第15話 スマイルダストと禁じられた錬成
「幸福値を人工的に引き上げる薬……?」
薬師のマリアは、私からスマイルダストの話を聞いて眉をひそめた。
「成分の半分以上は未解析。けれど、“霊素抽出”という古代の錬成法が使われている可能性があるわ」
「霊素……それって、人の感情を物質化するっていう……?」
「ええ。古代では“祝福”や“祈り”を錬成して薬にする技術が存在したらしい。
でも、それは禁忌だった。なぜなら……」
「“幸福”を搾取することになるから」
「そう。誰かの感情を削って、別の誰かに“幸福の幻”を与える。
本物の幸福を偽物に変える錬金術よ」
私は愕然とした。
ジャレッドは、そうやって得た“誰かの幸福”を粉末にし、ばら撒いていたというのか。
「……私が視ていた“幸福値”は、誰かの犠牲の上に成り立っていたかもしれない」
そのときだった。
外から子どもたちの叫び声が響いてきた。
「エルフィナせんせー! みんな、へんなの!」
私は広場へ走った。
そこには、倒れた子どもたちと、異常に“光りすぎる”水晶片が転がっていた。
「幸福値:150、172、198……!」
数値が壊れていく。人間の心では受け止めきれないレベルの幸福が、子どもたちの精神を蝕んでいた。
「お願い、誰か……止めて……!」
私は水晶片を握りしめ、心から叫んだ。
(私の力で、幸福を……この子たちの未来を守れるなら——)
次の瞬間、私の瞳が光を帯びた。
——幸福値可視化能力、暴走開始。




