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no19...不穏

 《サモンテイム》で召喚された二匹のモンスターは、私を見るなり嬉しそうにしている。


 右手に召喚されたリトルラビットは、手のひらサイズの兎のモンスター。周囲の音を拾う特殊なスキルを持っている。


 ピョン!


 左手に召喚されたミクロホークも、手のひらサイズの小さなタカのモンスター。移動が速く、またその視野の広さと視力は頼りになる。


 ヒョロロロ!


 カトリーナと違って、側仕えとしての仕事に慣れていないシファは支度に時間がかかるため、その間に召喚した二匹で城内部の調査を行う。ちなみに、この子達には既に検知魔法無効化の指輪を取り付けてあるので、検知魔法に引っかかる心配はない。


「リトルラビットは第一領地の領室に向かって。ミクロホークは舞踏会の会場で、不審な人物が何か工作してないか調べて」


 ピョンピョン

 ヒョロー


 指示を出してカルナセシスがドアを開けると、足早に二匹は部屋を出ていった。


「……ベネッサ様。また悪巧みですか?」


 ルインが眉を寄せながら嫌そうな顔を向けてきた。


「ちょっとだけよ。ネルフィム様が何をしようとしているのか、少し調べてくるだけ」


「顔面パイが回避出来るならいいですが……。揉め事は勘弁してくださいよ?」


「わかってるわ。《シェアセンス》」


 テイマー魔法シェアセンスは、召喚している従魔と感覚を共有出来る魔法で、視覚や嗅覚を共有出来る。


「あ、そうだ。ベネッサ様。マグルディン様には注意してください」


「マグルディン様って、例の王の隠し子じゃないかと言われてる方よね?」


「それについて王室は否定していますが……。彼は魔力検知が得意と聞いてます」


「そう。気を付けるわ。シファ、始めていいわよ」


「失礼致します」


 私が目を閉じると、シファが私の顔に化粧を始めた。


 さっそく呼び出したモンスターへそれぞれ指示を飛ばす。テイムしたモンスターとは念話が出来るため、声に出す必要はない。


  ヒョロロロ


 ミクロホークが舞踏会の会場についたらしい。意識をミクロホークの魔力へ向けてると、《シェアセンス》により感覚器官が共有され情報が流れてきた。


 映し出されたのは例年と変わりない舞踏会の会場。舞台にはたくさんの楽器が並び、演者達が練習をしている。


 隣の調理場では、忙しく料理が作られている。見たところ食事の内容も例年と同じだ。うちの領地からも事前に料理人を二人派遣しているし、食材も持ち込んでいる。


 (ここは問題なさそうね)


 ピョン!


 リトルラビットが第一領地の領室前に着いたらしい。ミクロホークには、あえて人が来なそうな場所の偵察を頼むと、《シェアセンス》をリトルラビットへ切り替え《異次元聴覚》を発動させた。


 リトルラビットのスキル《異次元聴覚》は、領室に張り巡らされた魔力障壁すら貫通して音を拾う事ができる。盗聴にはもってこいのスキルだ。


 意識を集中すると、部屋の中の音がリアルに聞こえてくる。この時間なら第一領地のドラストリアの領主夫妻も、もう領主会議に行っていていないだろう。


「ねぇ。今年も私のドラストリア領地が一位だと思う?」


「はい、ネルフィム様。もちろんですよ」


 あれは確かネルフィム様の筆頭側使えのヴェロニカ。代々領主一族に仕える側近一族の若手で、丁度ルインと同じような立ち位置にいる。ただ、歳は三十歳手前で未婚……。


「もし繰り上げがあるとしたら、第二領地のフェルトグランね」


「そうですね。フェルトグランは画期的な製品の開発が得意な領地です。最近も様々な品を王へ献上していると聞きます」


「ドラストリアは八領地最大の面積を誇るが故に、レティーナ王国の台所と言われているけど、もう少し技術力をあげたいわよね」


「そうですね。ネルフィム様、そろそろお時間です。少し早いですが舞踏会へ参りましょうか」


「そうね。会場への一番乗りは渡さないわ」


 (おっとマズイですわ。リトルラビット、戻りなさい)


 ピョン


 第一領地は取り立てて問題なさそうですね。次は第二領地をと思った時だった。


 ヒュロ!


 ミクロホークからの緊急の知らせが入った。この様子は何かを見つけたらしい。


 私は急いで《シェアセンス》をミクロホークへ切り替えると、視界には城の外階段の近くでコソコソしてる二人の人影が見えた。念の為に遠距離から確認する。


 (ミクロホーク、《超視覚》)


 ミクロホークのスキルである《超視覚》は人間の数倍程度までの遠くを見ることが出来る。

 こんなところにコック……? それと話してる相手の、あの顔はどこかで……。洋服に描かれた白い紋様は中央関係者の印……。


 思い出した! あの金髪のオールバックで鋭い目つき……。マグルディン様だ。


「こ……が……の……。そ……を……毒……」


 (毒?!)


 今、確かに毒って単語が聞こえたわ。ダメだ。ミクロホークの聴覚では何を言っているのか聞こえない。でも、マグルディンは検知魔法が得意だとルインが言っていた。これ以上の接近は危険だわ。


 (リトルラビット! ミクロホークの元へ走って! 二階の外階段よ!)


 ギリギリの距離で物影に隠れて様子を探っているミクロホークの耳に、また途切れ途切れでマグルディンの声が届いた。


「ドラス……リア……。……ネル……ム……毒……」


 え……? ドラストリア、ネルフィム、毒……? まさか王子の側近が、ネルフィム様に毒を盛ろうとしているの?!

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