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遮断書

9、遮断書


ことの始まりはこの本だ。


僕は散歩中にこの本を拾った。

散歩といっても小さい庭を歩くだけだが。


僕はまあ、一般的に言う「引きこもり」だ。

中学生の頃にいじめられてそのまま不登校になり、家にこもって1日の大半を過ごす。

外に出る機会は、空気を吸いに庭を歩く程度しかない。


そんな僕がある日、庭の花壇の中に見知らぬ本が落ちているのを見つけた。

普段アニメしか趣味のない僕にとっては、これはものすんごく唆られる出来事だった。

何に唆られるかって?

そんなの決まってる。

じっくり読みたいじゃないか。



僕はその本をそっと拾い上げ、土をはらい、表紙を見る。

一応確認しなきゃ。

親のだったらつまんないし。


よし。

親のではなさそうだ。

というより、日本語じゃない。

何語だ?


めくって見る限り、英語っぽいが、、、読めない。

英語は昔から得意なんだがな、、、



見た目もとても古く、表紙は何やら皮でできている。



とりあえず自分の部屋に持っていこう。



部屋に入り、ベッドに仰向けに転がる。


ひと伸びしてから改めて表紙を見る。

よーく見ると、右下に何か文字が書いてあった。


んー何語だ?


さっきも思ったけど、、、

英語みたいなんだけど、なんかちょっと違うなー。

待てよこれって、、、


あ!

昔の英語じゃない?!



早速調べてみた。

どうやら予想通り昔の英語のようだ。

通りで読めないはずだ、、、



ってことはだ、

この本って相当古いものじゃ、、、??

え、まじかー。

僕ってば、すごいものを発見しちゃったぞ、、、


よし。もう少し探って見るか。


早速開いて中を確認した。

最初のページが何枚か破られていた。

そして残ってるページには、なにやら辛気臭い魔法陣のようなものが書いてある。

読めない文字がびっしりだ。




っ!!




なぜかはわからないが、とても怖かった。

恐怖を感じた。


気味悪っ、、、。

何なんだよこれ。

怖いなー。



なんか魔法関連か、、、?

わからん、、、。


でも、とりあえず、手を出しちゃいけないものだと感じる。

そんな気がした。




その日は、それ以上調べなかった。


人の「感」は侮らない方がいい。

僕は昔から、いつも自分にそう言い聞かせていた。

今回もそれが生かされ、守られたのかも知れない。






10、不思議な本


次の日。

僕は普通に目覚め、普通に朝ごはんを食べ、いつも通り部屋にこもっていた。

本のことはなるべく気にしないようしていた。


12時を過ぎた頃、家のチャイムが鳴ったのが聞こえた。

親は仕事でいないので、僕は仕方ないと思いつつ玄関に行く。


「はーい。」と言いながら鍵を回し、ドアを開ける。


、、、


あれ、、、?



ドアの外には誰もいなかった。


でも確かに鳴ったよね。チャイム。

まあいっか、と思ったのも束の間、

ドアを閉めようとしたら何かが挟まった。


ん?


そこにはボロボロの革靴が挟まっていた。


誰かが捨てた?

いやでもそんな治安悪くないし、そもそもなんでチャイム鳴らす必要があるんだ?ピンポンダッシュか悪戯か?


色々考えたが、人がいないので捕まえようもない。


とりあえず靴をどかしてドアを閉めようとした。


うわ!なにこの靴!

おっも!!


その靴はとても、汚い雑巾を持つような指の形では持ち上がらなかった。

多分臭いし、思いっきり掴みたくないなー。


ふんっ!


ダメだ。蹴飛ばしても足の指が折れちゃうほど重い。

なんなんだよこれ、、、。



どけよー

ドア閉めたいんだけど。


そう思わず口に出したら、なんとその靴はビクッと動いて、跳ねるように花壇の奥へと入っていった。





今動いた?


靴が


えーなにそれ。


そんなのアリなのか?!?




