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怪物の舞

 --ダンジョン第五層--


 「おおおぉぉ!!」


 ダンジョン奥地からモンスター達が次々と流れ込んでくる。

 しかし、昨日よりもずっと戦いやすい。


 「神の恩恵も悪くないかもな!」


 「口を動かしてる暇があるなら一体でも多くモンスターを殺せ!」


 「あいよ!!」


 それでも物量差は圧倒的に不利だ。

 強くなっているとは言え、第五層からは魔法を使わざる負えないか。

 しかし、魔法を多用すればダンジョン内で動けなくなる恐れもある。

 でも、仕方がない。


 「ドッグ、魔法頼む」


 「ほらよ、やって来い!」


 「ああ!」


 ドッグが飛ばした炎をナイフにエンチャントし、モンスターを倒す速度が上がる。

 だが、エンチャントの魔力効率はすこぶる悪い。

 一瞬発動させるのならともかく、持続的な発動となると常に魔力を垂れ流し状態。

 それでも、この場を切り抜ける為には仕方がない。

 ドッグも魔法を使い、数をかなり減らしている。

 一対一なら俺の方が強いだろうが多対一ならアイツのほうがずっと強い。

 

 「しゃあ!! これで、最後だ!!」


 火の玉が最後の一団に向け飛翔し、着弾した瞬間に一団を巻き込んで爆発した。

 これまで、ドッグが使っていた魔法は追加であんな大爆発を起こしていた記憶はない。


 「凄い威力だな」


 「おうよ。魔法のコツを掴み出してな。

 これまでのが一体一向けの単体用だったが今のは集団向けの魔法だ」


 「頼もしすぎ」


 「もっと頼れよ相棒」


 もう、激しい戦闘が終わった後の恒例みたいに俺たちは拳を合わせた。

 

 「使い分けする為に魔法の名前決めといたほうが良いかもな」


 「確かに作戦決めとかに必要だな。

 そうだな、【火走り】なんてどうだ?」


 「どっちが?」


 「単体用」


 「見たまんまだな」


 「うるせぇよ。

 それで、もう一つは【爆峰ばくほう】。

 よくね?」


 「ああ、良いと思うぞ」


 「だろ!」


 多対一になりやすいダンジョンでは爆峰のようなミドルレンジからの集団殲滅力の高い魔法はかなり有効。

 自分の魔法と比べると羨ましい。

 もっと自分の魔法を応用し、強くしなければ俺はドッグに置いて行かれてしまう。

 

 「今日は六階層まで行こうぜ」


 「ああ、そうだな」


 エンチャント、道具に他人の魔法を付加し、元の魔法より強化できる魔法。

 これに応用力を見つけなければいけない。

 ドッグに置いていかれないように。

 


 --ダンジョン六階層--


 この階層からはコボルトが消え、ゴブリンが主体の活動域に切り替わる。

 そして、ゴブリンはコボルトと比べて知能が高いが身体能力は落ちるとされてるがゴブリンの方が圧倒的に狡猾だ。


 トンッと無音の世界で背後からの音。

 振り返る瞬間にしゃがむと頭上を淀んだ銀色の刀身が過ぎていく。


 単体? いや、ゴブリンが一体だけで活動する事は考えにくい。

 取り敢えず、コイツは殺しておくのが賢明。


 ドスッと顎からナイフを差し込み、脳を破壊し、死体はそのまま地面に転がしておく。

 魔石をとっている隙を狙われる可能性が高いからだ。


 ……他に音はしない。

 しかし、視線のような気配だけが身体中にまとわりついている。

 

 「誘ってみる」


 「ああ」


 もう一本手元にあった鈍のナイフをゴブリンの胸元に差し込んだ。

 

 ジャリジャリジャリッッ!!


 「前後からか! 後ろ頼む!」


 「了解! 爆峰!!」


 ドゴンッと爆発音が響き渡る。

 その後、後ろから足音は消え、隣にはドッグが俺と肩を並べてナイフを構えていた。


 「おし、後ろ終わり」

 

 「残りを片すぞ、魔法は温存で行けるか?」


 「は! 余裕!」


 冗談じゃない。

 ダンジョン入って二日目の奴に俺は討伐数を大きく越されている。

 魔法という、才能ありきなものではあるが嫉妬するのは当然。

 ナイフの扱いまで負けたら本当に俺はドッグにとって必要のない存在になってしまう。


 「負けるか!」


 目の前のゴブリン達を全て掻っ攫うつもりで一団に突っ込んだ。

 一体目のゴブリンのナイフで横っ腹に刺し、そのゴブリンが持っていたナイフを奪い左手で持った。

 それを最後尾にいたマジックシャドウに投げ、魔法を放つ前に撃破。


 「ふぅーー……」


 ナイフに頼った戦いでは限界が来る。

 身体の動きを最適化しろ。

 自分の手足が重心がどこにあるのかを反射的に理解しろ。


 「最善手を……」


 背後からゴブリンが飛びかかって来たのを視界の端で捉えた。


 「打て!」


 ドスッとゴブリンの顔面に爪先がめり込む。

 ゴスッと音を立てて、壁に叩きつけたゴブリンを見向きもせずに視界を回し、次のゴブリンを刺し殺した。


 「バケモンかよ!」


 ドッグが何かをぼやいた気がしたが気にせずに視覚と聴覚から得られる全ての情報を総括し、次の獲物を狩りにいった。


 ナイフに頼らない、身体全体を使う体術。

 体の至る所に武器はある。


 今までにない程、頭を使って戦っていた。

 体の疲労以上に精神的な疲れを感じる。

 しかし、こうでもしないとドッグに隣に並べない。

 最善の一手を撃ち続けろ。


 「だぁああ!!」


 最後のゴブリンが地面に倒れるのを見て、その時ようやく呼吸をした気がした。

 「はぁ、はぁ、はぁ」っと身体全体が脳が空気を欲している。


 「すげぇな、相棒。

 ほとんど、一人で一団を倒すなんてよ」


 「ははは。もっと強くなるぞ」


 「当たり前だ」

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