少女は行くよ、世直し旅(嘘)
しばらくは土曜日8時更新予定です。
どの世界にもいつの時代にも、女は男より下と見下すお馬鹿さんは多いけども。
け・ど・も!
ちょっと多すぎじゃね!?
神官長に襲われかけて、ハゲモゲの呪いを叫んだ後、神殿から逃げた私は速攻で立ち往生するハメになった。
ここどこやん(超切実)。
制服は目立つだろうからと、マントを剥ぎ取ってきてよかった。恐ろしや異世界。
「お金もないのにどうしたらいいのさぁ」
半泣きで呟いた時、ポケットにズシッと重みが増えた。のぞいたら金貨の入った袋だった。なぜ?
「てか、金貨って目立つじゃん。両替とかできんの? スリとか大丈夫なん?」
この辺有り得なさすぎて冷静だった私。
そしたら金貨が銀貨とか銅貨とかになった。マジか。
とりあえず、このお金で目立たない装備を整えた。ここでも「動きやすい服がいい」「可愛ければ尚良」とか、私的には愚痴なんだけど本気で声にしたものは大抵叶うこの状況に、気づかないわけがない。
私、本気で願う言葉を叶えられる。
つまり、言霊。
あー、聖女ってこれかー、と。理解したからなんだって話なんだけどね。
理解したと同時に叫んだ「自分の世界に帰りたい!」だけは叶わなかった。理不尽。
そんな訳で、今の私は「私を元の世界に帰してくれる人(物)」を探しながら街から街へと旅してる。
旅費その他もろもろは言霊で。贅沢はしてないから許してほしい。あと女神、マジで許すまじ。
女の一人旅は超危険な世界らしいので、常時認識阻害と防御と反射をコンボ。魔力って素晴らしい。
そんな感じで過ごして知る事実があった。
この世界に召喚されたその日に、私が心から叫んだ言葉は、立派な言霊になって悪を懲らしめているそうだ。
マジか。マジだ。
いやー、どこ行っても半分以上が天誅をくらってる事実。笑えないわー、ドン引き。
暴言暴力を受けた人達は、女性が多い。力のない男性も下に見られがちなので、痣だらけなんて人もいる。
そんな被害者の為のあの言霊だけど、実際あちこち歩いて見てみると、加害者は男性だけじゃないこともわかる。
力のある女性や、男性の威を借る強かな女性は、時に同性だけでなく異性をも見下すから。
なら、女性にもなにか罰を? でも、あれは私が被害者だから出た言霊だ。皆がポロリと口にする話を鵜呑みにしていいのか、判断は私にはできない。
それに、その為に警察組織のような自警団やら騎士団があるんだろうし。
うん。
「犯罪絶許」
たかが女子高生の私ができることは少ない。言霊に力が宿るからなんだと言うのか。偉そうになにかを言ってもやっても、理想論にしかならない。
この世界は、この世界を知って愛してる人々がなんとかすべきじゃん。
だから、私は祈るよ。
みんなが、平和で過ごせるようになるように。
そして思い出す家族の顔。母を溺愛する父に、ちょっと引きつった母。遠くからそれを超絶対零度な視線で突き刺す兄。我関せずな弟。……あれ、家族って?
でも。
「そろそろほんとに帰りたいなぁ」
しょぼんと呟いた時。
「結花ちゃん?」
奇跡ってあるんだなぁ。
続きます。