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[1]とある駆け出し冒険者の証言

 私は冒険者をしている者だ。

 といってもまだまだ駆け出しの未熟者。

 そんな未熟な私にも好きな人がいて、告白の決心がつかず片想いのままもう3年が経つ。

 私は、思い切ってプロポーズをする事に決めて全財産で指輪を買った。


 そこまでは・・・・・・、良かった。そこまでは・・・・・・。

 もう一週間だ。プロポーズどころか、声一つ掛けることも出来なくなっている。

 未熟なのは体だけではない。心すらも未熟であった事を私は思い知った。

 このままなんて御免だ。私は彼女が好きなんだ一緒になりたい、一緒にいる生活を夢に見るんだ。

 僅かな勇気、僅かな自信でもいい!それを自分に持てたら・・・・・・。

 私は未熟な自分にさよならをする為に武者修行をする事にした。


 これは、その武者修行で私が体験した奇妙な出来事である。


 武者修行の場所はレグニスという凄腕の冒険者が昔修行したと言われる森。

 冒険者は辞めたらしいが、今もレグニスさんは存命で宿を経営してるらしい。


「ここが、レグニスさんが修行した森か・・・・・・。ゴクリッ」


 私は唾を思わず飲み込んだ。

 自然のままに育った木々。当然手入れ等されている筈もない。

 どこから足を踏み入れればいいか、分からない程草が生い茂り行く手を阻んでいたんだ。

 時折聞こえる聞き覚えの無い鳥の鳴き声が私を容赦なく不安にさせた。


「ま、負けてたまるか!私は心も体も強くなってプロポーズをするんだ!」


 その彼女への思いが弱気になりそうな私に勇気をくれる。

 私は意を決してその森に足を踏み入れた。


 森の中は常に危険と隣りあわせだ。私は冒険者仲間の先輩から聞いた森での歩き方、戦い方、逃げ方を何度も何度も反芻する。

 森の中は森に住む生き物のテリトリーだ、いつどこで私を見つけ襲ってくるか分かったもんじゃない。

 とはいえ、森の中で目に付く木とその影すべてに気を配り、木の上まで気にしていては歩みが遅すぎて碌に進めずに日が暮れてしまう。

 大事なのは危険な猛獣が近くにいるかもと警戒し続ける事ではない。それはただのビビリで臆病になっているだけだ。何しに来たんだ?そんなに怖いならとっとと森から出て行け、と言われるらしい・・・・・・。

 大事なのは小さな痕跡を見つけだし、そこから目に見えない危険を推理して進む事だと言う。

 足跡はそいつの重さや数、歩幅から体長、糞や尿の匂いや木の傷から縄張りが。経験をつめば一目で何の生き物かまで分かるらしい・・・・・・。経験は場数、私もそこまでいきたいものだ。


 話は続くが、相手の体格やその数、縄張りの広さ、痕跡の古いか新しいか。そこまで分かると警戒のしどころという物が分かってきて、自然と歩みも楽になる。


 ただ、私はまだまだ素人だ。そううまくはいかない。歩みはやはり遅く、可愛い兎の足跡すら注意深く見てしまう。当然痕跡の一つや二つ見逃した物もあったと思う。


 野営すると決めていたポイントに着く頃には日は落ちて夜になっていた。

 町とは違う、明かりなど無い。森の中では星の光も当てにはならない。

 そんな中の野営の準備は恐ろしい。がら空きの背中から襲われてはひとたまりも無いからだ。

 出来れば明るいうちに準備をしたかった・・・・・・。

 私は運がいい。野営の準備を終えても魔獣一匹どころか、普通の獣にすら出会う事はなかった。

 私は焚き火の火を眺めながらポケットの中から一つの指輪を大事に大事に取り出した。


「駆け出しの冒険者である私の全財産・・・・・・。彼女は喜んでくれるだろうか・・・・・・」


 私は不安になったんだ。

 自分の手の上の銀で出来たシルバーリング。

 全財産で買ったとはいえ、駆け出しの冒険者の全財産なんて初めから高が知れてる。

 正直普通レベルの指輪だ。

 私の今の稼ぎだって良くはない。


「・・・・・・怖いな。プロポーズが怖い。まるで、首元に剣を突きつけられた様な怖さが、私をその場から動けなくし声すらも震えさせる。私は臆病だな。それでも、私は彼女が好きで、・・・・・・とてもじゃないがこの想いを変えられそうに無い、な」


