動揺と興奮
ケンドーの指圧によって、神官がへたり込んでしまった。
気持ち良さそうにグッタリしている神官は、時折ピクピクと痙攣している。
「施術完了」
クールに決めるケンドーだったが、マリーは納得のいかない様子である。頬を赤くしながらも、必死に動揺を隠しつつマリーは言った。
「上手なんでしょうけどね、これが何の役に立つのかしら? 今から戦場にいくのよ?」
ごもっともである。
そんな会話はお構いなしに、先程までピクピクしていた神官がバッと起き上がり叫んだ。
「す、凄いですよ! 王女様! 凄いですよ!」
神官が飛びっきりの笑顔でマリーにパタパタと手を振り自身の身体に起こった変化を説明する。マリーは騒ぎ立てる神官にため息をつき、呆れ果てた様子だ。頭を抱えて、やれやれといった様子でマリーは神官の話を聞いていた。
「気持ちよかったんでしょ? 良かったわね」
吐き捨てる様にマリーは神官に言う。すると、すかさず神官がマリーにマッサージについて話をする。
「ちょーっとマッサージされただけで! 私のさっきまでの頭痛と胃もたれと肩こりと目眩と突き指が治ってるんですよ!」
病院行ってこいよとケンドーは思ったが口にはしなかった。
「うわああ! 10円ハゲも治ってるうう!!」
興奮冷めぬ神官が死刑台で騒いでいる。ケンドーとマリーは、可哀想な生き物を見る目で神官を見つめた。
「あれ? エミリア、あなたの能力値こんなに高かったかしら? というか……」
マリーが神官の顔をじっと覗き込む。
「な、なんですか王女様……そんなに見つめられると照れちゃいますよ……」
エミリアと呼ばれる神官の少女が頬を赤らめて、目を逸らす。暫しの沈黙の後、エミリアも自分の能力値を確かめ驚愕した。腕力、体力、魔力、状態異常耐性、ほぼ全てのステータスが異常に上昇していたのである。ケンドーのマッサージには、能力強化の効果があった。それも、どの魔法使いがかける強化魔法よりも強力なものだった。
「うわああ! こんなに可愛いくて、神様にも愛されてるのに! ステータスがこんなにパワーアップしちゃったら私どうなっちゃうんだろう!」
エミリアが嬉しそうにケンドーの周りをくるくる回っている。まるで子犬が初めて雪を見た時の様にはしゃいでいた。
頭は良くならなかったようだ。