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【小説】オリジナルの小説っぽいやつ

彼らはいかにして封印された魔人に出会ったか

魔人に出会う話です

今まで書いた話

https://ncode.syosetu.com/s7533e/

私は眠るのが好きだ。

その好きさと言ったら右に出るものはいないと自負している。

夜布団で熟睡するのが好きだ。うたたねが好きだ。昼寝も大好きである。

そんな私だから会社の面接を受けるときにも睡眠のすばらしさを滔々と説いた。

眠るときのベッドのサイズに始まり枕の高さの調節のところは自分でも関心の出来だったと考えている。

ベッドのボンネルコイルやポケットコイルといったスプリングの種類の説明に差し掛かったところで時間が来てしまったのが残念極まれる。

あの時の面接官の笑顔を忘れることはないだろう

少し口が苦笑いのように見えたのは気のせいだと思う。

しかしながら、なぜか私は就職できなかった。

おそらく私の知識が高尚すぎて社畜としてコントロールできる気がしなかったのかもしれない。

そんな私だが仕事もせずに惰眠をむさぼることは許されない。

正直、野宿で寝るのも公園のベンチで寝るのも嫌いではないのだが、もっと快適な眠りを追求したいという欲求も高かったからだ。

睡眠も突き詰めれば金がかかる。

いやな世の中である。

しょうがないので起業することにした。

もちろん寝具の会社だ。

コンセプトは”究極の眠り”である。

私はよく働いたと思う。

何せ一日12時間の貴重な睡眠時間を10時間に削り、それ以外はすべて仕事に費やしたのだ。

振興の寝具メーカーとしては異常なほど私の会社は大きくなった。

金も時間もあまり出したころ、私はある人物と出会った。

彼の名前はDr.マッドレス。

私と同じく究極の眠りを追求する者である。

彼は言った。

「君の会社は究極の眠りを目指しているらしいが君自身は本当にそこに向かっているのかね?」

雷に撃たれた思いだった。

確かに会社は究極の眠りをもたらすべく様々な人たちに寝具を提供している。

しかし私自身はどうか?