 いつのまにか私は指輪を見つめていた。

 手の上の指輪を見ていると、その指輪の輪の中から彼女の笑顔を私は見てしまう。

 ただの妄想だ。ただの幻覚だ。

 私だってそんなのは分かっている。でも、だ。

 それを見た私の・・・・・・。この胸の内から湧き出る熱と感情は本物だ。

 私は指輪を握り締めて、大事に大事にポケットに戻した。


「明日は早めに起きないとな。おし!頑張ろう!!」


 私は両手で自分の頬を叩き弱気を追い出した。

 この武者修行で強くなるんだ!そう心に決めて。


「私はどうやらほんとに運が良いみたいだな」


 朝起きて、私が運が良いと思ったのは、夜中に獣や魔獣に襲われる事がなかったからだ。

 小さな物音や気配で起きれるよう冒険者の先輩から指導を受けて来たが、気配がまっったくしない為にぐっすり寝る事ができて体は万全の状態だった。

 ただ、今にして思えばこの時に異変を感じ取るべきだったのかもしれない・・・・・・。


 簡単な事だ、私がこの森を武者修行の場に選んだのは獰猛な獣や魔獣に遭遇しやすいのが理由だ。なのに一晩中何かの気配すらしない。

 それがすでに異常だったんだ。


 駆け出しの私はこんな簡単な事にも気が付かなかった。馬鹿者だ。


「まず、すべきはサバイバルの基本。水と食料の確保だな」


 私は少し体をほぐすように体を動かしてから水の調達に向かった。

 といっても、場所分かっていた。だからこそこの場を野営ポイントにしたのだ。

 つまり、水と食料問題はすぐに片付く。

 水場は他の動物にとっても大事な水源だ。それを押さえれば食料の確保にも自然と繋がる。


「水の確保はこれでよし。あとは簡単な罠をいくつか仕掛けて終わりだ。日暮れ前にはなにかしら罠にかかるだろう」


 私は水を汲み、野営地に戻りながら罠をいくつも仕掛けていく。

 その後は剣で素振りをし、野営地の周辺で修行になりそうな獣や魔獣を探した。

 だが、やはり獣や魔獣に遭遇する事はなかった。


「うーん。ツイてないな。まさかなーんにも遭遇しないとは・・・・・・。なんでだ?」


 私は持って来た携帯食を齧りながら罠の確認に向かった。

 しかし、そこで獲れたのは小型の兎一匹だけだった。


「せめて鹿くらい引っ掛かって欲しかったな。この兎だけじゃ、明日には食料が尽きてしまうな」


 武者修行の過程で倒した獣や魔獣も無駄にせず食料にしていくつもりでいた私は、食料を少なめに用意した。

 思い通りにいかない事が重なり、私は少しずつ追い詰められていくような焦りを覚えた。


「思い通りにいかないのも、また自然というやつか・・・・・・」


 私は仕方なく食べれる野草を探す事にした。といっても、知識は乏しいのだが。

 私が知っているのは、怪我や病気になった時に薬の代わりにする野草だ。いつどこで怪我をするか分からない冒険者には必要な知識だ。

 私はその野草を探した。怪我の為ではなくただの腹を満たす為だけに。


 腹を満たした後は筋トレに励んだ。

 なんでかっていうと、周辺で獣や魔獣を探した時だ、なぜか足跡の痕跡一つ見つける事ができなかったからだ。


「明日はもっと森の深い場所に行ってみよう・・・・・・。より危険な所だが、このままじゃ武者修行にならないしな」


 私は馬鹿だ。

 いくら修行にならないからって自分では対処できない場所に行こうとしてたのだから。

 もし、それで死んだら告白どころじゃない。想いを伝えられぬまま終わり、悔しさと虚しさと切ないさが私を後悔させるだろう。

 彼女は可愛い。良い所もたくさんだ。私が死ねば、いずれ私でない誰かが彼女の隣に立つことになる・・・・・・。それは最悪だ・・・・・・。


 私はもう少し考えるべきだったんだ。


「まさかここまでなんの動物にも遭わないとはな・・・・・・」


