ギャルと女神
──時は遡り、天界にて
過労死し天に召されたケンドーの前には仁王立ちしたギャルがいた。じっと覗き込むギャルの長いまつ毛、ぱっちりとした大きな目と艶やかな唇にケンドーはドキっとしつつも、自分に何が起きてるかわからずオドオドしていた。
「うーわ! キャハハ! めっちゃ死んだ後みたいな顔してんじゃん! ウケるー」
死んだばかりのケンドーは、いきなりギャルに馬鹿にされた。動揺するケンドーは上手く頭が回らないでいた。
「え、は? 何だこれ、何処だここは?」
挙動不審のケンドーを見て、ギャルはお腹を抱えて笑っている。
「死んじゃったからー、とりま上げてこ? みたいなやつ」
ずいぶん軽いノリだなあと思わずケンドーは感心した。それよりも、俺は死んだのかとケンドーは自分の置かれている状況を理解し始め、少し落ち込んだ。
思えば、働きっぱなしで自分の時間なんて無かったなとか、いくら仕事をしても誰かに褒められるわけでもなく一体何の為に働いていたのかと、ケンドーはかつての人生について後悔した。
「俺が死んだのはわかったが、お前は誰で何の目的で俺の前にいるんだ?」
ケンドーはギャルに尋ねると、ギャルはとびっきりの笑顔でケンドーに答えた。……暫しの沈黙の後、ケンドーは思った。笑ってないで答えてくれよと。
「まあまあ、そんなに焦んな。あーしはケンちんのいた世界とは別の世界を管理してる女神なんよ。で、死んだ人間をたまにパクってあーしの世界に入れちゃってるって訳!」
説明をしてはくれてるようだが、無性にイラっとくるなとケンドーは思った。不機嫌なケンドーは突っかかる様に問いかけた。
「何でそんな事してるんだよ」
女神を名乗るギャルはやれやれといったポーズでまた話し始めた。
「あーしの世界がさあ、ちょーっと前からゲキやばになっちゃて、誰か助けてーって感じな訳よ」
ケンドーはまだ理解できない様子でいた。それを見たギャルは人差し指をピンとケンドーに向けて説明をする。
「だからー、期待値高そーなお兄さんに来てもらおうかなーって事!」
何故だか期待されている様子だったが、ケンドーは思い当たることも無いのでギャルに聞いてみた。
「別に俺には何の特技も無いし、助けれることなんて何も・・・」
自信の無さそうなケンドーにギャルは妙に高いテンションで話し始めた。
「死ぬまでずーっとマッサージしてたっしょ! 死ぬちょっと前のケンちんのこと、ここから見ててビビっときた訳! めっちゃ気持ち良さそーって! それで、あーしの世界の子達がさ、最近お疲れっぽいんだよ。何とかしたいなーって訳!」
褒められ慣れていないケンドーは納得のいかない様子だ。確かに俺は整体師として死ぬほど働いてはいたが、神に認められるほどうまくはないぞとケンドーは思った。
「まあ、そんなに自信ないなら、あーしで試してみてよ。期待外れなら元の世界の天国にでも送っちゃるから」
そこまで言われて引くわけにはいかないとケンドーは思い、女神相手にマッサージをする事となった。
「ほらほら、早く早くー」
うつ伏せになったギャル女神がケンドーを急かす。ケンドーは呼吸を整えて軽く手のストレッチをした。
「それでは、施術を始めよう」
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