聖女とは
お久しぶりです。よろしくお願いします
「っ、ふっっざけんな! 無理矢理女をどうこうしようだなんて人間のクズはいらん! 禿げろモゲロ肥えやがれ!!」
「なっ!? あ、ぎゃあああ!!!!」
その日。
召喚により降臨した聖女の声が世界中に響き渡り、同時に少なくない男共の絶叫が各地で確認されたそうだ。
気づいたら私を組み敷いていた男が倒れていた。
泡吹いて白目で。キモい。
神官服とかいう、マントみたいなの重ね着してるみたいな男の、下半身が血まみれとかグロい状況だけど、女神サマの加護なのか匂いがしない分現実味がない。
多分、ていうか間違いなく私がやらかしたのだろう。
ならば、やることはひとつ。
戦略的撤退でも無罪主張でもなく、逃げ一択あるのみだ。
私はこの世界に拉致された。
日本のただの女子高生だった私は、ある日突然足元に現れた、光る輪(魔法陣とかいうの?)に拉致された。
そのまま異世界? に誘拐され、その後監禁。そしてキモ男登場。押し倒された。
松川結花17歳。
人生色んなことがあるものだけど、ちょっとないわー、と遠い目をしてみたよ。
そもそも、神官サマの言うことにゃー、私聖女? として召喚されたみたいなんだよね。聖女ってなんぞやと思うだろうそうだろう。
異世界に降り立った私の目の前には「お前を召喚してやった我々に感謝して仕えよ、帰れないのだから逆らうな」とふんぞり返る野郎共ときたもんだ。
帰れない? 帰せないもしくはその力がないだけだろうが。
なんで来てもらった立場の方が偉そうなんだ。理不尽。
偉そうに神官長と名乗る割に、力を感じない奴らなんか信用出来ないし、目覚める前に私の首に隷属の首輪を嵌めようとしたことでさらにマイナスだっつうの。
首輪は女神サマの加護に弾かれたそうな。女神サマまで怒らせてなにがしたいんだろうね。
まぁ、そんなわけで、私を国王に渡す前に味見しようとした神官にブチ切れた私の「禿げろモゲロ肥えろ」の呪文(最強だと思ってる)が炸裂したわけだ、うん。
後悔はしていない。しかし、範囲が大き過ぎたことは次回に持ち越しの課題だと思ってる。
神殿内部の男達の半数が倒れてるって、聖職者ってそんな邪な心持ちでなれるもんなの?
適当な服を拝借して、制服の上から羽織って神殿から出るけど、誰も追ってはこなかった。
手当てに忙しいもんね、わかるー。
さて、私は国王(こいつもいい人には思えない)に見つかる前に逃げるとしますか。
女神サマ、(会えるなら)後でちょっとシメる。
つづきます。