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2話 冒険者ギルド


「ねぇねぇ、そこのお姉ちゃんたち! 俺たちと組まない?」


「えー、どうする?」


「別にいいんじゃない?」 



「このダンジョンなら…前衛職は、最低でも二人は必要だな。遠距離職も二人、治癒士一人、の少数精鋭ってのは、どうだ?」


「ああ。魔道士は補助魔法が使えるやつが欲しいな」


 掲示板の前では、

 ナンパ目的で声をかけている者がいれば、

 真剣にパーティー編成を議論している者もいる。


(…これが、冒険者ギルドなのね)


 アマリエは、物珍しそうにロビーを見回しながら、奥の受付へと向かった。


「こんにちは! ご依頼の受注ですか?」


 受付嬢がテンプレートのような笑顔で声をかけてきた。


「あの…冒険者になりたいのですが…」


「新規の登録ですね! では、こちらの書類に記入ください」


 ぱっと、紙とペンを差し出される。


「記入が終わりましたら、あちらの窓口に提出をお願いします」


「分かりました」


 アマリエは、空いているテーブルに座る。


(名前…本名はマズいわよね)


 イレーネに自分が生きてると知られるのは危険だ。

 生きていると知れば、また口封じをしてくるかもしれない。


(そうね…“マリエ”でいいわ)


 何のひねりもない頭文字取りだが、今のところはそれで十分だ。




   ◇ ◇ ◇




「お願いします!」


 アマリエは、書き終えた書類を提出した。


「内容を確認しますので、少々お待ちください」


 アマリエは緊張しながら、書類を読む受付嬢を見守る。


「はい、問題ありませんね」


「ほ、本当ですか! よかったぁ!」


 ほっ、と胸を撫で下ろすアマリエに、受付嬢は「ふふ」と微笑んだ。


「実は、ですね…ここだけの話ですよ?」


 受付嬢はそっと身を寄せてきた。


「この“紙”――あまり重要じゃないんです」


「え?」


 意味が分からず固まる、アマリエ。


「本当は名前さえ登録できれば大丈夫なんです。

ただ、最低限の読み書きができない方が依頼書を誤って受けてしまうことが多くって。それだと、私たちの仕事が増えるので、ちょっとした“読み書きテスト”なんです」

 

「な、なるほど…」


 緊張していた自分が恥ずかしくなる。


「では、冒険者タグを発行しますね」


 受付嬢は、台座に載った水晶をアマリエの前に置いた。


「手をかざして、お名前を言ってください」


「ア…じゃなくて!…マ、マリエです!」


 危うく本名を言いかけて、慌てて言い直す。


 水晶が―ぱっ、と光を放った。


「はい。もういいですよ」


 台座の切り込み部分から小さな金属プレートが押し出され、受付嬢が慣れた手つきで、工具で穴を開けチェーンを通す。


「こちらが冒険者の証です。依頼や報酬を受け取る際に必ず窓口に提示してください。

――再発行は出来ないので無くさないように注意してくださいね」


「分かりました」


 受け取ったタグには、『マリエ』の刻印。

 そして端には、透明な丸い石が埋め込まれていた。


「あの、この石は?」


「ああ、それは階級石(ランク・ストーン)と言って、冒険者の階級によって色が変わるんです」


「階級?」


「はい。冒険者にはランク付けがされているんです」


 受付嬢の説明を要約すると、

 階級はD~A、

 そして最高ランクのSがある。


 依頼にも同じくランクがあり、自分と同じか1つ下のランクの依頼が基本的に受けられる。


「一つ上のランクは受けることができません。たとえば――」


 受付嬢はにっこりと笑ったまま、さらっと告げる。


「スライムしか倒せないのに、ドラゴン級の討伐を受けたら即死ですよね?

そういう無茶を避けるための仕組みなんです。要は『身の丈に合った依頼を受けましょう』というですね!」


 ニコニコしながら、物騒なことを口にされ、アマリエは乾いた笑みしか出てこない。


「それと、依頼を達成すると昇格ポイントが貯まります。一定貯めると上のランクに昇級できるんですよ。

――ぜひ上級冒険者を目指してくださいね!」


「分かりました! 頑張ります!」


 アマリエは意気込んで、掲示板に向かおうとした、

 

 ――その瞬間。


「ま、待ってください!」


 受付嬢が、慌てて引き止めた。


「?」


「まず、新規冒険者は『鑑定』で初期の階級(ランク)を決めるんです。なので、あちらの窓口へお願いします」


「あっ…すみません!!」


 説明を最後まで聞かず突っ走てしまったことに気づき、アマリエは耳まで真っ赤になりながら、慌てて鑑定窓口の方へ向かった。

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