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5話 加入者

「お前が、加入したいってやつか?」


バッカスが声をかけると、その男は短く「あぁ」と頷き、カウンターの椅子から降りた。


背はバッカスより頭一つ分ほど高い。

すらりと伸びた長い脚に、細身ながら無駄なく鍛え上げられている体躯。

立ち上がるその動作には、一切の無駄がなく、隙らしい隙も見当たらなかった。


「――エイガーだ。剣でも、長物武器でも扱える」


簡潔に自己紹介をする。


「冒険者暦は長いのか?」


「まぁな。ただ、登録したのは随分と昔ってだけだ。依頼を多くこなしてきたわけじゃない」


「ふうん」


バッカスは腕を組み、静かにエイガーを見据える。

その空気が、いつもの朗らかなものとは違うことに、アマリエは気づいた。


(……警戒してる? でも…)


普段のバッカスは人当たりがよく、同盟の加入も二つ返事で歓迎する。

だが一方で、仲間を裏切る者には容赦をしない。

その二面性を、アマリエはすでに知っている。


エイガーはバッカスの視線を静かに受け止めていた。


お互いに相手を量るような、無言の対峙。

場に、張りつめた緊張感が走る。


「……ま、詮索するのは俺の流儀じゃねえ」


そう言って、バッカスに肩をすくめた。


「俺はバッカス。『陽気な旅団』の団長だ。よろしくな」


空気が、ふっと緩む。


「ああ。こちらこそよろしく頼む。団長」


二人は軽く握手を交わした。

息が詰まりそうな雰囲気が消え、アマリエはそっと息を吐く。


「ひとつ聞くが、登録したのはいつだ?」


バッカスの問いに、エイガーは少し考える素振りを見せた。


「……五年は過ぎているな」


「なら、再発行だな」


「そうなのか」


「その頃は紙だったろ? 今は――」


バッカスは首を下げていたタグをつまみ、見せる。


「こんな形になってる」


エイガーは興味深そうに、それを見つめた。

アマリエも少し身を乗り出して覗き込む。


金色の階級石(ランクストーン)

最高のランクを示す色だ。


(すごい…)


アマリエは心の中で呟いた。


「なるほどな。今はそんな形態か」


「ああ。だから同盟加入の前に、再登録が先だ」


「わかった」


「ギルドの場所は分かるか?」


世話焼きな問いに、エイガーは小さく苦笑する。


「…受付でこの場所を聞いた。問題ない」


「そうか」


その返答に、バッカスはニカッと笑った。


「明日にでも再登録を済ませてくる」


そう言って、エイガーは踵を返した。


「――待て」


ピタリと動きを止め、エイガーは怪訝そうに振り返った。


「お節介ついでにもう一つ。お前、この街に来たのは今日か?」


「…ああ」


「宿屋は?」


「まだだ」


「なら、マリエ」


「……え?」


不意に名を呼ばれ、アマリエは首をかしげる。


「お前が泊まってる宿、紹介してやってくれ。ここはもう空き部屋がなくてな。エイガーも、会ったばかりの野郎どもと雑魚寝は嫌だろ?」


「それは、そうだな。一人部屋の方がいい」


「だろ? ってわけだ。マリエ、よろしくな!」


バッカスに肩を叩かれ、アマリエは一瞬言葉に詰まった。


「ついでに、明日はギルドまで付き合ってやってくれ!」


「…わかりました」


多少強引だと思ったが、アマリエは素直に頷いた。


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