それを見た僕は、気にならない訳もなくそのボロ靴を追いかけに花壇へ走った。


靴は花壇で止まっていて、その横には、昨日部屋に置いたはずの遮断書がまた落ちている。

ありえない。

自分で持ち出した覚えはない。



どうやら僕は魔法の本を拾ってしまったみたいだ。



なにを考えたのか、僕はその本へ近づいた。

すると、本がぶわああーって開いてページが一枚破け、その紙にみるみると文字が浮かび上がっていった。


破けた紙には靴の絵と「Follower of the Shield」って文字、さらに、本のページが光り出して、そこに血まみれの記憶、、、のようなものが浮かび上がった。







11、過去の記憶


その本は震えながら、過去の映像らしきものを映し出した。



最初は中世っぽい街。

少女がこれと同じ本を拾って開いている。

すると、空から黒い影が少女の目の前へ降りてきて、しばらく何かを脅している。次の瞬間、彼女の体は裂けるように引きちぎられた。

影は長いローブを着ていて、顔ははフードのせいでよく見えなかった。しかし、目には狂気じみた光を宿している。


場面が変わった。

次は、森の中だ。

長身の男が本を手に持った瞬間、地面から黒い手が伸びてきて、彼を床に叩きつける。影が現れ、「ハンナはどこだ」と叫ぶ。返事がないと、影はその男の首を即座にへし折った。


最後は現代の街。年老いた女が本を開いた途端、影が背後に現れて、しばらくした後、彼女の胸を魔法の刃で貫いた。

ここでも「ハンナはどこだ」と低く唸りながら、女が死に絶えるのを冷たく見下ろしている。


全部、この本を手にした人間たちだ。

そして全員、この「影」に殺されている。



なんだこれ、、、?

だいぶまずいことになったな。



「記憶」が写り終わると、本は次のページを開いた。

そこには名前が刻まれていた。

「Elina,1472」

「Yohan,1698」

「Misato,1985」


最後に「Tsumire」と僕の名前が浮かんだが、まだ何も起こっていない。


なんだったんだ、、、あの映像。


それにこれ、僕殺されるじゃん、、、

あの影みたいなのがふわって来て、、、


あー終わった。

人生終了。


ってかあの影なんなんだよ。

人殺して何が面白いんだよ、、、


それになんか探してた。

ハンナってやつが気になるな、、、


僕がぶつくさ独り言を言っていると、その本はパタリと閉じた。

さっき破けた紙が僕の前にひらひらと落ちる。

そこには、「Tsumire, THE SHIELDED ONE」と文字がまた浮かんだ。

なんだこれは読めるな。

なになに、、、守られた者?

意味わからん。


謎が深まるばかりだ。



だが、その日はそれ以上不思議な出来事は起こらなかった。

というか、そこから1週間、まるでこの出来事が夢だったかのように何も起こらなかった。





12、探している


奇妙だ。

この本を手にした人は全員死んでるはず。

じゃあなんで僕はここ1週間何も起きない、、、??


いつものようにアニメを見ながら疑問に思う。

靴が跳ね、記憶を見たこと以外、僕に身に何も起きてない。


なぜだ、、、考えろ、、、。

なぜ僕だけ、、、。



そういえば昔僕がいじめられてた時、妙な感覚があったな。


今更ながら昔のことを思い出す。


当時は必死だったからよくわかんなかったけど、実際考えるとあれは現実的ではない。



僕はいつもいざ殴られる瞬間になると、目を瞑っていなくなれと心の中で叫んだ。そうするとあら不思議、相手がいなくなる。

相手はその後、20mくらい離れたゴミ箱の中から出てくる。僕もきょとんとしていると殴る気も失せたのか、みんな早足でその場から逃げていく、、、とまあ、こんな感じだ。


補足すると、相手がテレポート(?)する場所は様々だが、同時に、自分もテレポート(?)することも多々ある。


よくわからない現象だ。

もし神様がいるのなら、助けてくれてありがとうって言えばいいのかもしれない。

でも本当にいるなら、この世界の理不尽な虐殺や戦争は無くなっているだろうから、神様はいないと結論付けるのが妥当だ、というのが僕の主張みたいなものだ。


ということは、これは魔法に入るのか、、、


そして今回のとなんか関係あるのか?