 私は次の日、ついに向かってしまったのだ。

 普通なら避けて当然のさらに森の奥に・・・・・・。


 森は想像よりもずっと深かった。

 大きな木々とその葉が太陽を遮り、昼だというのにまるで夜を思わせる森。


「何の鳴き声も聞こえない・・・・・・。獣や魔獣ではなく、亡霊や悪魔が出てきそうだ・・・・・・」


 耳を済ませても何も聞こえない。踏んだ枯葉の音すら大きく聞えてしまうほど、何もないのが恐ろしい。つい、妄想が先走り恐怖を感じてしまう。


 ここはそんな場所だった・・・・・・。


 思わず足が震えた。武者震いというやつだろう。

 私は、怖さに負けるな!私は強くなる為にここに来たんだ!そしてプロポーズをするんだ!!そう自分に言い聞かせた。

 彼女を思うと勇気が出た。服の上から全財産の指輪に手を置くと手に力が入った。


「行こう!!」


 私は踏み出してしまった。危険な森のその奥へ。


「この足跡は・・・・・・。まさかグロウウルフ?」


 グロウウルフは魔獣に属するモンスターだ。シルエットはまんま大型の狼。ただ、成長するにしたがい体の筋肉が異常に盛り上がり、毛は抜け落ちていく。

 全身の毛を無くすまで成長したグロウウルフはバーサクウルフと呼ばれ、熟練の冒険者でも4~5人のチームを組んで倒すような危険な魔獣だ。


「だ、大丈夫だ。落ち着くんだ私。こ、これはまだ若い・・・・・・、そのはずだ」


 駆け出しの冒険者が一人でバーサクウルフを相手にする等とんでもない。だが、若いグロウウルフならまだいける。私はそう考えて進んだ。


 私は馬鹿だ・・・・・・。


「やっぱりだ。まだ若い!まだ小指程度しか毛が抜けてないじゃないか!これならいける!」


 私は若いグロウウルフを追い、ついに魔獣に遭遇した。

 若いとはいえグロウウルフは駆け出しが相手にするには危ない相手だ。素早い動きと鋭い爪に鋭い牙、体重だって80kgはある。


「私をそこらの駆け出しと思うなよ!これでも、毎日訓練をしてるんだからな!」


 私は他の駆け出し冒険者と比べれば優秀と言えるくらいの実力はあった。

 今にして思えば、それは驕りでしかなかったように思う。


「グオォォ!」


 私は剣を抜き正面に構える。

 グロウウルフは私よりも早くパワーもある。体当たり一つで私は吹っ飛ばされ、そのまま上にでも乗られれば押さえ込まれ終わるだろう。

 正面からぶつかる訳にはいかない。私の狙いは相手の最初の攻撃を避けてあの太い首を切り裂く事だ。


「グォォォ・・・・・・」


 グロウウルフはうなり声を上げ続ける。だが、警戒しているのか私に襲いかかる気配がなかった。

 私は内心焦る。

 自分より力も早さも勝る相手に攻めに行く戦い方は苦手だった。

 先輩の冒険者との手合わせでは『お前は自分から攻めない方がいい。攻めと守りの切り替えの判断が遅すぎる』と言われた。

 私から攻めにいき相手が反撃に出た時の対処が致命的に遅いという事らしい。

 私の基本は相手の攻撃をかわして反撃でるスタイルでそれが得意だった。


「グロウウルフ相手に付け焼刃以下の攻めをするわけにもいかないし・・・・・・。クソッ!」


 私の焦りは内心から外に溢れ出しそうになっていた。我慢の出来なさも経験の浅さが要因だろう。


「グォッ!!」


 グロウウルフは痺れを切らしたのか、突然唸るのを止めてどこかへ行ってしまった。


「あー!逃げられた!これじゃ修行にならないじゃないか!!」


 私は甘かった。グロウウルフとの睨み合いで高まっていた緊張が解けて油断してしまっていた。

 グロウウルフは逃げ出した。その判断は間違っていない。


 だが、グロウウルフが逃げるという判断に追い込んだのは私ではなかった。


 ブンッッ!!


