日常の崩壊
読んでいただきありがとうございます。最後までお付き合いください。
誤字脱字、修整したほうがいいところがあれば、気軽に言ってください。
四月。
春の陽気が窓から差し込み、黒板の文字をぼんやりと照らしていた。
「では、この問題を…佐藤」
「………はい」
名前を呼ばれた少年が、ゆっくり立ち上がる。
彼の名前は佐藤悠真。現在高校三年生である。昔から意外と練習すれば何でもできるという長所があるらしい。
みんなからは、基本的に無表情で、何を考えているのか分からないと言われることも多い。
そんな本人としては、
(眠い)
ただそれだけだった。
「答えは?」
「52」
「正解だ、座っていいぞ。」
小さく頷いて座る。
彼の隣の席から、少女がクスクスと笑っていた。
「悠真寝てたでしょ」
「いや、寝てない」
「目閉じてたよ?」
「考えてた」
「何を?」
「人生」
「授業中に?」
「重要だろ」
「ふふっ、もう」
彼女の名前は七瀬光。悠真の幼馴染で、同じクラスの少女。明るく、優しく、クラスの誰とでも仲良く話せる。
悠真とは正反対のようでいて、不思議と昔から気が合った。
「それより、今日の帰りどうする?」
「帰る」
「いや、それはそうだけど…」
「寄り道でもする?」
「そうそう」
「何食べるか考えとかないとな」
「もう食べる話?」
「重要だろ」
「さっきからそればっかりじゃん」
光が笑う。
その後ろで一人の男子生徒が呆れたように二人を見ていた。
「お前ら、授業中だぞ」
彼の名前は青峰廉。この高校の生徒会長。成績優秀、運動もできる。無駄なことは言わず、冷静沈着。クラスの中でも、一目置かれている存在だった。
「青峰、真面目だな」
「お前が不真面目すぎるだけだ」
「そうか」
「そうだ」
「じゃあ仕方ないな」
「どういう理屈だ」
相変わらず廉はため息をつく。
隣で光がまた笑う。
…いつもの日常、何も変わらない一日。
ずっと続くと思っていた。
そのときだった。
_____ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
「なんか揺れてね?」
「地震か?地震か?」
男子生徒が騒ぎ出す。
「おーい、なんか指示があると思うから静かにしとけー」
と、教師が言い終わった直後。
世界が 跳ねた
_ドォォォォォォン!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
窓ガラスが割れ、物が散乱する。
「机の中に隠れろ!!」
廉が叫んだ。
轟音。
悲鳴。
粉塵。
_そして突然静かになった。
「廉、光、大丈夫か?」
悠真は呟いた
机からゆっくりと出てきた光がこっちに来て
「大丈夫。そっちも怪我はなかった?」
「大丈夫。それより、廉は?」
廉も机からゆっくりと出てきて
「こっちも問題ない。それより、、、」
と言いかけたその時、窓の外を見ていた生徒が叫んだ。
「おい…な、なんなんだよ…あれ……」
全員の視線が窓の方へいく。
そして、誰もが言葉を失った。
窓の奥にはグラウンドがある。
そこに__"何か"が立っていた。
真っ黒なスライムのような形をしており、
数十メートルは、あるであろう巨体。
異様に長い腕?のような物が1つ。
そして、、こちらを見つめる赤い瞳。
「ば、化け物だー!!」
みんなが騒ぎ始める。
廉が口を開いた。
「…まずい」
「どうした?」
「こっちを見てる」
「え?」
その瞬間。
化け物は確かにこっちを見て、口を大きく開いた。
咆哮。
空気そのものが震えた。
そして__
腕が振り落とされた。
_ズドォォォォォンッッ!!
