表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

#6

「もともと、できないやつはできないんだよ。弱者を支援する理由などない!」

「某国は犯罪者しかいない国だから」

「行政は机上の理論でしか動かないクソどもだ。」

数々の暴言を吐く伝藤だが、彼は何故か人気だ。何故なら某国は、我が国の経済を苦しめる悪者で、そいつから救う存在と信じられていたからだ。おまけに彼の暴言は「キャラクター」として許容されていた。国民は、彼の暴言がある種うわべの物だとは無意識では気づいていたが、それを彼が真実に突き進むが故の暴言だと錯覚していた。ただの演出に過ぎないのに。


テレビでのそういった活躍を見て学は言った。

「計画通り、伝藤さん頑張ってるね。父さん。」

「ああ、むしろ遊んでいるな。」

父の歪飢男は言った。歪学は言った。

「お父さん」

「なんだ?不正を学ぶ我が息子、歪学よ。」

「私のクラスに、反逆者がいます。垣紅毛子です。」

「なに?」

「伝藤さんが救世主ではない、政府の陰謀だとあちこちに触れ回ってます。幸い誰も信じてませんが。」

「しかし手を打たねば…」

「ここに、写真があります。」

「…なんの写真だ?」

「僕の盗撮写真です。」

「なに、学、貴様…」

「やだなあ、父さん、僕の盗撮の腕前を見てくださいよ。」

歪飢男は写真を見た。まるで映画の一シーンのように、盗撮とは思えない美しすぎる構図とポーズ。飢男は息子の腕前に感心した。

「さすが我が息子!スナップ写真!立派な写真家になれるぞ!」

「いやあ父さん照れるなあ。でも写真ちゃんと見て。」

歪飢男は写真をしっかり見た。赤毛にメルヘンのような服装…歪はハッとした。

「こいつは…最初に愛飢男と打ち合わせした時に愛の家の前にいたやつだ!会話を聞かれたのだな!畜生!」

「どうしましょう。」

「逮捕だ。」

「だめ。」

「なぜだ。」

「紅毛ちゃんは、このように可愛らしい服装をしてるけど、変に根性のある人。大体海ガールブームに反抗してるし。逮捕ごときで凹んだりはきっとしない。」

「では…」

「簡単です。紅毛ちゃんを殺せばいいのです。」

「…!」

「お父さん…どうしたんです?」

「いや…我が息子ながら…びっくりした…そうか、それが一番良いわな。」


*


愛飢男は未だに愛に飢えていた。と言うか最近になって愛を感じなくなった。果てしない虚無感。人々は自分が好きだから自分を買っている、というより、それをするのが当たり前だから自分を買っている、というように思う。こんなのでは買われても仕方ない。いっそう寂しくなる。なぜだ、なぜこうなった。

あいつのせいだ。あいうえおに対するわゐうゑを…歪飢男。あいつとの呪われた関係を切りたい…だができない。一度繋いでしまった関係から逃れるのは非常に困難だ。最初は彼は、普通のアドバイスをしただけなのに、段々変な要求をするようになった。あいうえおを崇める歌のはずが、ただの愛を歌った歌、やがてたちつてとを崇める歌になった。伝藤太刀め。ちくしょう…だが始めた物は戻せない。



*


授業。刄結男は窓際の席にいた。対角線上にいる紅毛子は先生の話を聞いていた。刄は、窓の外を眺めていた。

ふと校庭に不審な人物を発見した。スーツ姿。よく見るとバッジをつけている。それは…。

「紅毛子!」

突然刄は立ち上がって、垣の元に向かい、垣の手を引いて教室を出た。先生は一瞬黙って、「なんでしょうね」とせせら笑いながら授業を再開し、クラスの人々は、ひそひそと噂した。

廊下で垣は訊ねた。

「刄くん、なんなの?」

「秘密警察だ!逃げないと殺される!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