王女と死刑台
死刑台に立たされたケンドーの前にいたのは、王女マリーと神官の少女が一人、王女の従者である女兵士が一人いた。どうやらケンドーの有用性を測るために神官がケンドーの能力を見るというのだ。
この世界では魔法を使う事が一般的である様で、神職は他人の能力値や精神異常について測る魔法を備えている。この場で測られた能力値が戦争に役立ち、王女達に敵意がないことを示す事が出来れば死刑にはならなくて済む。ケンドーは祈るしかなかった。
「力を見せて」
すっとケンドーの懐に近づいた神官がケンドーの顎に手を添えて甘く囁いた。神官の少女特有のほんのりと淡い香りにケンドーはドキっとするも、緊張からか言葉は出ない。
神官とマリーにはケンドーの持つ体力や頭脳、そして魔力量等の能力が事細かくステータス値として見えるようだった。一通り上から順にステータス値に目を通すマリーと神官であったが、それを見るや否や、ため息を吐きながらマリーがそっぽを向く。
「はぁ……腕力も頭脳も、魔力さえも何も無いじゃない。使えないわ」
吐き捨てるように言うマリーを見て、結果は何となく分かってはいたが、死刑を免れることができないケンドーは再び絶望した。
マリーがスタスタと死刑台を後にし帰ろうとしたところ、ふと何かに気づいた神官が首を傾げながらケンドーのステータスを見つめ直す。
「王女様、ちょっと待ってください。なんだかステータス欄の下にメモ書きみたいなのがありますよ」
神官がケンドーのステータスにおかしな点を見つけた。
ケンドーには彼女達がどういうものが見えているのかはさっぱり分からなかったが、彼女達の言葉に集中した。再びマリーがケンドーのステータスを見る。
「光るもの有り……まずはお試しを……?」
マリーがケンドーのステータスを読み上げる。
「なにこれふざけているの? こんな能力値見たこと無いわ。ていうか、神託の能力開示で付箋が貼ってあるって意味が分からないわ」
もちろんケンドーも何のことかさっぱりわからなかった。だが神官が続けて言った言葉でケンドーに希望の光が刺すこととなる。
「これは神からの啓示かもしれません! お試しというものをしてもらいましょう! 敵意は無さそうですし、この国を救う手がかりがあるかもしれません!」
神官が興奮気味に騒ぎ立てている。そんな神の悪ふざけみたいなものに賭けなくてはならないのかと、ケンドーは肩を落とす。
それにしても、この国はどうやら随分と切羽詰まっているようだ。怪しきものをすぐに罰する体制といい、能力があれば素性も分からない者を戦場に行かせることといい、どこか焦っている様子。
条件がうまく重なれば、もしかしたら助かるかもとケンドーは少し安堵したが、すぐに不安に押し潰されてしまうこととなる。
ケンドーは何をすればいいのか全く分かっていなかったのだ。ケンドーは眉間にしわを寄せ呟く。
「いや、光るものって何だよ……」