2話 再会
「フェイ!!どこ!?」
なだからかな丘から、一人の娘が駆け下りてくるのが見えた。
「キュイ!」
すると白い小型獣はネクタリウスの肩から下り、草原を駆け出した。
「フェイ!」
アマリエは、駆け寄ってきたフェイを胸に抱きとめる。
「よかったわ。…心配したのよ」
アマリエは安堵の息をついた。
と、同時にネクタリウスの存在に気づく。
「あの…失礼ですが、ネクタリウス様ですか?」
遠慮がちに声をかける。
「ああ」
ネクタリウスは、目を伏せながら素早くフードを被り直し、短く答えた。
「やっぱり!先日は助けていただきありがとうございました…」
アマリエは、深々と頭を下げた。
タルーデの街に来てすぐに、酔っ払い男に絡まれたところをネクタリスが助けてくれたことがあった。
「もしかして…フェイを助けてくれたのも貴方ですか?」
ネクタリウスは、無言だった。
「キュ、キュイ!」
見かねたように、フェイが大きく鳴いた。
「ありがとうございます! 実は…」
再び礼を取るとアマリエは、フェイを探していた経緯を話した。
薬草を取っていた時、フェイは少し離れた所で蝶を追って遊んでいた。
だが突如として灰狼が現れ、フェイはその場から逃げ出したのだ。
「正直、もう食べられてしまったと思いました…」
アマリエは俯いたまま小さく呟いた。
するとフェイは、アマリエの頬に自分の頭を押し付けてくる。
その姿は、『心配かけてごめんね』と言っているかのようだった。
「見たこともない『魔種』だ」
ネクタリウスが唐突に話しかけてきて、アマリエは顔を上げる。
「…ええ。――鎌鼬と言うそうです」
「ほう…」
「えっと、東洋の国から来たそうですよ」
以前聞いた話によれば、鎌鼬は東洋の国では妖と呼ばれており、とても珍しい魔獣らしい。
ゆえに密猟者によって捕まり、この国に商品として流れ着いたのではないかということだった。
「フェイは母親と一緒に保護されましたが……残念ながら母親は死んでしまったんです」
「そうか」
ネクタリウスは前屈みになり、アマリエの肩に乗ったフェイをじっと観察する。
するとフェイは遊んでくれると思ったのか、ネクタリウスの肩に飛び移った。
「…随分と人に懐いているな」
「そうですね。まだ子供だからでしょうか?」
「…私が、『威嚇』をしても全然恐れなかった。大したものだ」
「え?」
アマリエが、小首を傾げる。
「いや、何でもない」
ネクタリウスは、小さく首を横に振った。
フェイはネクタリウスの肩からするすると腕に降りると、今度はアマリエが持っていたバスケットの上に飛び乗った。
「キュイ!」
ぴょんぴょんと小さく跳ねて、フェイは何か主張する。
「フェイ……もしかして、お腹減った?」
「キュイ!」
「はいはい、わかったわ」
アマリエは、フェイに笑いかける。
「――ネクタリウス様も、ご一緒にどうですか?」
そう言って、彼を見上げた。
「…いいのか?」
「もちろん!」
戸惑いを見せるネクタリウスに、アマリエは笑顔を見せた。
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