 何かが鈍い音を立てながら空を切る。


「うがっ!!!!」


 私はその何かに吹っ飛ばされた。

 その時口の中を自分の歯で切ったのだろう、口の中に鉄の錆びのような味が広がった。

 たった一撃、それで私は吹っ飛ばされた。そのたった一撃で体は重く感じられ、うまく動かせなくなっていた。

 無意識に体が震えた。今度は武者震いなんかじゃない。正真正銘の恐怖だ。


「グルガァァァァ!!」


 辺りに響いたその雄叫び。私はその咆哮の方に目を向けたのだ。

 そして見た。獅子の頭にヤギの角だ。それに虎のような体。そしてその尾は蛇だった・・・・・・。


「キ、キマイラ・・・・・・だと・・・・・・」


 私は死を確信した。

 キマイラは数こそ多くないが、その危険度はS~Eの6段階評価では上から2番目のA級だ。

 ベテラン冒険者のチームが複数集まって倒すようなバケモンだ。

 この森にキマイラがいるなんて初耳だった。だが、そんな事は今更どうしようもない言い訳だ。


「私はここで食われるのか・・・・・・」


 嫌だ!私にはやり残した事がある!

 嫌だ!私にはまた会いたい人がいる!

 嫌だ!私には・・・・・・。


「プロポーズをしたい人がいるんだ!!」


 私は無茶だと理解しつつも、生きる望みを捨てたくなくて震える手でポケットに手を伸ばした。

 何度も私に勇気と力をくれた、愛する人の為の指輪だ。

 こんな窮地でも死ぬなと言ってくれるかのごとく、心と体に熱を与えてくれる。

 すごい指輪だ。お金をすべて使ってしまったが、こんな時でも私に力をくれる。もう、使ったお金以上の働きをしてくれただろう。

 私は弱々しくも立ち上がる事が出来た。

 みっともなかったが、敵に背を向け弱々しくも私は逃げる。

 逃げる私は自分で気が付かない。


 私の目からは涙が流れていた事に・・・・・・。


 ブンッッ!!


 まただ、あの低い空を切る音だ。

 どうやらキマイラは私を逃がす気は無いらしかった。

 私は咄嗟に横に倒れ込むように避けた。

 ギリギリだ。上から叩きつけようとしたのだろう、私の足元には太く大きい蛇の胴体が横たわっていた。


「クソッ!!」


 やけくそだった。私は剣をその蛇に投げつけたが、蛇が纏うは強靭な鱗。ただの剣では傷一つつかなかった。


「グルガァァ」


 まるで埃でも掃くように蛇が動き、まるで箒に掃かれる埃のごとく私は地面を転がった。

 ここまでだった。まるで歯が立たない。逃げる事も叶わない。

 私の愛する人への指輪は転がり落ちていた。


 無念だ。


 彼女を幸せにしたかった。彼女と幸せになりたかった。

 彼女の隣に私でない誰かが立つと思うと悔しさと虚しさと切なさが私を苦しめる。


 こんな所来るんじゃなかった。もっと早くにプロポーズをするべきだった。

 やはり私は馬鹿だったんだ!