初めは貴重な睡眠時間は2時間も減った。

寝坊しないためにジリジリと不快な音を立てる目覚ましをベッドのそばに置いた。

気づけば妻も子供もいる。

家族サービスと称した睡眠時間も仕事時間も削る行為も必要だ。

気づけば睡眠時間はさらに削られ8時間となっていた。

私は膝から崩れ落ちた。

「私は、私は睡眠を裏切ってしまった・・・」

私は絶望に満ちていた。

「いつの間にかほかにも素晴らしいことがあると自分に言い聞かせて生きてきた」

Dr.マッドレスは私の肩に手を置いて慰めた。

「私は今からでも究極の眠りにたどり着けるだろうか?」

「もちろんだ。さあここにサインを」

「この書類は?」

「君を究極の眠りにいざなうには多少金がかかる、その憂いを断つための書類だ」

「なんだそんなことか」

私は一瞬騙されるのではと疑った自分を恥じた。

会社を経営するうちに疑り深くなってしまったものだ。

私がさらさらとサインをしているときにDr.マッドレスが怪しげな笑いをしたような気がするが気のせいだろう。

「さあこれでいいだろう、究極の眠りに私を導いてくれ」

「もちろんだとも君の願いは必ず叶えて見せる」

彼はそうやって不敵に笑うのであった。


あくる日、私が会社で仕事をしていると急に彼が現れこう言った。

「仕事は楽しいか?」

「楽しくなんてないさ。しかしこの仕事をこなすことで私はこの後来る快適な睡眠を得ることができる」

「その仕事は本当に睡眠の糧となっているのか?」

「もちろんそのはずだ。寝具を買う金にもなるし疲れは睡眠の適度なスパイスだ」

「本当にそう思っているのか?」

「本当にとは?」

「寝具をそろえる金などすでに山ほど持っているはずだろう?」

私はハッとさせられた。

「それに疲れ方も肉体を使った疲れと違い精神的なものだ、最近夜中に急に目が覚めることは?」

「心当たりがある・・・」

「それもそのはずだ、精神的な疲れは睡眠のスパイスどころか毒薬だ」

私はわなわなと震えた。

「私がしてきたことはいったい・・・」

「大丈夫すぐに問題なくなる」

「どういうことだ?」

「君は今から世間から隔絶された究極の睡眠の国に招待されるということだ」

そう言うが早いか彼が急にポケットから出したスプレーを吹きかけてきた。

「何を・・・」

「なに、君を究極の眠りに招待しようと思ってね」

そう聞こえたところから私の記憶がない。


次に目を覚ました時私は適度に狭い部屋のベッドの上にいた。

「ここはいったい・・・」

「君を究極の眠りにいざなう第一ステップだ」

「どういう事だ?」

「君を快適な睡眠環境にお連れしたまでだ」

そういうとDr.マッドレスは窓を開けた。

外は森のようだ。

「君を究極の眠りにいざなうため世間から隔絶させる!」

「そんな!確かに究極の眠りは欲しいが家族は!仕事はどうなる!?」

「どちらも究極の眠りを邪魔するものだ・・・」

「ばかな!」

確かに究極の眠りは待ち遠しい、しかしすべてを捨てることなど・・・

「君はまた究極の眠りに向ける情熱はその程度のものだったのかね?」

二者択一だよと彼は言った。

私はまだ文句を言っていたが心はすでに傾き始めていた。

その理由は―

「ところで、このベッドは何なんだ」

「寝心地はどうだったかね?」

Dr.マッドレスは不敵に笑った。

「快適・・・だった・・・」

私は悔しくて顔を背けながら言った。

「そうだろうそうだろう!」

彼は手をパンパンとならせながら会心の笑みを浮かべた。

「究極の眠りを提供する道具の一つ!バックトゥスリープベッドだ!」

「私が今まで試してきたどれよりも寝心地が良かった・・・」

「当たり前だ。私が開発したのだからな」

「どうだね?ここで暮らしたくなったかね?」

それは魅惑的な誘惑だった。

しかし、妻は・・・子供は・・・

そして部下たちも・・・

「悩んでいるようだな・・・だがそれでも体は正直なものだ」

「なっ!それはどういう!?」

「ではなぜベッドにまた戻ろうとしているのだね!!!」

ああ、なんという事だろうか。

私はすべてを悩んでいるように思えて全然睡眠欲に勝てていないのだ。

「君はここで究極の眠りにつくのだ」

「そんなほかのすべては!」

「大丈夫あとは私がうまくやっておく、それに・・・」

後の言葉は覚えていない、結局、私は睡眠にあらがえなかったのだ。


しかし不安とは裏腹にそれからの日々は快適なものだった。

食事は三食適度な量が提供され、部屋には軽く運動するのにうってつけなトレーニング器具が設置してある。

暇になればこれまた絶妙なチョイスをされた本が用意されており、それをベッドで寝転がりながら読んでいるうちにいつの間にか寝てしまう。

そんな自堕落としか言えない生活をし続けて、もう元の生活には戻れない体にされてしまったころにDr.マッドレスはまた部屋を訪ねてきた。

「私にまだ何か用か?」

「なに、ちょっと気にかかることがあってね」

こんな寝て食べることしかできない体にしておいていったい次はどのようなことをさせるつもりなのだろうか?

