呪いのベッド
「師長、有りました。この部屋です!」
何時も日中世話をしてくれる看護師さんの慌てた声で目が覚めた。
「なになに?」
「うっせーな」
四人部屋に仲良く入院していた悪友二人も目を覚ましたようだ。
「「「呪いのベッド?」」」
長い坂道でチキンレースをしたあげく、坂下に落ちて、仲良く頭を打って倒れてるところを運ばれたバカ三人の声が揃った。
「ええ、このベッドで寝ると衰弱するの。絶対、ふざけたりして乗っちゃダメよ」
メッと何時もの若い看護師さんが俺達に注意した。
「捨てても戻ってくるし、壊そうとするといつの間にか他の部屋のベッドと入れ違うのよねぇ」
おばちゃんの看護師長さんがため息をつく。
「まあ、この上に横にならない限り大丈夫だから、少し我慢してね」
昔からなんとかしようとしたけどお手上げよと看護師さん二人は部屋を出ていった。
「呪いのベッドだってよ」
コウジが俺の脇腹をつつく。
「呪い? この21世紀に?」
眼鏡をかけ直したマナブが鼻で笑う。
乗ってみろよ、嫌だよとか話しているうちに興味も薄れて俺達はゲームや漫画で暇を潰した。
頭を打ってるので検査入院だ。一週間後には退院できるのだからワザワザバカな事をする必要はない。
その夜。
ギッギッギッギッと言うリズミカルな音で目が覚めた。
どうやら呪いのベッドから音がしているようだ。
隠れて見たエロ画像を思い出して俺は体の一部が熱くなるのを感じた。
「マナブ君何で? どうして!」
次の日も看護師さんの声で目が覚めた。
呪いのベッドの上に誰か寝ている。
マナブだ! マナブが痩けた頬で幸せそうに寝ている。
「オクムラさん! 移すわよ急いで!」
おばちゃん看護師さんと若い看護師さんがヒョイっとマナブをストレッチャーに移して運んでいく。
「マナブはどうなったんですか?」
コウジが心配そうに聞く。
「大丈夫だから。あのベッドは人を消耗させるけど死んだ人はいないわ」
オクムラさんが俺達にマナブの様子を教えてくれた。
「それより昨日の夜おかしな事なかった?」
若い看護師さんに聞かれて俺達は顔が赤くなった。
「いや」「別に」
俺達は顔を見合わせて口ごもった。
「あ~もう。みんなそう言うのよね。 絶対に乗っちゃダメよ!」
念を押してオクムラさんは部屋を出ていった。
フワリ
何かが動いた気配で俺は目が覚めた。
呪いのベッド。いつの間にかベッド回りのカーテンが閉まっていて中の様子がシルエットになっている。
男が乗られている。
リズミカルに動く影を見つめていたらいつの間にか寝ていた。
「コウジ君! 君まで!」
オクムラさんの叫び声で目が覚めた。
コウジが、コウジが呪いのベッドの上で干からびてる!
「急げ!ICUだ!」
男の看護師さんがコウジをストレッチャーに移して運んでいく。
「何で寝るの? 昨日の夜何か気がつかなかった?」
おばちゃん看護師さんと若い看護師さんが俺につめよってきたが「知らない」とだけいって首を振った。
「今日はここで寝て」
おばちゃん看護師さんが俺をちょっと豪華な部屋に連れてきてくれた。
個室というのか一人部屋だった。
「今日は犠牲者が出ないといいけど」
師長さんはため息をついて俺を一人にした。
夜目が覚めた。
ベッドが二つになっていた。
へこんでいる。
誰も寝てないのに。
たわわな肉体を感じさせる形に。
ちょっとだけ。
寝転ばなければ・・・
俺は隣のベッドに手を