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第8話 「思わぬ知らせ」

「それでは、次のニュースにまいります。昨日は全国で、新年度が始まり、全国で入学式が行われました....」


 ゆりねが出て行った後のリビングで、一人トーストをほおばりながら、俺は朝のニュースを見ていた。


 テレビに初々しい、小学生、中学生、高校生、大学生の新入生の映像が流れる。みんな、新たな学生生活の門出を想像してか嬉しそうな顔でテレビに映っている。うーん、不登校児には気分の悪い番組だ。チャンネルを変えよう。ついでにこのテレビ局にクレームの電話でも入れてやろうか。朝から不快な映像を流すなと。


 だが、チャネルを変えた先でも、「昨日は全国で新生活が始まる門出の一日でした....」などとまたもや不快な映像が流れてくる。これもダメだ。変えよう。


「昨日、兵庫トラガースと東京ギガントスの試合が行われました」


 おお、今度はスポーツの話題か。よかった、これなら不快な気持ちにならずに見れる。それに、俺の応援してる兵庫トラガースの話題だ。これは、楽しめるぞ。


「トラガースは4回まで打線がつながり3点の先制」


 おお、勝ってる勝ってる。


「しかし、7回裏満塁の場面で、ギガントスに手痛いホームラン」


 雲行きが怪しくなってきた。


「その後、8回にもツーランを浴び....」


 あかん、負ける。この番組も不快や。変えよう。


「それでは、今週一週間の天気を見ていきましょう。」


 おお、今度は天気予報か。これなら多分不快な気持ちにならない。さすがの俺も天気にはキレたりしない。それにお天気お姉さんもかわいい。やったぞ。


「その前に、今はいってきた速報をお伝えします」


 お天気お姉さんから、司会者っぽいおっさんに映像が切り替わった。何かあったのかな?


「つい先ほど、7時40分ごろ地下鉄銀座線渋谷行きの電車で魔術師によるテロが発生しました。テロリストは現在も車内に人質をとり立てこもっており現在警察が説得を試みています。」


 テロか。別に珍しいことではない。魔術師の中には、反社会的勢力に所属し生計を立てるようなものも多い。そう言う奴がこういった犯罪を犯すことはよくあることだ。


 ん?待てよ。地下鉄銀座線渋谷行きだって?昨日、俺たちが学院に行くために乗った電車だ。ということは、今日もゆりねはそれに乗っているはず。時間的にもテロが起きた電車に乗っているかもしれない。


 まあ、東京の地下鉄なんてラッシュ時は、それこそ1分毎ぐらいに電車が出発しているんだ。テロが起きた電車に乗り合わせていない可能性の方が高い。けど、まあ一応連絡だけしておこう。もしものことなんてないと思うが。


 そう思った俺は、スマホを取り出しゆりねに電話を掛ける。


テンテレテーン、テンテレテーン


 なぜか、デフォルトの着信音がリビングに鳴り響く。音のする方に目を向けると、あった、ゆりねのスマホだ。充電器に刺さったまま放置されている。スマホ忘れていきやがったな。


 困った、連絡とれない。どうしよう。


 これじゃあ無事かどうかわからない。探しに行こうか。でも、もし仮にテロに巻き込まれていないとしたら、地下鉄は止まってるにせよ別の交通手段で学院に登校している可能性が高い。そしたら、その場合は学校まで行って一応無事を確かめるか。あっ、でもそれだと学校に入らなきゃいけないし制服着ていく必要があるな。


 いや待て待て。心配しすぎじゃないか。別に巻き込まれたって決まったわけじゃないだろ。


「車両には通学中の学生も多数乗っており、SNS上には保護者からの不安の声が上がっています」


 惑わされるな、惑わされるな。ゆりねは巻き込まれていない。巻き込まれてなんていないんだ!

 そうだ、俺は今日は久しぶりに外に遊びに行くんだ。制服なんて着て学校に行ってる場合じゃないんだ。


 ようし、決めた。テレビを切ろう。こんなの偏向報道。フェイクニュースだ。信じるに値しない。テレビの報道を鵜呑みにするなんて馬鹿のすることだ。


プチッ


 テレビの電源を切る。こうなったら、さっさと私服に着替えて秋葉原へ出発だ。


 私服のジャージに着替えるために自室に戻ろうと俺はトーストを口に詰め込み席を立つ。


 廊下を歩き、焼け落ちて跡形もなくなった扉の残骸跡から俺は自室に入ろうとした。だが、寝起きの時は寝ぼけて気づかなかったのか、扉のすぐ横に置かれたあるものに気付いた。


『遼くんへ。もし、気が変わったら学校に来てください。あと、お弁当も作っておきましたのでお昼に食べてください。

P.S.鞄の中に今日必要な教科書類とかは全部入ってるので、学校に行くなら持って行って下さい。』


置手紙と弁当と制服と鞄が置かれていた。


「くそっ、こうなったら学校に行くしかないじゃないか」


 べ、別にゆりねが心配だから学校に行くんじゃない。あれだ、そう、同居人の機嫌を損ねない為に学校に行くのだ。そうだ、俺はゆりねに財布の紐を握られているのだ。ゆりねがその気になれば俺の小遣いはゼロになる。これは、いわば経済制裁を受けているようなもの。金のためには背に腹は代えられないのだ。


 そう自分に言い聞かせながら、俺は急いで制服に着替えた。








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