その一撃で校舎が吹き飛んだ。
「逃げろ!!」
教師が叫んだ。
悠真は廉と光がついてきていることを確認して、
「走るぞ」
「うん!」
「ああ」
瓦礫が降ってくる。
机が吹っ飛ぶ。
壁が崩れ始める。
生徒たちは我先にと、体育館へ走り出した。
悠真が背後を振り返ると、校舎の一部は完全に崩壊していた。
「…嘘だろ」
つい数分前まで、ここは普通の学校で、授業を受けて、友達と話して…
なのに、、、たったの数分で崩壊した。
「おい、ぼけっとするな」
「…あぁ、すまん」
確かにこんな事考えている場合じゃないな。廉に言われ、体育館に避難することにした。
(体育館に到着)
避難してきた生徒達が集まっていた。
「全員いるか?」
「分かりません!」
「怪我人はこっちに!」
教師たちが必死に指示を飛ばす。
悠真たちは壁に背をつけ、休むことにした。
「廉も光も無事で良かった」
「悠真は?」
「俺も平気だよ」
「なら良かった」
悠真と光が話していると、廉が言った。
「それにしても、地震が起こったっていうのに、緊急地震速報がないな」
「そういえば、確かに。スマホもいつの間にか圏外になってるし」
「なにか不具合なのかな?」
「さっきの化け物のこともそうだが、今回の地震、なにかおかしくないか?」
「「う〜ん」」
悠真と光が悩んでいると、体育館の扉から_ガンッと音がした。
「なんだ?」
教師たちが扉の方に向かう。
次第にその音は大きくなった。
_ガンッ。
_ガンッ。
「何の音だ?」
と廉が言うと
_ガァァァァンッッ!!
扉が吹っ飛んだ。
近くにいた教師たちも、吹っ飛んでしまった。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
生徒たちの悲鳴、阿鼻叫喚の嵐だった。
吹っ飛んだ扉の向こうから"それ"は入ってきた。
巨大な虫のようだった。
3メートル以上ある巨大な体躯。鋭い6本くらいの脚。硬そうな外皮。あの赤い複眼。
人間など簡単に引き千切りそうな顎。
__ギチギチギチ。
耳障りな音が体育館に響く。
「な…なんなんだよ…またかよ…」
生徒の一人が腰を抜かした。
そして、赤い複眼がギョロリとこっちを捉えた。
「…多分、来るぞ」
悠真が呟いた。
その瞬間、やつは飛んできた。
「逃げろ!!」
廉が叫んだ。
生徒たちはグラウンドから逆の方向の出口に直行していった。
しかし、やつは、、悠真のほうに向かって突進した。
「__ッ!」
悠真が後方によける。
やつの足が振り下ろされる。
__結果。
間一髪、悠真は避けることが出来た。
やつの視線から悠真は理解した。
「俺を狙ってるんだな」
「悠真!」
光が叫んだ。
「廉、みんなを逃がしてくれ。」
悠真はみんなから遠ざかるように奴を誘導しながら言った。
「でも、」
「早く!!」
正直怖い。
足が震える。
死にたくないと願う。
それでも退かなかった。
廉が言う。
「…佐藤!」
「どうした?」
「あとは頼んだ!」
「…なにを?」
「時間を稼いでくれ」
「雑な頼み方だな。光を頼んだぞ!」
「悪いな」
廉も生徒たちと一緒に出口に向かって行った。
悠真は苦笑した。
「…本当人使い荒いな、あいつ。」
そして、目の前の怪物に集中する。
「さて……どうするかな」
やつが突進した。
悠真が横に避ける。
やつの爪が床を抉る。
(あいつの攻撃速いな)
次の攻撃、次の攻撃と上手く避ける
(だけど、意外と単調で避けやすい)
そう思った直後、壁に追い詰められた。
(やべ…)
悠真は左に避けた。
だがやつも爪を右に振った。
腕で受けて、吹き飛ばされた。
「…痛ぇ」
吹き飛ばされた影響で、右腕、背中が痛む。
だが立ち上がる。