私は不安と期待で胸が張り裂けそうだった。

「君には隠し財産がある」

私は今までぼんやりしていた頭が急に覚める気がした。

「なぜそのことを!」

「『ヒュプノスランド計画』こんな巨大な計画が裏で動いていたとはね、私も驚いたよ」

「それは私が生涯をかけてやり遂げようと・・・」

「その必要はない!その資金は我々が有効活用してやる!」

「貴様、やはり私の財産が目当てだったのだな!」

私は裏切られたのだ。

「何をいまさら・・・」

「たとえ何があろうともあの計画をしゃべったりするものか!」

「強情なやつめ、だがなこちらも何の用意もしてないと思ったのか」

「どういうことだ」

「なに、ついてくればわかる」

急に扉から現れた屈強な男2人組が現れた。

「表に車が用意してある、お披露目は着いてからだ」

私はなすすべなくバックトゥスリープベッドから引き釣り出された。


次に用意されていたのは今までとは打って変わって劣悪な環境だった。

まずベッドが粗末だ。

公園のベンチと大して変わらないような作り。

そして何よりひどいのが・・・

「このベッドは自動収納機能付きでな、そこのPCである条件をクリアしなければ寝ることができないのだよ」

「これは・・・ネットゲーム・・・」

「MMORPGと呼びたまえ」

「こんな睡眠の妨げになるものを私にやれというのか!」

「12時間ほどプレイしなければベッドで寝ることするらできないぞ」

「それとも、その冷たいリノリウムの床で寝る気かね?」

「くっ殺せ」

「なあに殺しはしないさ、それに・・・」

「なんだ?」

「計画を話せばすぐに開放してやるさ」

「裏切者なんかに計画を話すものか!」

ならば一生底にいるといい、そういって部屋の扉は閉ざされた。


それから約1年だが私は屈しなかった。

たまに見せるDr.マッドレスもだんだんとイラついた態度を見せるようになってきた。

「まさか君がここまで強情だったとはね」

「貴様らのようなものにはわからないのさ」

私はキーボードを操作しながら答えた。

「しかしね、このままでは困るのだよ」

「我は一向にかまわないが?」

この粗末なベッドも味があっていいそう思ってきたのだ。

ネットゲームも結構楽しんでやっている。

「我?まあいい、そう言うと思って次のものを用意したよ」

「なに!」

「ここはある研究所とつながっていてね」

彼は衰弱私を部屋から連れ出した。

(ちょうどレアアイテムが出たところだったのに・・・)

「ここだよ」

彼が案内したのは小さなシェルターのようなものだった。

「これはな、あのバックトゥスリープベッドを超える傑作だ」

私の心臓がドクンと跳ね上がる。

「この場所は経年劣化と無縁でな、さらに部屋の設備もすごいぞ」

Dr.マッドレスは部屋の中の設備を説明し始めた。

食事がいらなくなる薬や、体の経年劣化を防ぐ薬装置など長々と説明されるが専門用語が多すぎて頭に入ってこない。

その代わり気になったものが部屋の中央にあった。

バックトゥスリープベッドの改良版、今まで適度に起きなければいけないという問題と呼べるかも怪しい問題を解消したという代物だ。

「ここで眠るとさぞや気持ちいいだろうなぁ」

Dr.マッドレスは唐突につぶやいた。

「まさか・・・」

「そう、これが拷問だよ」

「これで寝た実験体は1か月もの間安眠をむさぼり、私たちが無理やり起こしたときはこういったよ」

「「夢のようだった」とね」

ぐう

「君がちょっと計画のことを漏らすだけでいいのだ」

そんなこと・・・

「あの部屋に戻りたいのかい?」

天国から地獄に、この悪魔め・・・

「さあ、今夜の寝床はどっちかな?」

私は・・・屈した。

すべてを話し、そして真実だと確認が取れるとようやく私はベットに触ることを許された。

私は、すべてを失ってしまった。

しかし、これで究極の眠りが。。。


私は寝た、唯々寝た。

いったいどれだけの年月が経ったのかわからないが浅く目が覚めることもなくただただ夢を見ていた。


そして―――――――――――――――――――――――――――――

部屋の外から何かをぶつける音がする。

私は騒音のあまり久々に目を開けることになった。

いったい何事だろうか?

部屋の外からは”遺跡””宝”などの断片的な言葉が聞こえる。


そして音はだんだんと近くなりついに部屋に穴が開いた。

なんという事だ私の究極の睡眠のへが。

続けて入ってきた人が欲望に満ちた目を向けてで私を見た。

私はあまりの怒りに叫んだ。


「我が究極の眠りを妨げるものはだれだ!」


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