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#7

歪飢男はにやにやと笑っていた。何と面白い状況だ、何と楽しい状況だ。彼は歌い出した。


*


♪僕が右向けと言えば

みんな右を向くんだね

僕が死ねと言えば

みんな迷わず死ぬのだね


嗚呼

すっちゃらっかすっちゃらっかすっちゃらっかほい


僕はみんなの意思になる

みんなは僕の意思になる

意識の集合神を生む

故に僕は神様だ


嗚呼

すっちゃらっかすっちゃらっかすっちゃらっかほい


悪魔も僕にこんにちは

地獄の門が開いたよ

王座に僕は座ります

冥界の、歪飢王!


*


げらげらと歪は笑いながら、自分は愛飢男のように歌の才能があると一人酔っていた。

さあてと、事は全て計画通りに進んでいる。今、丁度、奴等が逃げている時だな。



*


二人の殺し屋、ナニヌ・ネンノンと破妃・怖片穂(はひ・ふへほ)は授業中の教室に押し入った。先生が驚く中、ネンノンは言った。

「特殊警察のネンノンだ。垣紅毛子は、どこに、いるかね。」

先生はわなわな震えた。ネンノンと名乗る男性は背の高い金髪の異国人、もう一方の女性―破妃怖片穂―は背は小さく人形みたいな顔立ちで穏やかな雰囲気だけに不気味である。先生は言った。

「に…逃げました…」

「逃げちゃったの?」

破妃は穏やかに訊ねた。

「…はい…」

「どこにいるか知らない?」

「…知りません…」

「本当に、知らないの?」

だんだん破妃の眼光が鋭くなってきたので恐ろしくなって先生は言った。

「知りません知りません知りません!」

「本当に知らないみたいね…」

「そうだな…」

先生は言った。

「ただ、男子生徒刃結男と逃げました!」

「そうか…情報ありがとう…授業の邪魔して失礼した。」

ネンノンはそう言い、二人の殺し屋は去った。


*


「さあ、どう学校を出るか…たぶん昇降口からは逃げられない…」

理科室で刃は言った。垣は言った。

「2階まで逃げて、窓から飛び降りる?」

「それしかないね…しかし、ここは3階だ。廊下を歩かねば…」

「頑張りましょう。」

「そうだな…」

二人は廊下に出ようと理科室の出口扉を開いた。

扉の向こうに破妃がいた。

「きゃあ!」

「あ、二人ともこんにちは~。」

にこっと笑って破妃は銃を取り出した。

「伏せろ!」

二人が伏せた時、消音機付き銃から、スカッという擦れた音と共に弾丸が飛び出した。幸い当たらなかったが、顕微鏡が一台壊れた。

「あ、失敗しちゃったあ。仕方ないわね。」

破妃は弾を取り出し、装填しようとした時、二人は破妃に突進した。咄嗟に破妃は撃った。弾丸は刃の頬をかすったが、それに負けず、刃は破妃に突進した。押し倒された破妃を乗り越えて、二人は逃げた。


「降りよう!」


そう刃は叫んで二人は階段を降りた。もはや飛び降りるなんてもっての外、隙をつかれるからまずいと、彼らはひたすら下に疾走し、玄関にたどり着いたが…

「きゃあ!」

垣は悲鳴を上げた。ネンノンがいたのだ。ネンノンはチェーンソーを持って襲いかかった。

刃は靴を脱いだ。そして靴をネンノンめがけて投げつけた。靴はネンノンの目に命中し、ネンノンは「あおおっ」と叫んで怯んだ。その隙に二人は逃げ出した。


「逃げられちゃったわね。」

破妃は言った。

「そうだな…」

「仕方ないわ。このツケは誰が払う?」

「誰がって…?」

バァン!銃声が鳴り響き、ネンノンは足を撃たれた。よろめきながらネンノンは言った。

「…何を…」

「あなたは二人の被害者になってもらいます。」

「被害…者…?」

「二人に殺された事にします。そうすれば二人は異常犯罪者として国民の敵になります。」

「何を!」

「今回の作戦指揮はあなたです。作戦に失敗したのはあなたの責任です。ですから責任は取らせてもらいましょうか。」

破妃はそう言いながら銃を構えた。にこりと彼女は笑った。人形のような華奢な可愛らしい風貌だが目の光ばかりは燃えるように光っている。

「やめろぉぉぉ」


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