一旦考えるためにベッドに飛び込んで、伸びをしてから仰向けになる。



じゃあ仮に、だ

仮に魔法が現実にあるとして、僕はそれを使えるとしよう。

種類は、、、そうだな、防御魔法的なやつか。


それを前提として考えてみよう。



あの本、、、は魔法関連の本、あの本をを持ったものは「影」に殺された。

そして影は誰かを探していた。


じゃあこの本はその「誰か」を探すための目印、、、?

いや待てよ、でも影は本には興味を示さなかった。


本が何か魔法の残影なやつを発しているのか、、、

それを追ってそいつにたどりつこうとしているのか。


お、我ながらすごい推理じゃないこれ。


いやいや、それどころじゃないんだって。


これが仮に合っている話だとしたら、僕はかなりヤバい状況だってことが改めてわかる。

そして最初の疑問に戻る。

なぜ僕は本を持ったその場で殺されていないのか。


あ、そうじゃん。

僕は魔法が使える前提だった。


防御魔法が働いてるってことか。






僕すごくね?





13、本の招待



僕の魔法はあの影の追跡を防いでるってことじゃん。


あ、いや

でも影が死んでたらこの限りじゃない。

それじゃただ単に追ってくるものがいなくなっただけだ。


いやだめだ。相手が死んでる生きてるの議論はするだけ無駄。

生きてると仮定しよう。


じゃあこの本はなんの役割がある?

僕に記憶を見せて、あの文字、、、「守られた者」


って、、、守られた、、、?


守られたのか?!


あの影から?!


今繋がった。

僕は無意識に防御魔法で守ったってことか、あの本が守ってくれたってことか。

それとあの靴、、、

僕を呼び出すために動いたのかな。



まあ大体は現状を掴めた。

よし。一歩前進するためにどうするか。


普通の人はここで、守られてるならいいじゃないか!ってなるかもだけど、僕はそんな弱っちくないから、あ、学校行ってない時点で弱っちいのか。いや、そんなことはないはず。


とりあえず、


本をもう一度開く!!!



そう言ってベッドから飛び起きて、本の前に立つ。




よおーし。

やってやるぞ僕は。



何をかはわかんないけど、本を開けばきっとわかる!!





深呼吸。


そして、ゆっくりと手を伸ばす。


指先が表紙に触れる。


そのまま思いっきり本を開けた。



次の瞬間。


……っ!!


光が爆発するように溢れ出す。




「wilcumian」




前とは何か違う。光は止まることなく大きくなっていく。


眩しい光が、視界を覆う。


僕は一瞬、目を閉じた。

まるで夢の中に引きずり込まれるような感覚。


ふわっ……


体が浮かんでいるような、不思議な感覚に襲われた。

まるで、どこか別の場所へと連れていかれるような……


そして、次の瞬間


ドサッ!!!!!!!!!!


……っ痛ぇ!!


思いっきり地面に叩きつけられた。


なんなんだよこれ……!



僕はゆっくりと起き上がると…


そこは森だった。





14、森の中には井戸がある


我ながらびっくりした。


森じゃんここ…



爽やかな光が差し、こごち良い風が緑豊かな森を感じさせる。



……僕は……えーっとたしか……


あれ


なんでここにいるんだ?!?!

えなにこれドッキリ?


いやな訳ない。

んーあの本関連か…?


…って持ってるじゃんか!!


気づいたら本を手に持ってた。

…どっから湧いてきた…

どうなってんだよ全く…


よし…記憶を辿ろう。


んー部屋にいたところまでは覚えてる。

ってかそこしか覚えてない。


じゃあどうやってここに来た?


わっかんねー!


わっかんねー……


……わかんない……


……………………



よし!


僕はどうやらここまでの記憶をなくいてしまったらしいな!


わかんないけどとりあえず歩こう!


心機一転!大切!

 

…………………


いや……

歩こうとは言ったものの、どこに歩けばいいかわからない…

でも…助けを待つって言ったって、誰か来るわけないし…

こんな山奥じゃ手段ないし…



んー……


………………


よし。

歩くか。


ここはもう、割り切って自分でどうにかするしかない。




歩いてみるとわかるが、この森は人の手が入っていない、動物や昆虫の「世界」が広がっていた。

鳥が仲良く囀り、鹿が家族で戯れる。

豊かな自然が、そこで生まれ、生活し、一生を終え、次の世代へと循環しているのが、とても新鮮で、美しい。


たまにはアニメの世界から出るのもいいもんだな…

こういうのを見てると、ただのいじめで嘆いてる僕が虚しくなってくる。


あー僕ってちっぽけな存在だなー。

人間ってほんと、しょーもないなー。



そうブツブツいいながらしばらく森を進んでいると、少し開けた場所についた。


真ん中に何かある。…井戸か?



