妹系神官とマッサージ
一瞬で空気が張り詰めた。マリーは思わず息を呑む。
「あいつ、雰囲気が変わった……?」
ケンドーは神官の肩を撫で、そして腰に手をまわす。ひとまず座らせ姿勢を正した。神官も雰囲気の変わったケンドーに驚きを隠せない。ケンドーは神官の長く黄金に輝く髪を掻き分け、優しく腰を撫で始めた。
「ふぁあ……」
神官が声を漏らす。先程までのだらけた雰囲気とはまるで違う空気が場を支配する。
首筋から背中に、背中から腰にかけて、ゆっくりと指圧する。優しくも力強い指圧は、神官の肌に徐々に馴染んでいった。火照った身体を気遣う様にケンドーは神官の上着を脱がす。シスター服の下には薄いブルーベリー色のブラウスが一枚のみだった。
「ちょっ、ちょっと! えっちなのはダメよ!」
マリーが目を泳がせながら抗議した。トロンとした目をした神官を横目にケンドーが言った。
「施術中はお静かに」
ピシャリと言い放ったケンドーの言葉にマリーは言い返すことはできなかった。
気持ちよさそうに、恥じらいながらも体をうねる神官。汗でブラウスが肌につく。ケンドーは指圧に緩急を加え攻めていく。ゆっくりと優しく、撫でられる神官はリラックスした表情をしている。時折強く柔らかなところを刺激すると、神官は身を捩らせる。
「んん……」
意図せず漏れる吐息混じりの神官の声が静寂した死刑場に響いた。
何度か繰り返していると、神官はケンドーを物欲しそうに、潤んだ目で見つめた。側で見ているマリーはぐっと息を飲み、自身の頬が熱く紅潮しているのがわかったが、必死に周りに悟られまいと自分を落ち着かせようとした。
ケンドーは考えていた。順調だ。だが、この程度のマッサージでは死刑を免れるに足りない。これでは、ただのちょいエロマッサージだ。一呼吸置き、ケンドーはそっと神官の慎ましい胸を手で覆った。ふにゅんとした感触にそって指が跳ねる。
ブラウス越しの温もり、神官の鼓動がケンドーに伝わってくる。刻まれる一定のリズムからケンドーは次の一手を探る。
「はぁ……はぁ……」
ケンドーにとっても心地よいリズムが手を揺らす。どこか懐かしい感覚。切ない呼吸が、甘く香る吐息と共に場に残る。
ケンドーにかつての記憶は無い。だが、鍛錬を重ね死に至るまで積み重ねた整体師としての技術は、ケンドーの全神経が覚えていた。頭で考えずとも、指先は自在に動いていく。施術相手の快感を掘り当てる探知機の様に、快楽を与えるだけのマシンと化す。
「ここか……」
囁きと共にケンドーの指が神官のツボを刺激した。強さ、スピード、タイミング、その全てがケンドーを職人たらしめる。
「あぁん!」
神官の情けない喘ぎ声が死刑場にこだました。まさに、起死回生の一手である。
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