エピローグⅡ
本日2話目です。
こういうのも含めて不定期になりますので、御容赦を……
またしても短めです。
ふと、僕は考える。
もしもマスターに、彼らに僕が知る真実を話せばどうなるだろうか、と。
まぁ、それをしたら僕は存在を消されてしまうからしないけれどね。
……ほんと、どういう原理なのか、僕でもわからないよ。
それにマモンとレヴィアはどうやら覚えていないみたいだしね。
やっぱり自力で封印を破ることが条件だと見て良さそうだね。
となれば、恐らく覚えているのは『傲慢』と『憤怒』は確実、『色欲』は……あぁ、あれは覚えていても絶対に漏らさないか。
『怠惰』はそもそも封印が弱くなっているのがわかっても破ろうとはしないだろうし。
……てことは、いずれ会うことになるのかぁ。
出来れば『傲慢』か『憤怒』の2人と正面で戦うのだけは遠慮したいな。
彼らは、危険すぎる。
特に『傲慢』だけは、今のマスターと他の2人でも話にならないはずだ。
そして、それをわかっているだろうから、『傲慢』と敵対することは、将来的に見て確実……か。
……どうにかして貰いたいけれど、僕は今こんな感じだし、自分の力を貸すくらいのことしか出来ない。
ならいっそ、運命とやらに任せてみるとしようか。
彼だって勇者で、環を抜け出した唯一の存在な訳だし、きっと面白いことになる。
どう転ぶかまではわからないけどね、それは僕の責任問題じゃないし、きっと許してくれるさ。
◇
――帝国領。
皇帝を頂点として、軍事力を武器に勢力を確保する国、ヴィルヴァーグ帝国。
作物がまともに育たない不毛の大地で生きる彼らの社会は、狂気を感じる程の実力至上世界だ。
力があれば子供でも相応の待遇を約束され、また力を持たなければ皇帝の子息であってもゴミのように投げ捨てられる過酷な世界。
そんな帝国軍において、前代未聞の速さで昇進を果たした3人組がいた。
「魔族討伐軍の派遣はどうなっている?」
第2部隊の隊長である彼は、執務室の質の良い座椅子に腰掛けて、書類仕事をしながらその部屋の他二人へと問う。
紺色に近い色の軍服の胸元には、隊長の証である金と赤の十字架のバッチを付けて、アッシュグレーのオールバックで、目が悪いのか縁のない眼鏡をかけた美丈夫――ジーヴェルク・ナハステアだ。
「あー、それまだジジイ共は渋ってるみたいだよ。ほんと頭硬いよね」
「……その言葉遣いは今は止めろ、バーグ」
「はーい」
ジーヴェルクの言葉にお気楽な調子で返事を返す少年は、バーグ・ナハステア。
ジーヴェルクの息子であるが、彼もまた帝国軍の軍人であり、二人いる第2部隊の副隊長の一人だ。
「それより、私、また奴隷を壊しちゃったの。買ってくれない?お父さん?」
「…………マーハ、お前三日前に奴隷を買ったばかりだろ」
「そうだけど、あんまりに可愛くて手が止まらなかったの」
仕方ないでしょと言わんばかりに薄く笑い、彼女はテーブルに置かれた菓子へと手を伸ばす。
彼女もジーヴェルクの娘であり、第2部隊の副隊長の一人、マーハ・ナハステア。
この三人は、現帝国軍における最高戦力の1つであり、新進気鋭の勢力となっていた。
「まあいい。それよりも、さっきとは別件の魔族領付近の街への戦力の補充だが、どっちか行く気はないか?」
「それって殺す仕事? それ以外?」
「一応内容としては魔物の撃退となっているが、それ以外もあるだろうな」
「それは面倒な仕事だね」
「……魔物なんて可愛くないから、私は嫌いよ」
「……そう言うと思っていた。が、ご褒美をやると言ったらどうだ?」
ご褒美という単語がジーヴェルクから出た途端に、二人の目の色が豹変した。
「それ、なんでも?」
「保証は出来ないが、俺が用意出来るものなら用意するぞ」
「じゃ、じゃあ、可愛い女の子も?」
「それくらいなら安いもんだ」
「……僕、やる」
「私も!」
各々、余程欲しいものがあるのだろう。
……些か趣味が悪いというのは職業柄仕方ないかもしれないが、それはそれだ。
普段はそう簡単に物で釣るようなことはしないが、何せ、ジーヴェルクにもやることが出来てしまっていたのだ。
「なら、それはお前達に任せる。その間に、俺は上からの仕事と、本業の方に出てくる」
「ん? 何か仕事が入ってたの?」
「いや、まだ情報だけだが、それも含めて話に行ってくる」
帝国軍の部隊長であるジーヴェルクが自ら出るというのは、帝国としては重要な意味合いを持つ。
これでも上には総隊長と、皇帝しか居ないくらいには高い地位の人間なのだ。
だが、バーグとマーハにとっては、それ以上に深い理由がある事を察している。
故に、彼らはジーヴェルクの本業へは口出ししない。
それが彼らの掟だ。
それに、態々言葉を交わさずとも、言いたいことを理解することくらいは容易いのだ。
「じゃあ、こっちの仕事は任せる」
「はーい!」
「ご褒美はちゃんと用意してね!」
「ああ。良いものを揃えておこう」
そして彼らは、それぞれの仕事へ向かうのだった。