……??



そして…井戸には…



誰かが挟まってた。





15、最強な女の子


人がいるのは聞いてないってー…

今完全にいない雰囲気だったでしょ作品的に…。

いやあまあ、これで助かったけどね、安心したけどね。



それを見た僕は、一応念の為、周りを確認してから恐る恐る近づく…

話しかけていいのかなこれ。

女の子じゃないあれ。

いや…今更躊躇して何になる。

ここはつみれの意地を見せるところだろーがよ!



あ、あのぉー…

僕迷子になっちゃってー…

…もしかしてあなたって…ここの住民だったりしますかね…

それと…

なんで井戸にはさ…「私は最強である!」


は、はい?


「なんてったって最強なのだから!!」


いやどう見ても井戸にはさまってるしがない女の子にしか見えませんが…。


何してんだこの人。ってか何話してんだ今。


「え?そんなふうには見えないって?」


それは、まあ、はい。

見えませんね。

証拠でもあるのなら別ですが。


あ!しまった…いつもの癖で証拠出せとか言っちゃった…

めんどくせえぞこれ。

この人頭おかしいかもしれんのに。


「え…証拠…?

そ、そんなものが必要なのかね…??」


あるなら信じますけどね。


やばい、話が戻りそうにない。

何やってるんだー僕ー!!


「い、いやあ困っちゃうなぁー。

信じてくれよぉー。

ね?お願い!

この通り!」


いやこの通りとか言われても…


「ほら!もう顔がのめり込んでる!

のめり込みすぎてミリオみたいになってる!」


えー!!ヒロアカとか知ってるんかこいつ…

いやけど全然似てない。

これは僕の知るミリオじゃない。

でもこれ言ったらキレられるかも…

何も言わないでおこう。


「え?ヒロアカ知らないの?まじかぁー

伝わんないじゃんこのネタ…

恥ずかし…」


いや伝わってるけど全然真似できてないだけです、って言いたい……けど我慢!


「まさかアニメとか見ない系の人種?

うっわー人生損してるよ。まじで。

うん。9割は損してる。」


アニメなら沢山見てますよ。

そんなこと言ってるあなたはどうなんですか?


何言ってるんだーおい!

この人を煽ってどうするんだ僕!!


「私?

まあ私は最強だから、この世のアニメほとんど全部は知ってるな!

はっはっはー!」


え、じゃあワイルドストロベリーとか知ってます?


「え?何その作品。

めっちゃマイナーなやつじゃん。

なんで知ってんの?

まさかガチオタきた?!

あ、さっき知らないって言ったのって、私の再現度低すぎるからもはやミリオでもないって意味?!」


ふっふっふー。

わかればよろしい。


「うわー。

すんませんでした。

この通り。」


なんのなんの。

…え?何やってるんですか…?

土下座??

そんな井戸の中で無茶な…。


「どうだっ!?

何点??」


いやミリオの再現度ここで聞くんかい。

……ん〜2点とかですかね。


「2点?!

ひっく!!」


まあ全然似てないですし。

ちなみに100点中ですよ?


「もっと再現度高くできるようにのめり込み練習しなきゃな、、、」


話が飛躍しすぎです…

元の話に戻りましょう。


ってかなんで僕が誘導してるんだ…?

そもそも僕はこの森から出る方法を聞きにきたのに…。


「おっといけない。遠回りしすぎた。

で、なんだっけ?」


明らかに今誤魔化してましたよね。

証拠言えないからって…。


「え?誤魔化してなんかないよ?!

あー証拠ね証拠…

もう仕方ないなー。

しょうがない!

君だけに見せてあげよう。

誰にも言っちゃダメだよ」


はい…わかりました。


これは私とあんただけの秘密ね!


秘密とか…そんなの今あった人に言っちゃって大丈夫なんですか…。


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