「ちくしょう!!!!!!」


 私は吠えた。負け犬の遠吠えだ。

 蛇の頭が動き倒れる私を睨んだ。きっと私を飲み込むつもりだったのだろう。


「グッグルゥ・・・・・・」


 キマイラが動揺するかのような声を上げた。何かが変だ。

 キマイラの蛇も連動するように私を見ながら離れていく。

 私は訳が分からなかった。

 そしてキマイラは立ち去った。


 だが、喜んでもいられない。私はボロボロだ。思うように体が動かない。

 このままでは他の魔獣の餌になるだけだろう。

 私は祈るように目の前に落ちてしまっていた、愛する人への指輪で私に勇気と力をくれた指輪を掴んで意識を失った。


「ここは・・・・・・」


 私が次に目を覚ましたのは、私の野営地だった。


「あ、目を覚ましたんだ?」

「き、君は?」

「んー?僕は・・・・・・。そうだな勇者さんの追っかけかな?」

「お、追っかけ?」


 おかしな事を言う子供だった。だって勇者が現れたなんて話は聞いた事がない、勇者が現れたら大騒ぎだろう?耳に入らない訳はないのだから。


「でも、珍しいねー。こんな危ない所にまでくるなんてさー。何で?」

「そ、そういう君は?」

「僕は勇者さんを探しにだね」

「ここは獣や魔獣の住処だよ?いるとは思えないが・・・・・・」

「それ確めたの?」

「た、確める?」

「そうさ!その獣や魔獣の中にさ勇者がいるかもしれないじゃないか!!僕が知るラノベにはそういう話しがあるんだよ!だから確めに来たんだ!だって確めないと分からないしさ!あはっ、あはははははははははっ!!」

「ら、らのべ?」


 私はその子供を僅かながら怖いと思った。


「だから確めたんだ。この指輪でね」


 それは銀色の指輪だった。

 私は急にある物を思い出し、自分の握られたままの右手を開き安堵した。


「へぇ。この指輪に少し似てるね。でもちょっと小さいかな?女性用?」

「あ、ああ。私の好きな人に渡すためのね・・・・・・」

「いいね・・・・・・。僕も世の中が平和だったらそういう人生を送れたんだろうな。憧れるよ」


 その子供は『こう、ボンキュな嫁を・・・・・・』と言っていた。

 気持ちは分かる。私も昔はそうだったからね。


 私はこうして九死に一生を得た。

 キマイラに遭遇し生きる事を諦めていたら、間違いなく死んでいただろう。私に生きるきっかけをくれた愛する彼女と、この銀の指輪・・・・・・。それと、あの子供に私は感謝をした。


「あ、そうだ。忘れるところだった。悪いけど手をちょっと貸してくれない?」


 別れ際に子供がそんな事を言って来た。私は恐る恐る右手を差し出し子供は慣れた手つきで銀色の指輪を私の手に嵌めたり外したりして、飽きたかのように『ありがと、もういいよ』と言って私の右手を解放してくれた。


 これが、武者修行で私の身に起きた奇妙な出来事である。

 ほんとに、なぜあのキマイラは立ち去ったのか未だに不思議だ。


 私はその後、好きだった彼女にプロポーズをしに行った。

 もう迷いはなかった。死ぬ思いをして私は学んだんだ。

 告白するのには勇気もいるし、とても怖いものだ。だが、告白も出来ずに死んでしまうのはもっと怖いんだと。


「あなたが好きです。私と一緒になってください!」

「うれしい!!」


 私の言葉を受けて彼女はそう言ってくれました。でも、一番うれしいのは私だ。

 この嬉しい気持ちを、これからもっと時間を懸けて彼女に返していこうと私は思う。

 そして彼女に指輪を出し差し出した。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」


 彼女は銀の指輪を見るなり左手で叩き落とした。


「えっ?えええええええええええええええ!!!!!!!!」


 私は何が起こったか分からなかった。

 目の前で起こった出来事が不思議でならない。

 それこそ立ち去ったあのキマイラレベルで・・・・・・。


 一応告白は成功し、指輪も別のを用意する事で落ち着いた。

 指輪の価値は多少下がってしまたったけれども。


「そういや、あのグロウウルフのは小指だけ毛が無かったが、そんな抜け方はおかしいような・・・・・・」


 この時の私はまだ知らなかったのだ。指輪の悪魔の噂を・・・・・・。

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