こいつをここに留めておくために。
悠真は走る。
右。
左。
後方へ。
上手く避けることができているが、動くごとにさっきの傷が痛む。
(このまま死ぬのかなぁ、嫌だな、怖いな)
こんな言葉が頭をよぎる。
なのに、なんでだろうか、不思議だった。
さっきより、少しずつ、
奴の動きがゆっくりと見えるようになってくる。
やつが右腕を振り上げる。
悠真は一歩下がる。
(次は左から薙ぎ払いが来る)
悠真はしゃがむ。
そして、やつが左腕で薙ぎ払う。
(次は飛んでくる。)
悠真はその隙に奴の奥へ行き、体育館倉庫の方向へ向かった。
そして、確かにやつは飛んだ。
(今の。)
悠真は見えていた。
やつがどのように動いて、次に狙うのはどこか。
まるで、最初から知っているように。
(今は、そんなことよりなんか倒せそうなものないか)
倉庫はさっきの地震で崩れていたが、いろいろと備品が散らかっていた。
やつに追いつかれる前に悠真はその中から体操棒を見つけた。
やつが目の前に現れる。
悠真は真正面から向き合う。
落ち着いて、
やつの右からの振り下ろし、左からの薙ぎ払い、右の薙ぎ払いを避ける。
そして。
「ここだ!」
体育棒を目に突き刺す
__ドゴッ!!
手応えがあった。
「効いたのか?」
「もしかして…」
勝てる。その言葉が脳裏によぎる。
しかし、
「悠真!!」
「……光?」
逃げたはずの光が出口に立っていた。
「なんで戻ってきたんだ!」
「悠真を置いていけないよ!」
「馬鹿、、早く逃げろ!!」
その直後、今までこっちを見ていたやつが光の方向へ向き出す。
「おい、逃げろ!!」
悠真が叫ぶが…
光が動かない。
恐怖で身体が固まっていた。
…なら自分が。
やつが飛んだ時、悠真は走った。
_光の前に立ち、
_ズドォォォン!!、
「悠真!!!」
光が叫ぶ
悠真は衝撃で身体が宙を舞い、床に落ちた。
肺から空気が抜ける。
全身が熱い。
視界が霞む。
「ゆ………ま……ゆう……!!!」
光の声がする。
けれど、よく聞こえない。
身体もよく動かない。
「お願い、目を開けて…」
光が呟く。
悠真が薄く目を開く。
「……光?」
「悠真!!」
「…けが…ないか?」
「そんなことどうでもいいよ!」
光の目から涙が溢れる。
その涙を見て、悠真は思う。
まだ死にたくないと。
改めてそう思った。
だが、やつは非情にも近づいてくる。
ギチ…ギチ…。
やつが顎を鳴らす。
もう。
次は避けられない。
「光……俺を置いて…逃げてくれ」
「そんなの無理だよ」
「俺も…もう無理だから」
「そんな事言わないで!」
やつの脚が振り下ろされるのが見える。
そして__
死を覚悟した。
「そこまでじゃよ」
老人の声が後ろからした。
「誰?」
光が言った。
やつもそっちの方へ向いた。
「ほう、随分大きなな虫じゃのう」
束ねられた白い髪。着物。腰には一本の刀。
老人は静かに刀の柄へ手を添えた。
やつが脚を振り下ろすり
「じゃが、虫にしては凶暴じゃな」
空気が変わった。
__老人が刀を抜いた。
何が起こったのか分からない。
「ちと反省せい」
カチンという音がした。
小さな音。
気づくと老人は刀を鞘に納めていた。
次の瞬間。
巨大なやつの身体が真っ二つに割れた。
_ドサァァァン。
体育館に静寂が戻る。
悠真と光がその光景を見つめていた。
「大丈夫か、お主ら」
老人が尋ねると
「…すげぇ……」
悠真が呟くと、
身体が限界だったのか、視界がぼやける。
光が何か言っているが、もう何も聞こえなくなった。
悠真の意識は完全に闇へと落ちた。
初めての作った小説です。
反応が良ければ続きを作ろうと思います。
読んでいただきありがとうございました。




