諭吉の理想
理論も理屈もいらない。
目に見えた妄想だけが
正しいと信じてる。
同じ姿勢が嫌になった諭吉は、楕円の中から飛び出した。
自分がいなくなった楕円の中はもうひとつの透かしのようだ。
諭吉はあるべき日本の在り方を唱えた。
「人々が国民としての自覚をしなければならない。そして北欧の社会の在り方を見直すべきだ!!」
「さて、次のニュースです」
諭吉は振り返って驚いた。
「ニュース!!!!!」
「来月に控えた冬季オリンピックに向けて※〇≠±×」
「オリンピック!!!」
「日本選手団です」
胸に日の丸をつけた選手達が映しだされ、諭吉は叫んだ。
「日の丸!!!」
画面をしばらく観ていた諭吉が深呼吸と共に肩を下ろした。
「未来は私の理想どうりとなるのか。なら、安心だ」
そして少し惜しみながらも再び楕円の中へと帰っていった。
「次のニュースです。政府は日米関係を打ち切り、外国からの入国者を認めず、事実上の鎖国になることを発表しました」
彼は今日も日本中で流通してゆくことだろう。
本当は全部、
偽物かもしれない。