコバに甘えて」
知らない言葉を無理に使いたいお年頃だということで、今回はスルーしておく滝川。ちなみに言うまでも無いが『お言葉に甘えて』です。
クノイチの両手がすっと滝川の胸を鷲掴みにする。――む、躊躇が無いなコイツ。
そして天然バイブレーション的動作に移行、滝川の左右の乳がふにふにとされる。――うおー久々に乳揉まれたーよー。
「どーよ、あたしのパイオツは」
クノイチに訊くと、手をぱっと離し、悩みだしてしまう。そんなに難しいことを訊いただろうか。
「例えて言うなら」
「例えて言うなら?」
「はんぺん」
クノイチの頭部に手刀を叩き込んだのは言うまでもない。